2009/02/07━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's magazine 第355号 ☆★☆
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こんにちは、天川 彩です。
節分が終わり立春を迎え、いよいよ今年も本格始動といった感じですね。
今年は、何事も勢いがよく、全ての流れが心地よく思えます。
今週は、またしても面白い一週間でした。
先週、少しだけご紹介したタイの女性。実はタイ料理とエッセイ本を出
版したいという相談でやって来られたのです。本当に魅力溢れる方でし
たし、この方の書籍は、世の中に出たほうがいいとも思ったので、何か
ご協力したいと思いました。が、私は編集者ではありません。更にお話
を伺う限り今まで私がお世話になっている出版社さんでも無さそうだ…
と思っていました。
そんなところに、世界石巡礼で地球を一周する写真家の友人、須田郡司
さんから、3月のイベントについての業務連絡メールが入ってきました。
翌日から関西に出張すると書いてあったのに、彼女のことを少し書いて
何処かピン!と来る出版社を知らないか、相談したところ、某出版社の
名前を教えてくれました。最後に「出張から戻ったらまた紹介するね」
と書いてありましたが、直感的に直ぐに動いた方が良さそうな気がして
飛び込みメールを書いたのです。
すると即座にその出版社の方からお返事をいただきました。
編集者の方は、なんと私のことを何年も前から知ってくださっていたら
しく…正直なところ感激でした。そんな訳で、先週初めてお会いしたば
かりのタイ人の女性を連れて、一昨日、出版社に伺ってきました。
話が共鳴するって、本当に幸せなことです。今の時代のこと、芯がぶれ
ないことの大切さ、愉快に楽しく過ごすことの尊さ、などなど…
きっと、飛び切りお洒落なタイ料理とエッセイの本が生まれると思いま
すヨ。その日が私も今から楽しみです。
ちなみに、そのタイ人の女性の名前は、神崎ソラダーさんといいます。
先週も書きましたが、タイ料理を教えてもらいながらのイベント、春に
なったらやりたいなぁと思っています。
TENの仕事が他の会社の仕事と、多分大きく違うところは、縁と縁の
沿線上に、全てがあることです。
そんな訳で、お待たせしました!!
「ペルーツアー」がいよいよ決定しました!
ペルーで20年TV番組を制作している友人、アンデス通信社の下野さん。
彼の高校時代の先輩が、これまたペルー旅行会社を経営されていて…
そんな縁と縁が繋がって、昨年「ペルーツアー」を初めて組みました。
今年はどうしようかと思っていましたが…やはり、生涯で一度はマチュ
ピチュに行ってみたい、という方も多く、更に、同じ行くならTENの
ツアーで行きたい、というありがたい声もいただいているので…
現地の山下さんと連日のようにメールの交換をしながら、魅力120%
のペルーツアー組み立てました。
今年は、ナスカの地上絵、マチュピチュ、チチカカ湖の3つのエリアを
十分に満喫してもらう旅です。
チチカカ湖に行くことで、昨年よりかなりコストがかかってしまうので、
昨年よりツアー代金を少し高く設定するのが、普通の経営者がすること
なのでしょうが…
私自身が参加者だったなら、今のこのご時勢なので「少しでも安く。そ
れが無理なら、せめて同じ料金にして欲しいな」と思うだろうな、と強
く思い、頑張って同じ料金にしました。
更に皆さんがお休み取り易いよう、昨年同様、ゴールデンウィークを最
大限に使っています。この行程や日程で、全行程日本語ガイドつき。
更に4月から燃油サーチャージが値下がりという嬉しいニュースも届いて
いますし、円高でもあり、こんなチャンス、またと無いかもしれません。
ただし、GWのど真ん中ですので、早めに飛行機の席を確保しなければ、
残念ながら満席…となってしまう可能性も多大です。
直感的に「行こう!」と思われた方、直ぐにお申し込みくださいね!
