2009/11/13━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's magazine 第395号 ☆★☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net
こんにちは、天川 彩です。
今週に入り、急に冷え込んできましたね。
我が家でも、あわててコタツを出しました。といっても我が家のコタツ
はちゃぶ台コタツ。通常は茶の間のちゃぶ台として使っているものに、
ヒーターの電源をつけて、コタツ布団を挟めばOKなので、ものの3分
でコタツになりました。
体が暖かくなると、体がホッとしますよね〜。
そんな訳で、TENでは今年の冬も皆さんに暖かく過ごしてもらいたい
と、「TENのぽかぽかキャンペーン」をすることにしました。
昨年大人気だった、とってーも可愛くお洒落な「TENのゆたんぽ」と
あったかドリンク人気ナンバーワンの「極上 根津ジンジャーティ」が
いよいよ今年も今週末から登場しました!
いい物しか薦めないTENですが、それにしても冬には、この根津ジン
ジャーティいいですよ〜。まず、天の紅茶に国産無農薬生姜がたっぷり
ブレンドされているので、えぐみも渋味もない上に香りが高いんです。
まさに、ネーミング通り極上。
私のおすすめは、濃い目に出したジンジャーティにミルクをたっぷり入
れた、極上ジンジャーミルクティー。
体の芯からポカポカ温めてくれますし、生姜だから風邪予防にもいいの
で、私自身、冬の毎日の飲み物になっています。
そして「TENのゆたんぽ」については、我が家の大学生の娘達も去年
から愛用しているのですが、気がついたら今年ももう毎晩使っている様
子。娘は「私のエコ暖房」と呼んでいます。確かにそうかも。。。です
ね。ただし「TENのゆたんぽ」(チェックバージョン)は在庫に限り
がありますので、お早めに♪
で、気になる「ぽかぽかキャンペーン」については…長くなるので、本
文をご覧下さ〜い。
皆様もこの冬、ぜひポカポカ暖かくお過ごし下さいねぇ。
さぁて、今日のコラムは、ずーっとここのところ思っている、現政府の
「子ども手当て」について、私の考えを書いてみました。
私がメルマガに書いたところで、どうにもなるものではないでしょうが
ネットというのは、思わぬ力を出してくれることもあるので…。
それから、ずーっとお休みしていた連載小説、今日は久しぶりに少し復
活です。長い間、ごめんなさい。来週はもう少し長く続き書きます。
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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様========「未来ある子どもたちの為に」
2・TEN占い==========今週は「タロットカード」占い
3・TEN’sショップ=====「TENのぽかぽかキャンペーン」
4・イベント情報===「アシリ・レラさんを迎えて アイヌの叡智」
5・インフォメーション=============「TENの集い」
6・連載小説================「雨弓のとき」(68)
7・編集後記===================「ひとりごと」
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【1】◆◇コラム 風の文様 ◆◇
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□「未来ある子どもたちの為に」
新政府が選挙の折、マニフェストとして打ち出した「子ども手当て」。
その為に予算全体の組み替え、見直し作業を進めている様子が毎日報道
されている。
子ども1人当たり月額2万6000円を支給する手当の財源として、配
偶者控除などを見直すもので、少子化対策のため国民に理解を求めると
しているが…。
完全実施には年間5兆3000億円の財源が必要だという。
未来ある子どもたちのことを考えていくのは、大人としての責任だ。
自分の子どもであろうがなかろうが、皆で支えていく社会でなければい
けないと、私も思う。
しかし、今、新政府が打ち出している、この子ども手当ては、本当に子
どもたちに役立つのだろうか。そして少子化もそれで止まるのだろうか。
私は、何の役にも立たないように思えてしょうがない。
子育てには、確かにお金がかかる。
出産費用、ミルク代、オムツ代、保育園や幼稚園の費用。小学校にあが
れば、ランドセルも必要だ。ノートや消しゴム、えんぴつ…。
修学旅行代だって大変だ。中学生になったら制服だって購入の必要があ
る。もちろん、食費や洋服代だってかかるだろう。
だからといって、子どものいる各家庭に5兆3000億円もバラまくと
いうのはナンセンスだ。
先日もあるアンケートを見ると、50%近くの人がその多くを貯蓄にま
わす予定だと答えていた。また進学塾やお稽古代にあてようと考えてい
る家庭も多いらしい。ただ実際に支給されたらお父さんの飲み代お母さ
んの洋服代や化粧品代に、また、家族旅行代にそのお金をあてる家庭も
かなり出てくるだろう。ある意味では内需拡大かもしれないが、そんな
不透明な内需拡大があるだろうか。
「子ども手当て」というのなら、未来ある子どもたちの為に、直接、そ
れも平等に使って欲しい。欲の皮が突っ張った親のもとに手渡ったって
