2009/08/14━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's magazine 第382号 ☆★☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net
こんにちは、天川 彩です。
私は先週、久しぶりに故郷である北海道に戻り、ゆったりとした時間を
過ごしてきました。おかしな話ですが、改めて自分の故郷がこれほどま
でに大自然の宝庫だったと実感しました。
また、生まれて初めて稚内にも訪れましたが、サハリン(樺太)の玄関
口なのだということがよくわかりました。
亡き父の故郷・サハリン。かつては行くことすら出来ず「いつか行けた
らいいな」と口癖のように父が言っていた場所まで、今は船が月に何便
も出ているというので驚きです。
サハリンには、樺太アイヌやニブフ、ウィルタといった北方民族の人々
が暮しています。いつの日にか、父の故郷を歩きつつ今や少数となった
北方民族の村も訪ねることが出来ればいいなぁと思いました。
さて、今はお盆真っ只中。
都内も全体的に、のんびりした空気が漂っています。
きっと多くの皆さんも、お盆休みの最中でしょうね。どうぞ、よいお休
みをお過ごし下さい。
今週は、久しぶりに連載小説の続きも書きましたよ〜。
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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様==========「心の中で囁く二つの声」
2・TEN占い==========今週は「タロットカード」占い
3・最新情報=========「世界遺産 アンコール遺跡ツアー」
4・日本を堪能する旅==========「秋の大人の遠足ツアー」
5・天河太々神楽講==========旧暦七夕祭「天の川に祈る」
6・連載小説================「雨弓のとき」(67)
7・編集後記===================「ひとりごと」
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【1】◆◇コラム 風の文様 ◆◇
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□「心の中で囁く二つの声」
清潔なイメージだった女性芸能人が乱用薬物に溺れてしまった。
小学生の母親でもある彼女が、魔の誘惑に負けた事件は、世間に大きな
衝撃を与えた。
通常の芸能ニュースなら、これほど毎日報道されていたら「もういい加
減いいよ」とうんざりしてくるのだが、今回のニュース報道だけは違う。
薬物に手を染めることは、その人の人生を狂わせるだけではなく、周囲
の人々の人生をまでもを、どれほど不幸な方向へ巻き込むのか…。
何度も見聞きししながら、いまだ薬物依存の数が減らず、それどころか
今も増え続けている今、彼女の逮捕劇は大きな意味を持つものだと思う。
なぜ、彼女が覚せい剤に手を染めていったのか。
きっと、聞けばそれなりの事情や言い分はあるだろう。
しかし、どんな理由を持ってきたところで「好奇心や魔の誘惑を打ち消
せなかった心の弱さ」という部分だけは否定できないだろう。
時に、人の心の中には、二つの声が囁く。
己の存在意義を語り真理へと導く声と、甘いささやきで快楽や我欲を満
たそうと誘惑する声。
どちらも自分の声で語りかけてくるから厄介だ。しかし前者が本当の魂
の声だとすると、後者は魔的なものが摩り替わって語りかける声。
彼女のような薬物依存ということではなくとも、人生の選択の中で、ど
ちらの声に耳を傾けるかで、大きく運命が変っていく。
大抵の場合、前者の声は小さく後者の声は大きい。
「やってはいけない」とわかっていながら「止められない」。
「進んだ方がいい」とわかっていながら「進めない」。
「進んじゃいけない」とわかっていながら「進んでしまう」。
前者の声が、正論であることは百も理解しているのに、後者の声に従っ
てしまうのは、ただただ心の弱さゆえ。結局全ては自分の責任なのだ。
魔の囁きは、魅惑的な言葉を使い、さももっともらしく…、正論は所詮
綺麗ごとなどと批判して、誘惑に負けることを、それが人間さ、などと
正当化してみる。
魔的な声に、魂の声をかき消されないようにするには、その先の未来を
想像してみることだ。
結局はその場しのぎであったり一瞬の幸せでしかないことに、自分の人
生を傾けると、本当に残念なことになる。
人生は短いようで長く、長いようで短い。
せっかくの人生ならば、正々堂々と明るく輝かしく生きていた方がいい。
話を、乱用薬物に陥った女性芸能人に戻すと…
乱用薬物を一度経験してしまうと、まさに「魔のささやき」の呪縛から、
なかなか逃れられなくというが、そこを何が何でも断ち切って欲しいと
思う。それが出来るのは自分力を信じる以外にない。己の魂の声にしっ
かりと、耳を傾け直して立ち直って欲しいと願う。
そして、世の中にこれほど蔓延している魔薬(覚せい剤・麻薬・大麻そ