皆既日食ツアーのお申し込み状況を見ていても思うのですが、迷ってい
るうちに、タイミングを逃すということもあるかと思います。
とにかく、詳細は本文でご紹介いたしますので、じっくりご覧ください。
それから、これまた大変長らくお待たせしておりましたTENの珈琲・
オーガニックボリビアが3ヶ月ぶりに再入荷しました。
やはり、大量生産されていない、先住民族の方の手摘みの豆となると、
いろいろと時間がかかることもあるようです。
首を長くして入荷待ちをしていた私たちもほっと一息です。ただし、豆
の値段そのものが値上がってしまっており…私たちとしては同じ値段で
扱いたかったのですが30円だけ、料金を変えさせてもらうことにしまし
た。でもTENの珈琲は、最高に美味しい珈琲です。まだ一度も飲んだ
ことが無い方は、是非お試しください。
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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム風の文様============「愉快なことは命の源」
2・TEN占い==========今週は「タロットカード」占い
3・遂に決定!========「ペルーツアー 2009」募集開始
4・TEN’ッショップ=====「天の珈琲」ようやく入荷しました
5・おすすめイベント=「巨石と聖地と私」須田郡司スライド&トーク
6・連載小説==================「雨弓のとき」61
7・編集後記===================「ひとりごと」
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【1】◆◇コラム・風の文様 ◆◇
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□『愉快なことは命の源』
私は、この一週間で映画「マンマ・ミアー!」を2回観た。
立て続けに、同じ映画を観に劇場へ足を運んだのは久しぶりだ。
それほどまでに、この映画は文句なしに楽しい作品なのだ。劇場は満席。
出来ることなら、2回とも最後には踊り出したい気分になったのだが、さ
すがに、それは他の観客の迷惑になる。だから、リズムを足で刻む程度
で我慢した。が、あのスクリーンの中に私も入りた〜い、と本気で思っ
ていた。
上映が終わった後の観客の顔がまたいい。みんな満面の笑顔。笑顔。笑
顔。世の中は不況風が吹きあれていて、ニュースも相変わらず暗いもの
ばかり。しかし、というべきか。だから、というべきか。
最高にハッピーな気持ちになれるものを、世の中が求めているのだ。
内側から込上げてくる、心から楽しい愉快な気持ち。
これこそが、もしかすると生きていく力に繋がっているのではないだろ
うかと、最近思っている。
友達や家族と食卓を囲み、愉快な会話をして、楽しく笑う。
こんな当り前の日常が、もしかすると当り前ではなくなっているように
も思える。
一番小さな社会集団である家族の中で、心を開けなければ、友達に心を
開くことはかなり難しいことだろう。
核家族といわれて久しい。小さな社会集団の中で、夫と妻が上手にコミ
ュニケーションが取れなければ、そこに生まれた子どもも孤独になって
いくのは必至だろう。孤独を抱えた子どもにどう接していいのかわから
ない親は、更に距離を作ってしまい…家族全員が孤独な状態に陥る。
そんな家族が今の日本にどれほど多いことだろう。
そんな家族の中では皆で食卓を囲み、愉快な会話で楽しく笑う、なんて
いうものは夢のまた夢かもしれない。
もしも、そんな孤独感を抱えている人がこのメルマガを読んでいたとし
たら明日にでも「マンマ・ミーア!」を観に行って欲しい。
底抜けに笑って、最後には何だってアリだ!生きているって楽しいぞ〜
!と思うに違いない。
こんなに宣伝書いているのだから、東宝東和から「マンマ・ミーア!」
の映画鑑賞券送が送られてこないものだろうか。
そうしたら、今度は後ろの壁際に座って、最後は踊り出すのにな!