皆が苦労して納めた税金を、まさにドブに捨てるようなものである。
それに、このお金集めの為に、どれほど多くの国民生活に支障が出てく
ることだろうか。そもそも、5兆3000億円ものお金を、子ども政策
に使う必要性があるのだろうか。
子どもが国の宝だとしたら、お年寄りも人の宝なのだ。
これまで精一杯、世の中の為に頑張ってきた人たちを、今の大人を育て
てくれた人たちを、邪険に扱い過ぎてはいないだろうか。
お年寄りは、経験と知恵の宝庫であることを忘れてはいけない。
その経験と知恵を出す場が、今無くなっているから、お年寄りのボケが
進んでいるのではないだろうか。
また、世の中には様々な事情を抱えた人たちが、多々いる。
その事情も考慮せず「無駄を省いて、子ども手当て」という大義名分で
バサッと切捨ててしまうようなやり方は、正しい大人のあり方だろうか。
百歩譲って、5兆3000億円のお金を子どもたちの為に使おうという
のなら、本当に子育てに必要なお金にまわさなければ、間違っていると
私は思う。
少子化を止めるというのなら、まず、妊娠検診費用から出産費用まで国
で負担したらいい。生まれた赤ちゃんが1歳になるまで、オムツや粉ミ
ルクの補助券のようなものを出したらいい。保育施設も増やし、受け入
れ口を大きして、保育費の負担もうんと軽減させたら、安心して子ども
も産めるだろう。小学校のランドセル、えんぴつやノートなどの文具類
も引換券や補助券など出して、子どもたちがいつでも安心して勉強でき
る環境つくりを国が整えたらいい。
そして給食費。これこそ全額国が負担したらいい。払う親、払わない親。
と近年目くじら立てていたが、親が払わず肩身の狭い思いで学校に通っ
てきた子どもたちも沢山いただろう。中学の制服も、修学旅行も国が負
担したらいい。親が修学旅行の負担金を積み立てすることが出来ず、泣
いている子どもたちだっているのだ。
今で総額いくらぐらいかかるのか、私にはわからないが、もしもこれら
のものが、国で賄ってくれたなら、子育て中の家庭の負担は、現実的に
かなり減るだろう。
「子ども手当て」が出ても、給食費や修学旅行の積み立てを滞納する親
は必ず出てくる。
「子ども手当て」を考えるのなら、皆が笑顔で学校に通える案に使って
欲しい。
全ての子どもたちの真の幸せ、明るい未来に繋がるのならば、多少の増
税だって仕方がない。
マニフェストに拘り過ぎて急ぎ足に歩き過ぎると、日本の国そのものが
転んでしまうような気がする。
未来ある子どもたちの為にも、お金は大切に使ってもらいたい。
これが私の願いだ。
天川 彩
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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
今週は[タロットカード]で運勢を占ってみました。
2009年11月14日(土)〜11月20日(金)あなたの運勢
〈1月生まれ〉
何をやっていても気がころころと変わってしまいそう。今週はじっくり
と腰を落ち着けることが大切です。地道な努力が実を結ぶことを忘れず
にね。
〈2月生まれ〉
あなた自身の考えに執着してはいませんか。物事には様々な考え方があ
ることを思い出して下さい。今週は人の意見にしっかりと耳を傾けて。
〈3月生まれ〉
空想ばかりを楽しんではいませんか。全ては現実と繋がっています。真
実の道を歩くためにも妄想の癖はやめたほうがよさそうです。
〈4月生まれ〉
着実に前進している一週間です。明るい未来にむかって自信をもって今
やるべき事をやってね。
〈5月生まれ〉
物事がなかなか前に進まないかもしれません。でも今は休むべき時かも
しれません。しっかり休養をとることも時には大切ですよ。
〈6月生まれ〉
周りの意見に振り回されてはいませんか。今週はあなた自身が何を望ん
でいるのか、何をするべきなのか、もう一度しっかり見つめ直してみま
しょう。
〈7月生まれ〉
胸の中で思っていることを相手に言えずいらいらしてはいませんか。今
週はムキにならず、冷静になって人としっかり向き合って下さいね。
〈8月生まれ〉
いままで気が付かなかったことに目が向くかもしれません。あなた自身
が解決しなければならないことかもしれないので勇気を持って向き合っ
てね。
〈9月生まれ〉
新しいことに否定的になっているかもしれません。また考え方も狭くな
りがちなので、今週はできるだけ俯瞰して物事をみるようにしてね。
〈10月産まれ〉
人との関わりが上手くいかないかもしれません。それはあなた自身が心
を開いていないからかもしれませんよ。まずは相手の良い部分を見つけ
てね。
〈11月生まれ〉
今までがんばってきたことにやっと成果が現れてきそうです。気持ちに
余裕も出てくるので、さらなる飛躍の為に動いてね。
〈12月生まれ〉
今まで悩んできたことや不安だったことが解決していきそうです。また、
希望の光も見えてきそうですよ。
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【3】◇◆TEN’sショップ◆◇
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『TENのぽかぽかキャンペーン』
11月末まで
キャンペーン商品をお買い上げの方にプレゼント!