の他ドラッグ関連全て)の恐ろししさを、世の中に伝える役割の人とし
て、これから先の人生を精一杯生きて欲しい。
祈りを持って、彼女の今後を見守っていきたいと思う。
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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
今週は[タロットカード]で運勢を占ってみました。
2009年8月15日(土)〜8月21日(金)あなたの運勢
〈1月生まれ〉
勘違いをしたまま動いていることがあるかもしれません。今週は、いつ
も以上に慎重にものごとをすすめてくださいね。
〈2月生まれ〉
新しいものや新しい対人関係を鬱陶しく思ってはいませんか?今週あな
たに必要なことは、柔軟に受け入れることかもしれません。
〈3月生まれ〉
派手な動きはないようですが、あなたの勤勉さが思わぬところで評価さ
れるかもしれません。たゆまぬ努力を続けてね。
〈4月生まれ〉
明るい未来に繋がる喜びごとが多い一週間かもしれません。それは、あ
なたの今までの努力の賜物です。今週は素直に喜んでください。
〈5月生まれ〉
今週、あなたに必要なキーワードは言葉です。大切な思いや伝えたいこ
とは、はっきりあなたの言葉として相手に伝えて下さい。きっと真意が
伝わるはずですよ。
〈6月生まれ〉
今まで行き詰っていたことに解決の目処が立つかもしれません。また、
新たなスタートの時でもあるので、力を抜かず頑張ってみてね。
〈7月生まれ〉
あれこれ手を出しすぎてはいませんか?結局何一つ結果が出せないかも
しれません。今週は少し整理をつけて、本当にやりたいことが何なのか
考え直してみましょう。
〈8月生まれ〉
今週はあなたが積極的に動くより、周囲のまとめ役になっている方がよ
さそうです。今週はサポート役に徹してね。
〈9月生まれ〉
心が安定した一週間となりそうです。また家族とのより良き絆が結べそ
うなので、会話の時間をいつも以上に持ってくださいね。
〈10月生まれ〉
周囲の人たちと意見が対立してしまうかもしれません。今週は相手の言
い分を聞いた後、あなたの意見も伝えるようにすると良さそうです。
〈11月生まれ〉
今まで当り前だと思っていたものが、なくなってしまうかもしれません。
また心労もありそうなので、できるだけ休養をとるよう心がけてくださ
い。
〈12月生まれ〉
夢が叶う一週間となりそうです。また精神的にもゆとりが出そうなので
今週は積極的に人の集まる場所に出かけてみてね。
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【3】◆◇最新情報◆◇
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TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
『神秘のアンコール遺跡』
世界遺産・環境保護活動も楽しむ旅
〜朝日に輝くアンコールワットと遺跡保護・特別体験プログラム〜
(秋分の日は、アンコールワット中央から朝陽が昇ります)
2009年9月21日(月祝)〜9月26日(土)
6日間
198、000円
現地受け入れの都合上 <先着10名>で締め切らせていただきます
最低催行人員6名
詳細・お申し込みは
http://www.office-ten.net/a/top.htm
カンボジアの熱帯雨林の中に静かに眠るクメール王国・宗教的大寺院跡、
アンコール遺跡群。
数々の神話や王朝にまつわる栄光の物語など、1000年も昔に作られ
た信仰の遺跡は、アジア屈指の古代文明の謎ともいわれています。
今回の旅はアンコールワットが一年で最も美しく朝日に輝くといわれる
秋分の日を中心に組んでいます。早朝の黄金に輝く幻想的なアンコール
ワットの風景をどうぞ心ゆくまでご堪能下さい。
また、カンボジア伝統舞踊の稽古見学や踊りの体験、クメール語のレッ
スンタイムなどのほか、
ディナータイムには影絵芝居鑑賞など楽しいプログラムもいっぱいです。
しかし、本物にこだわるTENの旅。勿論、それだけではありません。
なんと旅の3日目と5日目には、世界遺産の環境保護活動にも特別に参
加させてもらうことになりました。これは、アンコール地域における文
化遺産保護と地域開発を担うカンボジア政府の組織「アプサラオーソリ
ティ」の環境保護活動に参加するもので、遺跡の奥の草刈など地元カン
ボジアの方々と共に遺跡内の環境整備をするものです。また現在も続く
遺跡修復現場を見学したり、一般未公開の石像なども拝見させていただ
くなど、通常のアンコール遺跡観光では経験できないスペシャルな時間
が待っています。最終日には、政府より感謝状が授与されるそうで、ち
ょっぴり嬉しいですね。
もちろん、フリータイムもありますので、他の遺跡を巡ってみたり、可
愛い雑貨のお店を覗いて見たり…存分にアンコール遺跡タイムを楽しん
でください。
せっかくアンコールワットに行くのなら、こんな旅がしたい。
それを実現した旅です。是非、ご一緒にいかがですか?
