2002/08/23 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     ☆★☆   TEN's magazine 第32号   ☆★☆    
  
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 こんにちは!天川 彩です。

ここのところ、東京は朝夕めっきり涼しくなってきましたが、皆さんが
住んでいらっしゃる所は、どうですか?

さて、実は10月5日〜10月14日の期間限定ではありますが、オフ
ィスTENのアンテナショップ『自然の叡智といのちを感じる店』を地
元で出すことになりました。
なぜオフィスTENがアンテナショップを出すのか、どこで何をするの
かは、後日改めて書きますが…先日、場所を提供してくださるオーナー
の方から電話がありました。
「○○ですが…近くで飲んでいるの合流しませんか?何人かのご近所さ
んに声かけているんですが…」
思いがけないお誘いに、嬉しがりの私はウホウホ行ってきました。

集まったのは音楽関係のライターさんや落語関係者、某出版社の編集長な
ど7人。
ご近所という共通点から、話の中心はもっぱら近所で見つけたこんな店、
あんな場所。安くて美味い店から、必ず後悔する店まで、出るわ出るわ…。
更に平均年齢が若干高いことも影響してか…マッサージが上手な整骨院か
ら、銭湯の湯加減まで、話は尽きませんでした。

このエリアに住んでもうすぐ3年。
新たにご近所仲間が出来た、なんとも新鮮な夜でした。


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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・連載========= 「天の河に橋かけて」(9)
2・最新情報======= 『アイヌの叡智とユーカラの夕べ』
3・コラム・風の文様=== 『白作務衣を着る意味』
4・ベント情報====== 『屋久島の森の話を聴く会』
4・詩の世界 ====== 『道程』
5・編集後記======= ひとりごと
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【1】◆◇連載◆◇
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■ 「天の河に橋かけて」(9)

□魂の道標 3

東京、八ヶ岳と持ち歩いていた大きな荷物を京都駅の大型コインロッカ
ーに入れて、私は神妙な面持ちで鞍馬に向かった。
9月の平日ということもあってか、鞍馬に向かう電車の中もガランとし
ている。

終点の鞍馬駅で降りた時、私はこの旅の終わりが近付いていることを感
じて、改めて深呼吸をした。
仁王門をくぐり、清少納言が『枕草子』の「近うて遠きもの」の中で
「くらまの九十九折といふ道」と記した九十九折参道を一歩一歩踏みし
める。
登り始めてから、およそ三十分ほどで鞍馬寺本殿の前に立った。
空一面が澄み渡り、比叡山がすぐ側に見える。

鞍馬寺。
その歴史は、宝亀元年(770年)鑑真和上の高弟・鑑禎上人によって
毘沙門天を祀る草庵が作られたのがはじまりとされている。
義経が幼少の頃、ここの鞍馬天狗に武術を習ったという話も有名だ。
しかし、鞍馬寺が霊場中の霊場ということを知っている人は意外に少な
いかもしれない。

鞍馬寺のご本尊は尊天という。
尊天とは、宇宙のエネルギーそのものであり、万物全てのいのちを生か
すものらしい。
愛を月輪の精霊ー千手観世音菩薩、光を太陽の精霊ー毘沙門天王、力を
大地の霊王ー護法魔王尊の姿で表し、この三身を一体として「尊天」と
称するそうだ。

私は、本殿金堂前の小さな畳に座り、静かに般若心経をあげた。
そして本殿脇を歩いていた時だった。それまで気がつかなかった地下に
続く階段から、何かが呼んでいるような気がして、降りていった。

地下は、とにかくほの暗い。
ロウソクの炎が、細い迷路のような道を照らしている。
そこに、おびただしい数の小さな白い壷が置いてあったのを見て、正直
なところキョッとした。
しかし、説明書きを読むとそれは万物のいのちの為、自ら役割を持って
生きることを誓った尊天信仰の人々の清浄髪であるとわかり、私は、無
数の白い壷に手を合わせた。

なんと尊いことだろう…。
天河にしろ、鞍馬にしろ、生きとし生ける全ての為に祈り、そして自ら
の役割を持ち歩む人が、この世に数多くいるのだ。

私は、何か特定の宗教や宗派には属していない。
が、目に見えない大いなる意思、そして八百万の神々、アニミズム的な
信仰心は常に持っている。
「万物のいのちの為、自ら役割を持って生きることを誓う」これは
私が天川 彩になった日、大いなる意思に誓ったことだ。
鞍馬に呼ばれるようにして来たのは、改めてそれを確認する為だったの
だろうか。