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TENでは、これからの寒い冬を皆さんに楽しく過ごしてもらおうと
「TENのぽぱぽかキャンペーン」を開催することにいたしました。
対象商品を合計3500円以上お買い上げの方には、
TENのイベント・ツアーで使える
TEN’sチケット1000円分(2010年1年間有効)』をプレ
ゼント。
対象商品を合計10、000円以上お買い上げの方には、
同様のTEN’sチケット3、000円分プレゼント+TENのオリ
ジナルカイロケース(定価600円)もプレゼント!
*絶対お得な「ぽかぽかキャンペーン」どうぞお見逃し無く!*
http://www.office-ten.net/shop/winter/2009/top.htm
<TENのぽかぽかキャンペーン・対象商品>
『TENのお茶シリーズ』
◎「TENの紅茶」 ……750円
◎「TENのほうじ茶」 …600円
◎「TENの珈琲」 …780円
◎「極上 根津ジンジャーティ」…1050円
『セレクトの森』
◎「TENのゆたんぽ」 …3500円
*TENのお茶シリーズは、合計6個以上お買い上げいただくと送料無
料とさせていただいております。
「TENのゆたんぽ」の送料は全国一律500円ですが、お茶6個以上
と組み合わせていただきました場合には、送料無料となります。
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【4】◆◇大好評イベント情報!◆◇
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大好評、受付中!
*ワークショップが混みあってきました。ご希望の方はお早めに*
〜アイヌの語り部 アシリ・レラさんを迎えて〜
◎◆◎ アイヌの叡智とユーカラの夕べ ◎◆◎
日 時 : 2009年12月8日(火) 開演19:00
会 場 : Bumb東京 マルチホール
(東京メトロ有楽町線、JR『新木場駅』下車 徒歩10分)
チケット: 前売り 2800円/当日 3500円
★70席限り!★(今回はとても小さな会場です)
*前売り完売の場合は当日券の販売は致しません。予めご了承下さい。
詳細/申込み
http://www.office-ten.net/rela-natulalist/yukara2009/t.htm
アイヌの伝統継承者であり、
語り部でもあるアシリ・レラさん。
彼女は、カムイユーカラ(神々の叙事詩)の中で、
文化の神オキクルミが降り立ち、
生活や文化を伝われている場として
うたわれているアイヌの聖地、
北海道・二風谷に生まれ育ちました。
今、生きとし生ける全ての「いのち」の為に、
民族に伝わる叡智とユーカラ
(口頭伝承されている叙事詩・神話)を携えて、
魂の底から私たちに語りかけます。
世の中が大きく変動した今年。
レラさんの語るユーカラは私たちに
大切なメッセージを届けてくれることでしょう。
どうぞ、あなた自身の耳で、そして心で
受け取りに来てください。
*************** 翌日ワークショップ開催 ***********************
アシリ・レラさんに直接アイヌ刺繍を学ぶ
жжж◆アイヌ刺繍ワークショップ ◆жжж
只今、同時・受付中!
12月9日(水)1日2回 (各回20名※先着順)
!)12:30〜15:30 !)18:30〜21:30
会 場 Bumb東京(和室)
参加費 3800円(材料費込み)
アイヌ文様の意味などを学びながら、
魔よけになるお洒落な壁掛けを作ります。
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【5】◆◇インフォメーション◆◇
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久しぶりに…
『TENの集い』
開催します!
