「天の河に橋かけて」(8)

■[魂の道標 2]

八ヶ岳の空は、貫けるように青かった。

寝袋やモロモロの荷物が入った大きな鞄を担いで、イベント会場の前に行くと、友人が偶然入り口の前に立っていた。「アヤさん!!どうしてここに??でも、とにかくよく来ましたね。皆がいる所まで案内しますよ」

会場は、想像を絶するほど広かった。このイベントは、数千人がいくつかのキャンプサイトに分かれて泊まりながら、テーマごとに分かれた会場で、音楽に合わせて踊ったりしながら過ごす、レイヴパーティと呼ばれるもので、私は未経験の世界だった。会場まで行けば、どうにかなるだろう…と、タカを括っていたが、偶然友人が会場入り口付近にいなかったら、探すのが困難だったかもしれな
い。

大音響で電子音楽が流れている大会場を抜けて、小高い丘の上に行くと、それまでとは、全く違う気が流れてた。そして、そこには「神戸からの祈り」や「虹の祭り」で共に時間を過ごした仲間達が沢山いた。

気心の知れた仲間の顔…顔…顔。
張り詰めていた緊張の糸がほどけて、私は荷物を放り出して、そこにへたり込んだ。

そこでは、インディアンフルートやアフリカン太鼓などの民族音楽が静かに奏でられていた。八ヶ岳の山々と青い空と澄んだ空気。ケータリングブースで用意してくれている食事は、オーガニックフーズ。かつて、アメリカのセドナで感じたことがある、通常の時間軸から外れているような時の流れが、そこにあった。

2日目の夜、天空オーケストラのマネージメントをしているテイちゃんの奥様、キョウコちゃんとテントの中で話をしていた時のことだ。色々な話から名前の話になった。私が旧姓を伝えると、キョウコちゃんが「同じ苗字の人、中学の時に転校生でいたなぁ」と言う。実は、私の旧姓は少し珍しい。だからなのか、生まれてから今まで同じ姓の人と出会ったことがない。

「へ〜偶然だね。私は今まで一度もこの苗字の人と出会ったことないよ。キョウコちゃんは、どのあたり出身なの?」

「××市」

「わー、偶然。私も中学の頃、たった1年だけど××市に住んでいたこ
とがあるの。でも父の転勤ですぐに転校になっちゃったけれど」
「ん?」
「ん?」
「もしかして…△△中学?」
「えっ!!○○さんなの?」

「ギャ〜!!」
「ギャ〜!!」

そう、仲間として一緒の時を過ごしていたキョウコちゃんは、なんと中学の時の同級生だったのだ。更に言うなら、中学3年の春、修学旅行で八ヶ岳に行き、偶然にもキョウコちゃんと私は同じ部屋になり、朝まで話一緒に話した仲だった。
なんという偶然なのだろう。20年以上の時を経て、再び同じ八ヶ岳で同級生と再会したのだ。私達は、まるで中学生の修学旅行にタイムスリップしたかのように、お喋りを楽しんだ。が、やはり互いに体力もそれなりに無くなっており…
朝まで話し込むことはなかったのだが。

八ヶ岳の麓で、森の中を散歩したり、朝日を浴びながら気功をしたりしながら、心地よい音楽に次々と触れた3日間は、私の細胞そのものを元気にしてくれた。

「さぁて、明日はどうしよう…」そう思った瞬間だった。

「鞍馬へ行け!」
自分の声なのか、誰の声なのかわからないが、確かにはっきりと、聞こえた。

私はまたしても可笑しくなった。
今度は鞍馬???

大きな鞄を抱え、翌日、京都の鞍馬へ行くことにした。

                       つづく…