地下の中央に、厳かに祀られていた尊天の三尊(力と大地を司る魔王尊、
愛と月を司る千手観世音菩薩、光と太陽を司る沙門天王)の前で合掌し
ていると、強烈な何かの力を感じた。
地上に上がった時、突然の明るさとエネルギーの違いに少しクラクラ
していた。

奥の院から貴船に続く山道を歩きながら、私は自らの天命を確認し、そ
の天命に従う為に、今は東京に行かなければいけないと強く確信した。
そして、私の本来のパートナーは夫ではないということも、この時はっ
きりとわかった。

夫は、私との結婚生活において、幾人もの女性と情事を繰り返していた。
私も生身の女。正直なところ幾度もそのことで傷ついた。
が、その度ごとにどうにか、こうにか関係を修復し繕いながら十七年間
結婚生活を続けていた。しかし奈良でのお祭りから帰って来た後「君は
僕の女房なんだから、天川 彩なんかやめて普通の主婦に戻ってくれ」
という言葉に、魂が悲鳴をあげたのだ。
心が傷ついてもどうにか、立ち直ることは出来るが、魂が悲鳴をあげた
ら、もう限界なのかもしれない。

貴船に着いた時、足は棒の様だった。
貴船の夏の名物、川床料理はそろそろシーズンが終わっていたのか、大
半の店の川床に組まれていた畳は上がっていた。
普段なら、決してそんな贅沢はしない。
だが、結論を出せた自分自身にご褒美とお祝いを兼ねて、川床の懐石を
食べさせてあげようと思った。
幸いにして、貴船神社向かいの料亭が、まだ川床で懐石を出していた。

私は思い切って暖簾をくぐった。

「何名様どすか?」
「一人なんですが、川床で懐石食べることができますか?」
「お客はん、お一人で?」
「はい」
品のいい仲居さんが、川床のいい席に案内してくれる。
川床から上がるヒンヤリとした風が、火照った足に心地よい。

「それにしても、女性がお一人で川床懐石は珍しいどすな。私そんなお客
はん初めてどすわ」
料理をテーブルに置きながら、仲居さんが言う。
「そうですか。珍しいですか。実は人生の決断がついたお祝いなんです…」
「あら、それはおめでとうさんどす。で、どんなお祝いなんどすか?立ち
入るようで、悪いかしら?」
「いいえ…。自分の道をきちんと歩むことにしたんです。それで、夫とも
別れる決心しました」
「自分で、道を決めたんやったら、ほんまにお祝いやわね」
「ええ」
「でも、今度来る時は、やっぱり川床の懐石は大好きな男はんにご馳走し
てもらった方がええわよ。そんな男はんは、いはらへんのどうすか?」

そんなの余計なお世話だなぁと内心思ったのだが、
「残念ながら、今はいませんね。いつか、そんな相手が見つかればいいん
ですけれど」と答えた。

「あら、それやったら、そこの貴船はんにお祈りしてきはったら、よろし
いわ。縁結びの神様やから。きっと、素敵な人にめぐり合うわ。そしたら
その時に、もう一度二人で、ここに来て懐石食べてくれはたったらええわ」

そうか…そう考えたらいいのか…。

「そうします」
「そうや、駅まで車で送ってあげはるさかい、食べた後、ゆっくりお参り
したらよろしいわ」

食後、 私は貴船神社でこの時旅で初めて、自分の幸せを祈りながらそっと
縁結びの紙縒りを結んだ。

風が吹くまま、魂が導くままに出たこの旅は終りを迎えていた。
私は、駅でコインロカーに入れてあった大きな鞄を抱え、8日ぶりで自宅
へ戻ることにした。

                        つづく…

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【2】◆◇【最新情報】 ◆◇
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 『アイヌの叡智とユーカラの夕べ』
      
    語り部:アシリ・レラ

2002年11月8日(金) 18:00開場 19:00開演
ムーブ町屋ホール   
(営団地下鉄千代田線、京成線「町屋」都電「町屋駅前」徒歩1分)
前売り 2800円  当日3500円 

 <<お申込み受付開始しました!!>>

北海道・二風谷は、カムイユーカラ(神々の叙事詩)の中で、文化の神
オキクルミが降り立ち、生活や文化を伝われている場としてうたわれて
います。
その聖地、二風谷に生まれ育ち、長年に渡りアイヌの文化や歴史を伝承
しているアシリ・レラさんに、民族に伝わる叡智の伝承と、ユーカラ
(口頭伝承されている叙事詩)をじっくりと語ってもらうシリーズが
始まります。

*このシリーズは小さなホールでの催しとなります。
チケットのお申込みなど、詳しくは

http://www.office-ten.net

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【3】◆◇【コラム 風の文様】 ◆◇
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 □『白作業衣を着るということ』