「TENの集い」とは、メルマガ読者の皆さん、そしてTENと繋がり
のある皆さんと楽しく過ごす懇親会です。
TENに集う方々は、感性がきっと近い方々です。
ここで是非、素敵なお友達も、見つけてください♪
今回はスタッフ・キョウちゃんの結婚お祝いパーティも
兼ねています!
ご都合つく方、是非、起こし下さい。
『TENの集い』
&
結婚お祝いパーティ
日時:2009年11月29日(日)13:30〜16:00
会場:ギャラリーCafe「フィールド」
JR「大井町駅」徒歩7分
参加費 3、000円
(オードブル&ワンドリンク)
《ゲーム(賞品あり)映像、おのろけ?会見、他 》
定員30名
http://www.office-ten.net/off1.htm
*準備の都合上、必ず事前にお申込み下さい
●当日は、会場にて享子’sギャラリーもOPENいたします●
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【6】◆◇連載小説◆◇
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「雨弓のとき」を楽しみに読んでくださっていた方から、続きはまだか
休みが長すぎるとお叱りを受けました。本当にごめんなさい。
3ヶ月近くも連載をお休みしていたので、今週はあらすじと、前回のお話
をもう一度ご紹介した後で、新たな続きをお届けします。
そんな訳で、今週は短いのですが、来週はもう少し長く書きます。
<今までのあらすじ>
両親の不仲で自分は不幸なのだと思い込み、親を嫌い続けてきた祥子。
しかし大学2年の秋。アルバイト先で知り合ったアパレルメーカー勤務
の良一との出会いで祥子の考え方に変化が起る。
大学卒業後は、マスコミで働くことを夢見ていた祥子だったが、妊娠が
わかり大学を中退。夫・良一と娘・真由子との三人暮らしの中で、それ
なりの幸せを見つけようとしていた祥子だったが、育児へのストレスや
マスコミ業界で働き出した親友への嫉妬、そして夫の不倫疑惑が重なり
気持に余裕がなくなった祥子は、娘を手にかけようとしてしまう。
祥子は、憧れ続けていたアイルランドに渡り死を決意するのだが…
『雨弓のとき』 (67)
天川 彩
深い眠りから目を覚ますと、飛行機はアイルランドの首都、ダブリン空
港に到着しようとしていた。
窓の下を覗き込むと、どんよりと重い雲が町の上にかかっている。
飛行機は急降下をして、その雲を割るようにして入りアイルランドの町
並にグングン近づいていった。
祥子は大きく一度深呼吸をすると静かに目を閉じた。
機体の車輪がキュッと一度音を立てたかと思うと、次にゴーと唸りなが
ら滑走路の中に滑り込んでいく。
「着いた」
祥子は、誰にいう訳でもなく小さく呟いた。
祥子にとって、何もかもが初体験の外国旅行。
ー出来ればこんなかたちではなく、良一や真由子と来てみたかったー
頭の中でそんな思いがよぎったが、祥子は打ち消すように小さく首を横
に振り、隣の客に続いて飛行機から降りた。
ダブリン空港は、成田空港や乗換えで使ったアムステルダム空港に比べ
て、予想外に小さな空港だった。
入国審査では、何一つ隠し事があるわけでも無いのに、審査官の目が恐
かった。ようやく無事に出てきた時には、祥子の全身は汗でじっとり滲
んでいた。祥子は、ここから先の乗り継ぎを調べようとガイドブックを
開きかけたが、トラベルインフォメーションの看板が目に入った。
祥子が最終目的地として決めたのはイニシュモア島という場所だった。
夫、良一の勤務するアパレルメーカーの名前にもなっている島。かつて
良一と共に旅行に行くはずだった、このアイルランドの小さな島…。
カウンターの若い女性はとても早口だった。祥子は、もともと英語が好
きな科目の一つでもあり、大学でもそこそこ上位の成績をとっていた。
だから会話にはある程度自信があったのだが…実際には難しかった。
ただ、長距離バスに乗りゴールウェイという港町まで移動して、そこか
らフェリーに乗れば行けるということだけは理解できた。この時、すぐ
に向うバスも出ているようだったのだが、祥子の身も心も完全に疲れ切
っていたので、この日は、空港近くのホテルに宿泊するという選択をし
た。
教えてもらったホテルは空港の近くにあった。
