■「お釈迦様に逢いたくて」 1』
お釈迦様がゴータマ・シッダールタという実在の人物であったことを知
ったのは、確か中学生の頃だったと思う。
教科書で読んで、びっくりしたことを覚えている。
十年近く前になるが『ブッダ展』と題された美術展に行った時のことだ
った。
展示されている仏像に順番に手を合わせていた時、突然両手に、まるで
雷に打たれたかのような強い衝撃が走った。
驚いている間もなく何処からか「上がってきなさい」という声がする。
辺りを見回すと、エスカレーターがあったので2階に上がり、大型のテ
レビ正面のソファーに腰を下ろした。
流れていた映像は、ブッダ誕生の地から、涅槃に入った地までの風景に
簡単な説明がされていたものだった。
お釈迦様は涅槃に入られる前「私に会いたければ、生まれた地『ルンビ
ニ園』へ、悟りを開いた地『ブッダガヤ』へ、初めて説法を行った地、
『鹿野苑』へ、そして静かに涅槃に入る『クシナガラ』へ来なさい」と
いわれたという。
エンドレスに流れるその映像を見ながら、いつの日にか、遥かなるその
地へ訪れてみたいと強く思った。
昨年10月下旬。
アリゾナのホピツアーでの帰り、バスからロサンゼルス行きの夜行列車
に乗り込むために立ち寄ったフラッグスタッフ駅で、インド人の建築学
者、ラジェンドラ教授という人物と出会った。
駅のパンフレットを手にとって見ていたツアー参加者のマキちゃんに、
教授ご夫妻が日本語で挨拶をしてきたことがきっかけだった。教授の息
子さんがかつて神戸に住んでいたという話から、私も話に加わった。
マキちゃんは奥様と、私は教授と主に話していたのだが、わずか5分程
度の時間で不思議なほど気持ちが通じ合い、すぐに名刺交換をして、メ
ールのやりとりをする約束をした。
私たちの列車の改札時間となった時、教授が「ブッダがあなたを呼んで
います。早くインドへいらっしゃい」と言った。
私は、突然の言葉に驚きながらも、かつて映像で見たあの風景が一瞬に
して蘇ってきた。
お釈迦様のもと、インドの奥地へ私も行けるのかもしれない…。
そう思っていたら、その機会は驚くほど早くやってきた。
つづく…