今から20年前の1998年。私は自然の叡智と命の尊厳をテーマにした小さな企画事務所『オフィスTEN』を立ち上げました。
それは人間として真に豊かなもの、大切なものとは何か、という問いかけの長い旅の始まりでもありました。以後、国内外、太古から叡智を守り続けている人々の地を訪ね、出会い、友情を育み、そして学ぶ。そんな繰り返しの年月を送っています。そして20年目の節目となる今年。不思議なご縁から、アイヌの女性伝統派シンガーグループの東京でのデビューライブをプロデュースすることになりました。
きっかけは、あるアイヌ女性との出会いからです。これまでもアイヌの人々との関わりは他にもありましたが、その女性との出会いは、同い年ということもあり、懐かしい大切な友と再会したような、そんな感覚になるものでした。彼女の話声はまるでユーカラのようでした。私は話を聞いているだけで魂が震えたのです。
彼女から「出身地も活動の場も異なりながら、それぞれアイヌの伝統継承をしている同年代のアイヌ女性三人で、シンガーグループを結成した」という話を聞いた時、私は、凄いグループが誕生した、と直感的に思いました。
そして、その直感は間違っていませんでした。今年3月上旬、私は彼女たちが今活動している千歳に飛び、彼女たちの歌声に触れた時、このアイヌの美しい歌声を多くの人に届けたいと強く思ったのです。
グループの名は『RANKO』。
彼女たちが今、拠点としている千歳の場所が蘭越。アイヌ語で「ランコ・ウシ」。桂の木が多い所という意味の場所ですが、その桂の木のアイヌ名「RANKO」をそのままグループ名としたそうです。
『Voice OF Native Spirit』と題したイベントでは、まず前半の時間は、存分に彼女たちのライブで歌や踊りを堪能してもらいます。そしてイベント後半は、私自身が各地の先住民のもとを訪ね歩いた写真をスライドショー形式にして、ほんの少しご紹介。その後、再び『RANKO』の3人に登場していただき、4人でトークセッションです。どんな話に広がっていくか。乞うご期待!
『RANKO』の3人によるずば抜けた歌唱力と伝統の踊り、そしてアイヌに伝わる叡智と文化に思う存分触れてください。
東京で彼女たちをご紹介できる日を、私はワクワクしながら待っています。
作家・プロデューサー 天川 彩
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