http://www.office-ten.net/a/top.htm
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【4】◆◇新・日本を堪能する旅◆◇
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TENsトラベルメンバーの為の旅企画
◇*◆*◇大自然の恵みを思い切り楽しく食べよう◇*◆*◇
秋の大人の遠足ツアー
(きのこキムチ/ 生栗1袋/ ボトルワイン1本 お土産つき)
2009年10月3日(土)〜10月4日(日)
1泊2日
〜フルコースディナー付き・美味しん坊体験プログラム代込み〜
25、800円(税込)
東京近郊・集合解散
8名限定募集
(移動手段の都合により、少人数募集です)
詳細はhttp://www.office-ten.net/otona/aki/top.htm
交通費・宿泊代・朝夕食代・観光案内代
美味しん坊体験プログラム代込み
昼食代・温泉代は各自現地でお支払い下さい。
<美味しん坊・体験>
体験1 きのこ狩り
体験2 ソーセージ作り
体験3 きのこキムチ作り
体験4 栗拾い
体験5 ぶどう狩り(食べ放題)
体験6 ぶどう踏み体験(生ジュース&ワイン用)
<美味しいお土産>
お土産1 ワイン… クリスマス前に自宅に届きます!
お土産2 きのこキムチ… 瓶詰めにしてお持ち帰りください。
お土産3 生栗… 1袋お持ち帰りください。
美味しいものを食べると、なぜか幸せな気持ちになりますよね。
秋の大人の遠足ツアーは、味覚の秋を存分に楽しんでもらう内容にしま
した!
今回最初に訪れるのは、星の降る里と呼ばれる長野県・原村。
まずは、この日お世話になる宿のご主人に案内指導してもらい
「きのこ狩り」を楽しんでください。
宿に戻った後は、採取したてのきのこで「きのこキムチ作り」や
「腸詰ウィンナー作り」にも挑戦してみましょう。
食材作りをした後は、近くの温泉でさっぱり汗を流してください。
お腹を空かせたて、宿に戻るとフルコースディナーが待っていますよ。
夜は満天の星空を見ながら美味しいワインを飲むのも素敵ですね
翌朝、早起きが得意な方は、森の中を是非お散歩してみてください。
新鮮な空気と美味しい朝食をしっかりいただいた後は、
清里へ移動して、旬の「栗拾い」です。
手袋とトングを借りて、イガに気をつけながら大きな栗を収穫してくだ
さい。袋一杯の生栗をお土産にしたならば、秋の味覚の定番「ぶどう狩
り」に移動です。美味しいぶどうをお腹いっぱい食べて満足した後は、
ワイン作りの為のぶどう狩りもしてください。その後は樽の中に一緒に
入り、専用長靴で「ぶどう踏み」です。搾りたて100%のぶどうジュ
ースを試飲した後は、ワイン用のラベル作りをしてくださいね。
この日摘んで潰したぶどうは、クリスマス前、美味しいワインとして自
宅に届きます。
夢のように楽しくて、思い切り元気に、そしてハッピーに!
心もほっぺも大満足の旅ですよ。
ぜひご一緒いたしましょう!
