2002/08/02 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's magazine 第29号 ☆★☆
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こんにちは!天川 彩です。
毎日、暑い暑いと言いながらも、8月になった途端、もうすぐ夏が終
わってしまうのかなぁ…と寂しい気になるには、私だけでしょうか。
それにしても、今年の天候はおかしいですね。
2002年の世界平均気温が観測史上最高となる可能性もあると、英国の
気象庁が発表していました。
地球温暖化現象が着実に進んでいるようで、気になります。
もう少し真剣に、私達は自然と向き合って生きていかなければいけない
のかもしれませんね。
さて、今週のメルマガでは新たなイベント『屋久島の森の話を聴く会』
のお知らせをしています。
以前、このメルマガでもご紹介した屋久島の案内人・藤村さんに、屋久
島の大自然と暮らす智恵や、山や森の話、島の人々が神と共に生きてい
るお話などをしていただく予定です。
乞うご期待!!
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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・連載========= 「天の河に橋かけて」(6)
2・最新イベント情報 == 『屋久島の森の話を聴く会』
3・バックステージ==== 「縄文スピリット」2・縄
4・TEN’shop=== ビデオライブラリー&Tシャツ
5・童話詩の世界 ==== 『小さなあなたに』
6・編集後記======= ひとりごと
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【1】◆◇連載◆◇
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■ 「天の河に橋かけて」(6)
□心の叫び
1999年8月。
音楽家、岡野弘幹さんの呼び掛けで「虹の祭り 地球にごめんな祭」が
奈良の春日公園をメイン会場にして行われた。
私は、岡野さんのサポート役として本部に入りながら、東大寺でのオー
プニングセレモニーと、春日大社でのクロージングセレモニー責任者と
いう大役も担っての参加となった。
祭りが終わり、片付けを終えて自宅のドアを開けた時だった。
「長い間、遊んでいたんだから、さっさと家のことしてよ」
夫の第一声がそれだった。
正直なところ悲しかった。夫にしたら私の活動は単なる遊びにしか思え
ないようだった。
その日を境にして、私の体調が崩れ始める。
咳が止まらなくなってしまったのだ。
最初は、疲れからの夏風邪かと思い、近所の内科で風邪薬を処方しても
らった。しかし、幾日経っても咳は酷くなるばかり。
今度は大きな病院へ行き結核検査となった。が結果はシロだったので、
そこでは急性気管支炎の薬が処方された。しかしこの薬を飲んでも一向
に咳は止まらない。
そればかりか、血痰が出始めるようになり、呼吸困難を起こすようにな
ってしまった。
隙を見て息を吸い込んでも、激しい咳で肺の中の空気が全て出てしまう、
そんな病状だ。
自分でも鏡を見るのが苦痛になるくらい顔色が悪くなっていた。
洗面所が毎日、血で赤く染まるのだ。
やはり、普通じゃない。
心配した友人が呼吸器科の名医の先生を紹介してくれた。
「肺癌の可能性がありますね」
先生は、あっさりそう言った。
「私…死ぬのかな…」
その時、私は初めて自分の死を身近なものとして意識した。
実は、叔父が数年前、肺癌で亡くなったのだが、宣告されてからほんの
数ヶ月で逝ってしまったのだ。
家庭の医学書を読んでも、私の病状は肺癌そのもののようだった。
検査結果が出るまでの2週間、精神的にダメな状態だった。
私は事務所に篭りながら『チベット 死者の書』を繰り返し読んでいた。
いつしか私は、生も死もほとんど違いが無いという境地に至っていた。
生かされている間は、精一杯生き、死を迎える時は、速やかに今生を旅
立とう。そう思うと、検査結果が出ることの恐怖も何も無くなっていた。
検査の結果、私は肺癌ではなかった。
咳と呼吸困難は極度のストレス性によるものらしかった。
私は、自分の気持ちと正直に向き合う為、家のことを夫に頼み10日間
ほど行き先を定めない、自由な旅に出ることにした。
つづく…
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【2】◆◇【屋久島の森の話を聴く会】 ◆◇
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この日、この空間は、屋久島になる。
『屋久島の森の話を聴く会』
日 時 9月 23日(月・祝) 14:00〜16:00
会 場 ムーブ町屋 ハイビジョンルーム
(営団地下鉄・千代田線 京成線 都電「町屋駅」下車1分)
参加費 前売り1500円 当日2000円
(前売りで売切れた場合は、当日券はありません)
定 員 70名
お話し 藤村正敏さん (屋久島・山と森の案内人)
屋久島の大自然の魅力を映像で楽しみながら、
世界自然遺産の山々や神秘の苔森のお話を、
森の案内人から聴く1日…。
屋久島の森の風を感じてください。
詳しくは…http://www.office-ten.net
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【3】◆◇バックステージ◆◇
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□『縄文スピリット』 2「縄」
スタッフで舞台の相談をしていた時だった。
映像作家のシンヤ君が「やっぱり縄文なんだから舞台上には、縄があれ
ばいいなぁ」と言う。
縄か…いいね。それでいこう!
