「天の河に橋かけて」(14)

■[平和の民・ホピ族の村へ 3]

ホピの村に向かうワゴン車に乗ったのは、運転手兼ガイドを含めて8人。

フランス人の夫妻と、ロスから来た女性2人組。プエルトリコ人男性と、マヤ族の末裔というナヤという女性と、私。ガイド兼運転手の女性が、運転しながら片手にマイクを持ち、しばらく様々な説明をしていた。ひとしきり話を終えると、後ろにマイクをまわしてきた。

少人数である上に、片道3時間もの時間があるのだ。一人ひとり、ゆっくりと時間をかけて自己紹介するようにと言う。英語は自慢にならないが片言程度しか出来ない。増して英語で自己紹介などしたこともない。

「何て言おう…。皆に通じるのだろうか…」

カチンコチンに緊張しているうちに、私の順番になった。しどろもどろに単語を繋ぎ合わせ程度で自己紹介をしたのだが、科せられた持ち時間には満たない。私はムックリ(アイヌの口琴)をリュックの中に忍ばせていたことを思い出した。言葉で足りない分は、これで気持ちを届けよう。最初は緊張の為か、あまり音が出なかったのだが、徐々に乗ってきた。演奏を終えると、ワゴン車の中は、割れんばかり?の大喝采となった。

これで、一気に皆との距離が縮まった。

私達が向かっていたのは、ホピのファーストメサにある、シチョモビという村だった。その日から、村ではセレモニーが始まっているのだが、少し参加させて頂けるとのことで、長老に捧げ物を購入するという。立ち寄ったスーパーで、私が何を買っていいか迷っていると、ガイドの女性が私とナヤに、タバコ買うと良いと教えてくれた。ナヤとは自己紹介のときに、名前がナヤ、アヤの一文字違いということで、互いに親近感を持っていた。彼女はマヤ族のことを調べているうちに、どうしてもホピ族の所に来てみたくなったらしい。私もナヤも、興味がある世界が、とても近いことがわかった。

ホピの村に着き、私達はまず、ロアーナの家に行った。が、彼女はセレモニーの準備をする為に、広場に行っているらしく、彼女の娘、バレンシアが私達を出迎えてくれた。彼女は、ロアーナから私達に、食事をご馳走するように言われている、と白トウモロコシの粉をこねて、油で揚げたものの中に、野菜や豆を挟んだホピタコスや、青トウモロコシの粉を薄くクレープ状に焼いたものなど、食べきれないほど、準備をしてくれていたのだ。

実は、私は前日にもセカンドメサにあるミュージアム横のレストランで、ホピ族の料理を食べていた。今は格段に美味しくなっているが、当時は正直な話、とても美味しいとはいえない代物だった。

しかし、バレンシアが作ってくれた料理は、信じられないほど美味しかった。満腹になった私達は、いよいよセレモニーが行われているプラザへ行くことにいた。ガイドの女性から、貴重品以外は、全て車に置いて行く様に言われ、捧げ物は両手に持って歩くように言われた。

私はおずおずと、タバコの包みを両手で持って、キバへ向かった。

                          …つづく