どうにか、ホテルまで辿り着き、チェックインを済ませて部屋に入った
時までは覚えている。しかし、そこからの記憶が一切なかった。
体の冷えと体の痛みで目が覚めた時には、後一歩でベッドというところ
の、ベッド脇の下で横になっていた。
「あ痛たたた…」
気を失っていたのか、硬いカーペットの上で何時間も同じ姿勢で横にな
っていたらしく、体も硬直している。祥子はギシギシと軋む関節の音を
聞きながら、ゆっくりと体を起こして時計を見た。三時を少しまわった
ところだ。ー日本では、今何時ぐらいなんだろうー
一瞬そう思ったが、正直なところ家を出てきてから、どの位の時間が過
ぎたのかも検討がつかない。
祥子は、ボストンバッグから着替えを取り出すと、シャワールームで思
い切り熱いシャワーを全身に浴びて、今度はベッドの中にちゃんと潜り
込み、目を瞑った。しかし、良一や真由子の顔が、母親、敏子や他界し
た祖母や父親の顔が、更には仙台に住む良一の家族の顔まで一人ひとり
浮かびあがり、涙が止め処なく溢れ出て、空が白々と色を変えるまで眠
りにつくことができなかった。
祥子が、目を腫らせたままゴールウェイ行きのバスに乗ったのは、翌朝
の午前十時過ぎだった。バスの中の日本人は、どうみても祥子一人だけ。
それどころか、観光客そのものが少ないらしく、乗客たちの多くは、地
元の人たちのようだった。
バスはアイルランドを横断するように、いくつかの町を越えて、西海岸
にあたるゴールウェイの町に着いた。祥子は、中世のような美しい町並
の道を、少し歩いてみたいと思ったがすぐにフェリー行きのバスがやっ
てきた。それは、さっきまで乗っていた最新の横断バスとは全く違う。
スプリングも壊れかけた年式の古いバスは、ほとんど乗客を乗せないま
ま、フェリー乗り場までノンストップで走った。
つづく…
『雨弓のとき』 (68)
天川 彩
やはりフェリーにも、ほとんど乗客が乗っていなかった。
観光客らしい数組のカップルと親子連れ。そして、多分島の人なのだ
ろう。ハンチング帽を深くかぶったおじさんが走って船に乗り込んだと
こで船は出港した。祥子は甲板に出た。
潮風の匂いは、日本と同じだと思った。
ハンチング帽のおじさんも直ぐに甲板に出てきて、祥子の方を見た。
おじさんは、何か言いたげにしていたが、言葉が通じないと思ったのか
遠くからニコッと笑いかけただけだった。祥子はほんの少しだけ頬を緩
めて微笑み返すと、船の反対側に移った。
誰とも喋りたくなかった。一人になりたかった。
船の隅に「Inis MOR」の文字を見つけて、祥子は心臓がバクバクした。
間違いなく「イニシュモア」に向っている。
良一の会社の名前。そして、かつて良一と一緒に来るはずだった島の
名前。
良一が出会った頃、話して聞かせてくれた、古代ケルトの人々の島に今
向っているのだ。数千年も昔から人々が住み続けているという、アイル
ランドのはずれの島。不毛の大地に命を繋いで生きてきた人々の島。
だから、そこで作られるアランセーターは、命の祈りが折り込められた
セーターなのだと話してくれたことを、祥子は急に思い出した。
そんな島に、なぜ一人で向っているのか。祥子は自分の目的がよくわか
らなくなっていた。
フェリーはやがて、ほんの少しだけ人々で賑わっている港に着いた。
カップルや家族連れは、日帰り観光なのだろうか。大きな荷物を持って
降りたのは、祥子だけだった。
フェリー乗り場には、車や自転車と共に馬車も止まっていた。
ハンチング帽をかぶったおじさんは、息子らしき人物と共に、その馬車
に乗って去っていった。
祥子は、まるで古い映画のワンシーンを見ているような気分だった。
そして、ふと我に返った時、目的地に辿り着いてしまったことに祥子は
困惑していた。
つづく…
……………………………………………………………………………………
【7】◆◇編集後記◆◇
……………………………………………………………………………………
現在、来年のツアーなどの計画を少しずつ練っています。
ツアーの第一弾は、今年も大好評だった「大人のお年玉ツアー」です。
ダイヤモンド富士山と紅富士と極旨の料理を楽しむ旅、年明け早々縁起
よい旅。いい感じですよ〜。
来週には早くも詳細お届けできそうですよ。お楽しみに!
aya