*栗拾いは、収穫期のズレなどで体験できない場合もあります。
予めご了承下さい。
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【5】◆◇太々神楽講◆◇
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締め切り8月18日
●自分の根源と向き合う珠玉の時間●
人
 ̄Y ̄*
天河太々神楽講2009
『天の川に祈る』☆
万物の「いのち」尊ぶ・旧暦七夕祭 *
2009年8月25日(火)〜8月27日(木)
現地集合・現地解散
★奈良・天河神社七夕祭 お手伝いワーク
http://www.office-ten.net/tatakagura/2009.htm
奈良県吉野の山里で、千三百年続いている天河神社。
自分自身の根源と触れるため、太古より遠路はるばる人々が訪れる聖地
で年に一度、旧暦七夕の日に行われている「七夕祭」。
ご神殿でのご神事…
仏式による万霊の御霊供養…
天の川に於いての灯篭流し…
幻想な美の世界と祈りの時間が、天河の七夕祭です。
この『天の川に祈る』と題したワークでは
神社でのお祭り準備から、ご神事の当日のお手伝い、そして翌日の
後片付けまでと、全てに関わらせていただきます。
年に一度の特別なワークですので、神社から白作務衣をお借りします。
神社に奉職されている方々のご指導のもと、お祭りに参列される方々を、
静かにお迎えしてください。
神社のお掃除や短冊の受付け
そして、二千基にも及ぶ灯篭流しのお手伝い
それら全てに関わる時間が
参加されたお一人お一人の魂心再生に
きっと繋がることでしょう。
静かな祈りの時、是非ご一緒したしましょう。
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■平成21年8月25日(火)〜8月27日(木)
(今年の旧暦七夕は8月26日(水)です。)
■参加費 36,000円
2泊3日お食事つき 宿泊 神社正面『本家 柿坂』別館貸切
■現地集合(14:30)・現地解散(12:30)
お申し込み頂いた方には交通機関などの詳しい資料を送付いたします
『天河太々神楽講・天の川に祈る』によせて・・・
自然の中に神々があるというアニミズム的な考えは、私たちのはるか遠
く5千年以上も前の縄文時代の祖先たちから、脈々と続いてきました。
その生命観は、今も日本の神社の中で生きつづけていますが、中でも、
宗教という枠を越え、国や人種、性別、年齢、全ての枠をも越えて、
開かれているのが天河神社です。太古からの聖地として空海や世阿弥を
はじめ多くの先人たちが、自らを見つめる場として、また芸を奉納する
場として訪れています。
天河太々神楽講に講元として、皆さんをご案内する役目を賜ってから今
年で10年目を迎えます。講元とは指導者ではなく、人と大いなる根源と
のつなぎ役です。私は天川の名を名乗らせていただいているので、毎年
この七夕祭の折、感謝の意味も込めて講元をさせていただいております。
この「天の川に祈る」と題したワークは、御神事そのもののお手伝いを
ワークとし、お祭り前日の準備から社殿の掃除、御神事当日のお手伝い
そして翌日の片づけまで、神社の方々、地元の村の方々と共に過ごす、
大変貴重なものです。また、笹に結ぶ短冊に、「真」の祈りの言葉や願
いの言葉を連ねる為のワークショップも祭り前日に行います。
本年も天河における七夕祭りの御神事手伝いへ皆様をご案内しようと思
います。どうぞ、ご自身の根源と繋がりたいと思っていらっしゃる方、
どうぞお待ちいたしております。
講元 天川 彩
http://www.office-ten.net/tatakagura/2009.htm
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【6】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>
両親の不仲で自分は不幸なのだと思い込み、親を嫌い続けてきた祥子。
しかし大学2年の秋。アルバイト先で知り合ったアパレルメーカー勤務
の良一との出会いで祥子の考え方に変化が起る。
大学卒業後は、マスコミで働くことを夢見ていた祥子だったが、妊娠が
わかり大学を中退。夫・良一と娘・真由子との三人暮らしの中で、それ
なりの幸せを見つけようとしていた祥子だったが、育児へのストレスや
マスコミ業界で働き出した親友への嫉妬、そして夫の不倫疑惑が重なり
気持に余裕がなくなった祥子は、娘を手にかけようとしてしまう。
我に返った祥子は、自らの命を絶とうと憧れ続けていた地、アイルラン
ド行きを決める。