以前、何故縄文の頃、人々が土器に縄の文様を付けていたのか調べたこ
とがあった。
その時、「縄は魔よけの意味を持ち、その文様を普段の生活の中に取り
入れる為に、器に使っていたのではないか。その名残がしめ縄として残
っている」という一文を見つけ、私は妙に納得してしまった。
時折、神社などで結界を見かけるが、そこに使われているのも縄だ。
やはり、縄は古代から魔よけに使われていたのだ。
舞台上に大きな縄を出現させることは決まったが、いざ、舞台栄えのす
る大きな縄を探すとなると、並大抵ではない。
インターネットで、しめ縄を作っている業者を見つけたのだが、直径5
センチ10メートル位のもので20万円以上することがわかった。
縄…縄…縄…。
私は呪文にかかったように、日々太くて長い縄を探していた。
5月下旬「天と大地に感謝する旅」で森のイスキア〜白神山地へ行った
折、岩木山神社に立ち寄った。
社殿に向かう階段で、縄の束を使って作業をしているおじさんがいた。
私は思わず駆け寄り、どこで入手できるのか質問して、荒物屋で縄を扱
っていることを知った。
東京に戻って来てから、荒物屋を何軒もまわってみたが、太い縄は何処
も扱っていないようだった。
それに、舞台美術として耐えられるほどの、太くて長い縄は、どうやっ
たら探せるのか、途方に暮れてしまった。
そんな時、ふと思いついたのが、茅輪くぐりの茅輪だった。
知らず知らずのうちについた身の穢れや心の罪を祓い、同時に無病息災
を願ってくぐる茅輪。
近所の根津神社でも、夏越しの大祓の頃、巨大な茅輪が登場することを
思い出し、根津神社の社務所へ聞きに行った。
すると、根津神社の茅輪は、造園業者の方が毎年特別に奉納されるらし
く、個人的に注文するのは困難ではないかという返事だった。
しかし、お隣の湯島天神では、毎年神主さん達が河川敷に出向き、萱な
どを刈って、その場で茅輪を作るという話を聞いた。
そして、何かの参考になれば、ということで湯島天神の電話番号を教え
てくれた。
私達は、湯島天神の方に聞いて、河川敷に萱を刈りに行こうと盛り上が
った。
が、湯島天神に電話すると茅輪の中心には、特注の巨大な鉄の輪を入れ
それを芯にして作成するのだという。
特注の巨大な鉄の輪など発注できる訳もなく、更に言えば舞台上で使っ
た縄は天に返す為、お焚上げに出来たらと漠然と思っていたので、芯に
鉄は使いたくなかった。
思いはあるのが…先に進まない…。
事務所であーでもない、こーでもないと話し合っていた時。
ふと、私の視界に、部屋の隅に立掛けてあったスダレの束が目に入る。
そう、そのスダレの束は1年前、レラさんをゲストとして迎えたイベン
トの舞台美術に使ったもので、全部で八組もあった。イベント後、その
後処理に困って事務所の隅に置いていたのだが、そんな存在すらずっと
忘れていた。
それから、およそ1週間。
私達は、スダレの糸を全て外し、幾日もかけて萱を丹念に踏みならして
柔軟性を持ったものにした。そして、スダレの上下に使われていた竹を
芯として入れて、その上に200メートルもの藁縄を巻きつけることに
した。
イベント前日には、スタッフの他、出演者であるレラさんやその仲間達
もやって来て、夜遅くまで縄を巻きつける作業を手伝ってくれた。
イベント当日、スタッフ全員の協力で巨大な縄の輪が出来上がった。
本番直前、私はその輪に向かって拍手を打って祈る。
夏至の音楽祭「縄文スピリット」は大成功だった。
二日後、私達はこの縄輪を奥多摩にある、森のふるさと村のファイヤー
サークルの前にいた。
レラさんが、塩とお酒と米を四隅に撒く。
私達は「縄文スピリット」が無事成功したことを感謝し、祈りを込めて
縄に火を入れた。
巨大な縄は静かに美しい炎を上げながら天に昇っていく。
私は、その炎を見ながら縄文の魂に、ほんの少し触れることができたよう
に感じた。
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【4】◆◇TEN'Shop◆◇
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【5】◆◇童話詩の世界◆◇
『小さなあなたに』
天川 彩
風が運んだ花の香に
いつかあなたは思い出すはず。
小さな小さな手のひらに、
あなたがくるんだ穏やかな時。
歩み織りなす、タペストリー。
悲しみ色も時にはあるわ。
そんな時には立ち止まり、
大きく息を吸い込んで。
さわやかな、木漏れ陽の香り、花の精。
あなたを応援してくれるから。
やわらかな巻き毛にそっとキスをして、
私は、静かに祈りましょう。
優しいあなたでありますように。
夕焼け空に染まった日、
きっとあなたは思い出すはず。
つぶらなつぶらな瞳には、
あなたが見つけた喜びの色。
遥かな旅、長い道には、
険しい道もあるでしょう。
そんな時には立ち止まり、
にっこり笑ってごらんなさい。
大空に高く微笑む太陽が、
あなたを守ってくれるから。
フワフワの、ホッペをそっと撫でながら、
私は静かに祈りましょう。
輝くあなたでありますように。
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【6】◆◇編集後記◆◇
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夏休み真只中。
今年の夏は大きなイベントが無い。予算はあまりないのだが、小旅行く
らいならと、娘達を旅行に誘ってみた。
「部活やバイトが詰まっているから無理だわ。ごめん」
いとも簡単に、あっさりふられてしまった。
「お母さん、どこかに連れて行ってよ〜」とせがんでくれていたあの頃
がなんだかとても懐かしい。
aya
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発行者 天川 彩
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