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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
今週は[タロットカード]で運勢を占ってみました。
2009年2月7日(土)〜2月13日(金)あなたの運勢
〈1月生まれ〉
上辺だけの人間関係になってはいませんか。もっとあなた自身がオープ
ンになって、自信をもって人と接して下さい。相手の態度も変わってく
るはずですよ。
〈2月生まれ〉
現実離れした空想で夢を見てはいませんか。あなたの未来は、地道にこ
つこつと積み上げてきたものの先に繋がっていますよ。
〈3月生まれ〉
感動の心が無くなりかけてはいませんか。何事も理屈っぽく考えず、素
直な感性で受け止めてみて下さい。
〈4月生まれ〉
事を急ぎすぎて、早とちりをしてしまうかもしれません。ぬか喜びにな
らないよう、きっちりと仕事をこなしていってね。
〈5月生まれ〉
あなた自身の行動を省みず、他人の批判ばかりしていませんか。他人の
中に答えがあるのではなく、自分の中に答えがあることを忘れないでね。
〈6月生まれ〉
いままでずっと頑張ってきたことが、形となって現れてきそうです。目
標達成まで後少し。力を抜かず、頑張ってね。
〈7月生まれ〉
いままで動きすぎて少し休息の時間が必要かもしれません。今週あなた
に必要な事は、無理をしないということです。
〈8月生まれ〉
今の状況が心地よすぎて、次の変化を拒否してはいませんか。面倒臭が
らず、動くことを忘れないでね。
〈9月生まれ〉
恋愛運がとてもいい一週間です。気持ちを伝えたい相手には、思い切っ
てしっかり伝えてみましょう。またパートナーのいる人は幸せな時間が
過ごせそうですよ。
〈10月生まれ〉
何事も柔軟に動ける一週間となりそうです。また、自然がある場所や、
田舎の風景が新たなあなたの縁となるかもしれません。今週は動いてみ
てね。
〈11月生まれ〉
人と意見が対立したり、すれ違うことが多くなるかもしれません。でも、
今までの関係からの改善なので、逃げずに向き合ってみてね。
〈12月生まれ〉
何をやっても満足することなく、あれこれ違う物に手を出してしまいそ
う。今週は新たなことを始めるよりも今までのことを振り返ってみてね。
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【3】◆◇遂に決定!◆◇
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TEN'sトラベルメンバーの為の旅企画
●天と大地に感謝する旅 プレミアム●
『神秘の国・ペルーツアー 2009』
天空の遺跡・マチュピチュと人類の謎・ナスカの地上絵
そしてチチカカ湖に住む人々を訪ねる旅
10日間
2009年 5月1日(金)〜5月10日(日)
GW休日を最大限に利用した日程
(なんと10日間のうち土日祝日7日 平日3日です!)
418、000円(税込)
(全朝夕食・現地日本語ガイドつき ホテルは三ツ星クラス
チチカカ湖では先住民の方のおうちに泊まります)
募集定員 15名(定員になり次第締め切ります)
最低施行人員8名
詳しい日程やお申し込みはどは
http://www.office-ten.net/pelu/2009/top.htm
天空の遺跡・マチュピチュ…
不思議な地上絵・ナスカ…
インカ誕生の地・チチカカ湖…
南米ペルーは神秘と世界遺産と文化の宝庫。
でも、地球の反対側にある、遥か遠いその場所には
誰もが気軽に行けるものではありません。
でも、一生に一度は、行ってみたい。
そんな憧れを持つ人は多いはずです。
ありきたりな、団体観光旅行でもなく
不必要なものが多い、高級旅行でもなく
戸惑いが多そうな、個人旅行でもなく
急ぎ足の余裕のない旅でもない。
快適さも見どころも押さえながら
その土地の人としっかり触れ合う時間もある
贅沢なペルーの旅。
時間をかけて練りに練って…
昨年とは全く違う流れの
新たなペルーへの旅プランが、出来上がりました。
生涯に一度はペルー旅行をしたいとお考えなら
思い切って、今、行ってみませんか?
きっと、一生ものの宝になることでしょう。
詳しい行程は http://www.office-ten.net/pelu/2009/top.htm
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【4】◆◇TEN’sショップ◆◇
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大変長らくお待たせしました〜!
ようやく…ようやく…ボリビアから、
あの美味しい珈琲豆が到着しました!
《天の珈琲》
オーガニックボリビア
南米ボリビアの霧の多い高山の森の中で
真っ赤な完熟に育った実だけを
一粒一粒、丁寧に手で摘んで、