『雨弓のとき』 (67)
天川 彩
深い眠りから目を覚ますと、飛行機はアイルランドの首都、ダブリン空
港に到着しようとしていた。
窓の下を覗き込むと、どんよりと重い雲が町の上にかかっている。
飛行機は急降下をして、その雲を割るようにして入りアイルランドの町
並にグングン近づいていった。
祥子は大きく一度深呼吸をすると静かに目を閉じた。
機体の車輪がキュッと一度音を立てらかと思うと、次にゴーと唸りなが
ら滑走路の中に滑り込んでいく。
「着いた」
祥子は、誰にいう訳でもなかく小さく呟いた。
祥子にとって、何もかもが初体験の外国旅行。ー出来ればこんなかたち
ではなく、良一や真由子と来てみたかったーと頭の中に思いがよぎった
が、祥子は打ち消すように小さく首を横に振り、隣の客に続き飛行機か
ら降りた。
ダブリン空港は、成田空港や乗換えで使ったアムステルダム空港に比べ
て、予想外に小さな空港だった。
それでも入国審査では、何一つ隠し事があるわけでも無いのに、審査官
の目が恐く、ようやく終えて出てきた時には、祥子の全身は汗でじっと
り滲んでいた。祥子は、ここから先の乗り継ぎを調べようとガイドブッ
クを開きかけたが、トラベルインフォメーションの看板が目に入ったの
で、そちらに向った。
祥子が最終目的地として決めたのはイニシュモア島という場所だった。
夫、良一の勤務するアパレルメーカーの名前にもなっている島で、かつ
て良一と共に旅行に行くはずだったアイルランドの小さな島…。
カウンターの若い女性は、とても早口だった。祥子は、もともと英語が
好きな科目の一つでもあり、大学でもそこそこ上位の成績をとっていた
ので、会話にはある程度自信があったのだが、実際には難しかった。
ただ、長距離バスに乗りゴールウェイという港町まで移動して、そこか
らフェリーに乗れば行けるということだけは理解できた。この時、すぐ
に向うバスも出ているようだったのだが、祥子の身も心も完全に疲れ切
っていたので、この日は、空港近くのホテルに宿泊するという選択をし
た。
どうにか、ホテルまで辿り着き、チェックインを済ませて部屋に入った
時までは覚えている。しかし、そこからの記憶が一切なかった。
体の冷えと体の痛みで目が覚めた時には、後一歩でベッドというところ
の、ベッド脇の下で横になっていた。
「あ痛たたた…」
気を失っていたのか、硬いカーペットの上で何時間も同じ姿勢で横にな
っていたらしく、体も硬直している。祥子はギシギシと軋む関節の音を
聞きながら、ゆっくりと体を起こして時計を見た。三時を少しまわった
ところだ。ー日本では、今何時ぐらいなんだろうー
一瞬そう思ったが、正直なところ日本を出てきてから、どの位の時間が
過ぎたのかも検討がつかない。
祥子は、ボストンバッグから着替えを取り出すと、シャワールームで思
い切り熱いシャワーを全身に浴びて、今度はベッドの中にちゃんと潜り
込み、目を瞑った。しかし、良一や真由子の顔が、母親、敏子や他界し
た祖母や父親の顔が、更には仙台に住む良一の家族の顔まで一人ひとり
浮かびあがり、涙が止め処なく溢れ出て、空が白々と色を変えるまで眠
りにつくことができなかった。
祥子が、目を腫らせたままゴールウェイ行きのバスに乗ったのは、翌朝
の午前十時過ぎだった。バスの中の日本人は、どうみても祥子一人だけ。
それどころか、観光客そのものが少ないらしく、乗客たちの多くは、地
元の人たちのようだった。
バスはアイルランドを横断するように、いくつかの町を越えて、西海岸
にあたるゴールウェイの町に着いた。祥子は、中世のような美しい町並
の道を、少し歩いてみたいと思ったがすぐにフェリー行きのバスがやっ
てきた。それは、さっきまで乗っていた最新の横断バスとは全く違う。
スプリングも壊れかけた年式の古いバスは、ほとんど乗客を乗せないま
ま、フェリー乗り場までノンストップで走った。
つづく…
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【7】◆◇編集後記◆◇
……………………………………………………………………………………
先月の皆既日食ツアーの旅の感想ページが出来上がりました。
こんなツアーだったんだなぁという雰囲気は伝わってくるかと思います。
よろしければ、見てみてください。
http://www.office-ten.net/20090722/repo.htm
それから、写真3日目の17ページから18に飛ばないようなので、17の一
番上のtopというところから18を選択して下さい。
(何のこっちゃ…って感じですが、ページを開いていただけるとわかっ
てもらえるかと…)
感想文がまだ続々届いているので、後日もう少し感想文UPは増えそう
です。
aya