DVD「熊野大権現」撮影雑記


■「森羅万象への旅路」16

熊野古道一の難所といわれている「大雲取越え 小雲取越え」。

ここは、絶対に映像の中に納めたいと思っていた。
7月、私とキョウちゃん二人で歩き続けた、鬱蒼と薄暗い道。
延々8時間、誰とも出会わず歩き続けた、熊野古道。
どうしても、ここは撮影したいのだが、撮影機材を持ち歩いた状態では
至難の技だと思っていた。

クスモトさんに相談すると、実は一箇所、途中まで車で行ける場所があ
るという。途中からクスモトさんの4WDに乗り換えて、そのポイント
まで向かうことになったのだが、定員の関係上、どうしても全員は乗り
切れない。
キョウちゃんを乗用車に残し、撮影現場へと向かう。

息も絶え絶えに歩いた道が、いとも簡単に行けたことに、私は正直なと
ころ拍子抜けした。しかし、少し奥に入ると、相変わらずこの道には、
何かの気配を感じる。

キョウちゃんのことが心配で、早々に撮影を終えて車まで戻ると、当の
本人はケロリとしていた。聞けば、退屈だったのでずっと寝ていました
という。あまりにも、キョウちゃんらしい返答に笑ってしまった。

翌朝、前日に撮りきれなかったものを撮影して、私達は2週間滞在した
熊野から一旦、東京に戻った。

それから3週間後。

天河での撮影を終えて、またまた熊野へと戻る。

熊野にこれほど通っていたので、新宮市の銭湯や靴まで洗えるコインラ
ンドリーの場所、安いガソリンスタンドや大型スーパーの安売りになる
時間帯など、かなり把握するようになっていた。

特に、私たちのお気に入りは、「陽香屋」というラーメン屋さん。
このラーメンや丼ものの味は、書くことが難しいほどオリジナリティに
溢れている。飽きもせず、熊野に行く度通っていたので、東京在住にし
て、常連さんの域にまで達しようとしていた。

                      つづく…