天日乾燥させた有機栽培豆。
その生豆を珈琲工場&百屋さんが、
少量ずつじっくり直火焙煎で仕上げています。
芳醇な香りとコク、そしてアーモンドのような
微かな甘みが特徴のTENお薦めの珈琲です。
名 称:オーガニック・ボリビア
原材料:有機栽培ボリビア豆100%
生産地:ボリビア
オーガニック認証:IMO(有機JAS)
焙 煎:「珈琲工場&百屋」
容 量:150g(中挽き・豆)
販売者:オフィスTEN
価 格: 780円(税込)
送 料:1袋 250円 2袋〜5袋 500円 6袋以上送料無料
詳しくは
http://www.office-ten.net/shop/coffee.htm
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【5】◆◇おすすめイベント◆◇
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世界石巡礼・地球一周出発記念
スライド&トークショー
「巨石と聖地と私」
〜地球の記憶が語りかけていること〜
スライドとお話: 須田郡司(写真家)
対談: 須田郡司×天川 彩
テーマ「巨石信仰と祈り」
日 時: 2009年3月15日(日)14:00〜
会 場: 台東区民会館(浅草寺より徒歩2分 二大門前)
料 金 前売り2000円 当日2500円
定 員 90名
お申込み http://www.office-ten.net/stone/top.htm
この惑星の歴史を物言わず、ただ静かに見守ってきた巨石たち。
太古の人々は、その巨石の中に神を感じ、祀り、祈ってきました。
そんな巨石の神々しさに惹かれ続け、石の文化伝承者とも
なっているのが写真家の須田郡司さんです。
沖縄からチベット、アイルランド、アジア、アフリカ、南米など
各地の聖地を遍歴。2003年からは3年間かけて日本石巡礼を行
い、日本各地に残る、古代の人々の巨石信仰や文化の研究も重ね
てきました。
今年4月、いよいよ一年かけて地球一周の世界石巡礼に出発する
須田さんに、今まで撮影されてこられた数々の巨石写真のスライ
ド紹介と共に、巨石と聖地の関わり、そしてこれから巡られる
旅への思いなど、たっぷりと語っていただこうと思っています。
後半は、「巨石信仰と祈り」と題しての対談も予定しています。
この星の不思議、石と人の関わりなど、普段、なかなか聞くこと
のできない、ディープエコロジーなイベントに、是非、皆様お誘
いあわせの上、お越しください。
<須田郡司…プロフィール>
写真家。
1962年群馬県沼田市生れ。琉球大学卒業。
雑誌カメラマンを経て独立。国内はもとより世界各地の聖地を
撮影する中で特に石文化や・巨石信仰に魅せられ、石の写真家
として国内外で作品を発表。
2003年〜2006年3年間かけて日本石巡礼と題して、日本各地に
点在する巨石を撮影し、地域の人々との交流の中で、各地に残
る巨石文化・巨石信仰を取材。
日本各地で写真展や石文化を伝えると共に、新聞、雑誌、TV
など多くのメディアでも取り上げられる。
「地球の記憶を記録する」という壮大なテーマのもと、
2009年4月より一年間かけて、世界石巡礼に出発。
2009年元旦 毎日jp(毎日新聞社)
http://mainichi.jp/select/wadai/graph/stoneworld/
著書:
フォトエッセイ集『VOICE OF STONE〜聖なる石に出会う旅』
(新紀元社1999)
写真集『日本の巨石〜イワクラの世界』(星雲社、2008)
加藤碵一・須田郡司著『日本石紀行』(みみずく舎、2008)
フォトエッセイ集『日本石巡礼』(日本経済新聞出版社、2008)
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【6】◆◇◆◇
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<今までのあらすじ>
両親の不仲が原因で自分は不幸だと思い続けてきた祥子。しかし大学2
年の秋アルバイト先で知り合ったアパレルメーカー勤務の良一と出会っ
たことで、両親との関係も少しずつ変化する。父が病気で他界した後は、
母親、敏子との関係も修復されていく。娘、真由子の妊娠を機に大学を
中退し、良一と結婚した祥子は、些細なことに心揺れながらも、それな
りに穏やかに暮していた。しかし、仕事が忙しくなっていく夫。就職が
決まっていく親友。慣れない子育て。少しずつ孤独感が募っていたとこ
ろに、夫の不倫疑惑が…。
『雨弓のとき』 (61)
天川 彩
祥子は、良一と顔を合わせたくなかった。
明け方、リビングのソファーから抜け出すと、マンションの扉を静かに
開いて外に出た。外は薄っすらと茜色に染まり始めていた。
朝の冷気が一気に祥子の体にまとわりつく。ブルッと身震いがしたが、
寝室のクローゼットの中にあるジャケットを取りに行く気になれず、シ