天河神社にご縁を頂いてから、天河太々神楽講の講元もさせていただい
ている。
太々神楽とは神人合一の境地に至ることを目指し、講とは集まりのこと
をいう。
講元とは、神と神社と集う人とのお世話役といったらいいのだろうか。

人間は、その奥底で神と繋がっているのだが、そのことに体験的、実践
的に気付く為、古代から様々な修行法や浄化法が生み出されてきたとい
う。神楽とは「神あそび」であり、感性の深いところで神を味わい楽し
むという意味だ。

その神遊びとして、今年は天河の数あるご神事の中でも、取り分け幻想
的な七夕ご神事に、祭りをつくる神社側、村側の手伝いとして体験させ
て頂く「天の川に祈る」と題した講をすることにした。

お祭りの前後含めて3日間、私たちは「白作務衣」を身に付けていた。
とにかく、私たちの一番の役割はお掃除すること。
宮司さんが「無心でただただ掃除をしていると、そのうち瞑想状態に
なる」と言われた言葉が体験できた、貴重な時間だった。

最終日、全てのスケシュールを終えた私たちは、宮司さんから貴重な話
を伺うことが出来た。

なぜ、白作務衣を着て作業するのか…
作務衣は、最も作業しやすい服装であるのだが、白という色がとても重
要なのだそうだ。

白は何色にも染まる色で、また染まりやすい色でもある。
世の中には、色々な色を持った人が、他人を自分の色に染めようとする
ことがある。
また、人は他人が決めた色に染まっている方が楽なことが多いから、つ
い自分を他人の色に染めることで、依存しようとする。
しかし、人間本来は、無垢な状態で生まれ、何色にも染まっていない。
つまりは神の光をまっすぐに受けられる存在であるのだ。
肝心なことは、何色にも染まらない自分を常に保つことだそう。

白作務衣を着て掃除をするということは、正に神人合一の境地に至るこ
とだったようだ。

 
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【4】◆◇【屋久島の森の話を聴く会】 ◆◇
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この日、この空間は、屋久島になる。


『屋久島の森の話を聴く会』

日 時  9月 23日(月・祝) 14:00〜16:00
会 場  ムーブ町屋 ハイビジョンルーム 
    (営団地下鉄・千代田線 京成線 都電「町屋駅」下車1分)
参加費  前売り1500円  当日2000円
    
お話し  藤村正敏さん (屋久島・山と森の案内人)

申込みは http://www.office-ten.net  只今好評受付中!
 

神々の住む島・屋久島。
樹齢7200歳。世界最長老の『縄文杉』は、
この島の森の奥で、今も生きています。
深い深緑色でうめつくされた苔森や、
天界に聳え立つような、巨石の数々。
どこまでも澄んだ水に潤うこの島は、
世界遺産にも登録されている、
日本が世界に誇る島。

そんな屋久島で生まれ育ち、
島の山という山、森という森を知り尽くした男。
「天と大地に感謝する旅」の屋久島ナビゲーターとしても
お世話になっている藤村さんが、
この日、屋久島の魅力を語りにやって来ます。
会場は、ムーブ町屋のハイビジョンルーム。
屋久島の大自然の魅力を余すところなく、
ハイビジョンの大画面で堪能しながら、
屋久島の豊かな森や山の話しや、屋久島に伝わる神話などについて、
存分に語って頂く予定です。

また、映画「もののけ姫」制作時、「コダマのいる苔森」や
「シシ神の神秘の湖」などのモデルとなった場所を、
宮崎監督はじめジブリのスタッフに案内した時のお話や、
今秋から始まる、NHK朝の連続ドラマ「まんてん」にまつわる
裏話なども、こっそりお話してもらおうと思っています。
どうぞお楽しみに!


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【5】◆◇詩の世界◆◇
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「道 程」
               天川 彩
 
永遠に見えゆものの、なんと儚きものよ。
我、根源に近付きたれば、更に離れん。
行く末知らずとも、ただ歩む道程に、
いつか軌跡の標想ゆ。
ならば、永久を見据えず、即今を進まじ。

魂中に銀河の流るるものあれば、
我心、大地となりて、明日を歩まん。


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【6】◆◇編集後記◆◇
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来週の金曜日から、しばらくアメリカへ行って来ます。ホピやナバホの
大地と友人達を訪ねる旅です。先日、国際免許も取ってきました。
さてさて、どんな旅になることやら。
それから…9月11日という日をアメリカの人々はどのように迎えるの
か、この目で見て体感してこようと思います。
でも、来週もちゃんとメルマガ書きますよ〜。
                          aya
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発行者   天川 彩

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