「お釈迦様に逢いたくて」 9』

お釈迦様生誕地、ネパールのルンビニを後にして、再びインドへ戻り、
今度はお釈迦様の涅槃の地であるクシナガラへと向った。

本来ならば、お釈迦様の足跡を辿るのには、最後に行った方がよいのだ ろうが、
地理的にとても近いのだ。 お釈迦様は、涅槃が近いことを悟ると、
生まれ故郷へ戻っていこうとさ れたそうだが、その途中のクシナガラで
入滅されることになったという 説明を受け、その距離の近さに納得した。

お釈迦様が80年の生涯を閉じられる時、師を失うことを嘆き悲しむ
お 弟子さんたちに向って「私が説いた教えと戒律が、これからお前たちの
師となろう。ただ一切は過ぎていく。怠ることなく修行を完成しなさい 」と語り入滅したという。

この言葉を知って、私は感動した。 そして可笑しな話だが、
益々私はお釈迦様が好きになった。 クシナガラの涅槃堂には、
大きな寝姿のお釈迦様の像が涅槃姿で横たわ られている。

私たちは、薬師寺の安田管長様が引率してくださっている ということで特別な計らいがあり、
涅槃像にかけてあった黄色い布を現 地のインド人のお坊様達が静かに取ってくださったのだ。
なかなか拝むことが出来ない御姿に手を合わせることができて、感無量 だった。

外に出ると、美しい夕日が目に飛び込んできた。 涅槃と日暮れということがとても印象的で、
私は夕日にも自然と手が合 わさった。 その涅槃堂のすぐそばに、
お釈迦様が荼毘にふされた小山のようなスト ゥーパがある。

ここで夕刻、法要が営まれその後、花と蝋燭を3本それぞれ手渡された。
自分が好きな場所に、花を飾り蝋燭を燈してよいとのことだった。

お釈迦様が荼毘に付された場所で、献花と灯明が出来る配慮に、
ありが たさで、胸がいっぱいになった。 気が付くと陽は沈み、
それぞれが燈した蝋燭の明かりだけが静かに揺れ ている。
祈りの夜は静かに更けていった。                           つづく…


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