ャツの襟を立ててカーディガンのボタンを上まで閉めた。
エスカレーターを降りて、外に出ようとした時、新聞配達の青年が入れ
違いに入ってきた。「おはようございます」と爽やかな声で挨拶をする
青年に、祥子は挨拶を返すこともできず、目を伏せた。
祥子は自分の中に淀んだ感情があることに気が付いていた。
行きなれた、根津神社に行こうかと思ったが、こんな気持ちで神様の前
に立つのも気が引ける。しばらく考えた末、上野公園に向って歩き出し
た。
祥子はしばらく公園のベンチで時間を潰していた。
ジョギングをする夫婦や太極拳をしているグループ。そしてラジオ体操。
健康的としかいいようのない「朝」がそこにはあった。
祥子は自分の存在と、この公園の朝がまるで別世界のように感じていた。
ぼんやりとしながら腕時計を見ると、七時を少し過ぎていた。
良一が、そろそろ出勤する時間だ。
ー幼い真由子の為に、戻らなければ…。私は母親だしー
そう思った途端、祥子は急に胸が苦しくなり、呼吸がうまく出来なくな
ってしまった。息がだんだん浅くなる。と、その時、犬を散歩させてい
た老婦人が「大丈夫?」といいながらベンチの前にやって来た。
そして、祥子の背中をゆっくり何度もさすり始めた。
祥子は、少しずつ呼吸の感覚が戻ってきた。そして最後に大きく深呼吸
をすると、体の中の血液がサーッと戻ってきたように感じた。
「ありがとうございます。見ず知らずの私に…」
「あら、そんなこと当り前だもの。苦しそうだったし。それより呼吸戻
ってよかった」
そういうと、その老婦人は、犬を連れて再び歩き出した。
祥子は、当り前といったその老婦人の言葉を幾度も自分の胸の内で繰り
返していた。
ー私は自分のことで精一杯。他の、増してや見ず知らずの人になんか、
時間を割こうとも思わなかった。いや。どう接していいのかわからない
のだ。そんな自分が、真由子の母親であっていいのだろうか。でも、今
はとにかく家に帰って、真由子の面倒をみなきゃー
祥子が家に戻ると、出勤時間が過ぎているはずの良一が、まだ家の中に
残っていた。
「あれ…?会社は?」
祥子がとぼけた声で聞いた。良一はそんな祥子の言動も態度も全て気に
入らなかった。
「会社は?じゃないだろ!何処行っていたんだよ、真由子置いて!」
珍しく良一が怒鳴った。祥子は少し驚いたが、まだ動じていなかった。
「何処って、ブラブラ…」
「ブラブラってな、お前!俺は夕べ言っただろ。今日は大事な会議があ
るからって!なのに、こんなに小さな真由子置いて、俺まで出て行くわ
けに行かないだろ。今日のプレゼン俺、出れなかったじゃないか!」
「ふ〜ん。ト・モ・ミさんと夜な夜な、資料を作っていたんだ。だから
ハートマークまで付いたメールが来るんだ」
「何言ってんだ?お前!」
「携帯…」
「え?」
「携帯にハートマーク。あれ何?」
祥子も遂に、自分の疑問を口にした。
「携帯って…。またお前誤解していると思うけど、本当に三浦とは何も
関係ないから。そんなことより…いくら夫婦といえども、携帯見るなん
て、やっちゃいけないことだろう」
「中身なんか読んでいない。タイトル表示だけしか見ていない。けど…
やっぱり怪しいよ」
「祥子。もういい加減にしてくれよ!ここのところずっと、思っていた
ことなんだけど、最近の祥子、おかしいよ」
「おかしなのは、良一さんよ!もう…こんな生活イヤ!!」
《パシン!》
突然、祥子の左頬に熱い衝撃が走った。次の瞬間、祥子は我慢していた
悔し涙が溢れた。
「ごめん。殴ったりして。でも、祥子、冷静になれよ。三浦とは本当に
何も無いし。そんなことより、祥子は真由子の母親なんだから、もっと
強くなれよ」
祥子は、その言葉に何も答えなかった。
「それじゃ、俺会社に行くから。あ、それから、さっき越谷のお義母さ
んに電話して、来てくれるように頼んであるから」
「えっ?お母さんて?」
「だって、祥子は家出しちゃうし。どうしようかと思ってさ」
それから一時間ほどして、母親の敏子がやって来た。
つづく…
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【7】◆◇編集後記◆◇
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急に用事が出来て、来週月曜日から水曜日まで、沖縄の久高島まで行く
ことにしました。随分行っていないなぁ…と思っていたら、島の神様か
ら「おいで」と言われたのか…あれよという間に全てが整いました。
そんな訳で行ってきます。
それから、ペルー在住の友人、下野さんが撮影に関わったTV番組が来
週立て続けにあるそうですよ♪
2月10日(火)NHK 22時〜プロフェッショナル 仕事の流儀
ロマンに生きてもいいじゃないか」〜考古学者・杉山三郎〜
2月11日(水)TBS 22:54〜「風街みなと」絵描き編
2月18日(水)TBS 22:54〜「風街みなと」葦舟漁師編
私はちょうど久高にいるので…録画して観たいと思っています。
aya