2009/01/09━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ☆★☆ TEN's magazine 第351号  ☆★☆ 
  
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こんにちは、天川 彩です。

急にここのところ冷え込んできましたね。皆さん、風邪などひいてい
ませんか?
私は北国生まれなので、冬、寒くなるとホッとします。夫は寒がりな
ので「寒いとホッとする感覚って、わからない」といつもいうのです
が、冬の寒さは、体の芯が凛とするような…そんな清々しさを感じる
んですよね。

さて、今年最初のTENのお客様として、石の写真家の須田郡司さん
が、料理研究家である奥様、ひとみさんと共に事務所にやって来られ
ました。

須田さんは十年来の友人であり、尊敬すべき写真家でもあるので、今
まで幾度かメルマガでご紹介したりもしましたが、今年の4月から一
年かけて、奥様のひとみさんと共に世界中を巡り「地球の記憶を記録
する旅」に出るそうです。須田さんが世界中の巨石の写真撮影をされ
ている間、ひとみさんは、世界の食文化の記録を収録してくるようで
本当に楽しみです。

そんなお二人がやってきた理由というのがTENの主催で「地球の記
憶を記録する旅」の世界一周出発記念イベントを行って欲しいという
相談でした。

そもそも、須田さんと知り合ったきっかけは、「神戸からの祈り」と
いう98年の平和イベントでしたが、私自身もかなりの巨石好き、と
いうことで意気投合。

神戸在住の頃には、私のとっておきの六甲山の巨石群や巨石信仰の残
る神社に案内したこともあり、反対に、阿蘇の巨石群の場所や、地元
の研究家の方を須田さんから紹介してもらったこともあります。

また、数年前、日本一周の石巡礼の旅の時に出会われた奥様のひとみ
さんは、須田さんに輪をかけて素敵な方で、お二人が、これから幾多
の苦難を乗り越えて、世界一周「地球の記憶を記録する旅」に出ると
いうのですから、是非応援したいと思いました。

そんな訳で、3月に新たなイベントが決定しました。現在、急ピッチ
で具体的な内容づくりが進んでいます。世界一周出発記念イベントだ
なんて、勢いがあっていい感じです♪

多分、来週には詳細が決定すると思います。どうぞ楽しみにお待ちく
ださいね。

また、アラスカツアーは、まだ少し調整が必要です。こちらも、もう
しばらくお待ちくださ〜い。

そんな訳で、須田さんのことを、私が初めてご紹介したのは、現在、
HPにアップしている連載『たまたま』という文章の冒頭文でした。
『たまたま』は、たまたま十年前に知り合うことになった、アラス
カのクリンギット族のボブサムや、アイヌのアシリレラさん、ほか
私の人生が大きく変るきっかけとなった友人知人との物語を書いて
いるものです。

今日は、ずっと止まったままになっていた連載の続き『たまたま』
12を、コラム・風の文様の枠に書きます。

できれば、その前に、冒頭からの物語を読んでもらえると嬉しいで
す。 http://www.office-ten.net/rensai/f-tamatama.htm


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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム風の文様==============「たまたま」12
2・TEN占い=========今週は「メディスンカード」占い
3・明日です♪======「天々福々」七福神巡り&TEN新年会
4・TENの旅===========「大人のお年玉ツアー・富士」
5・連載小説===============「雨弓のとき」(59)
6・編集後記===================「ひとりごと」
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【1】◆◇コラム・風の文様 ◆◇
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□『たまたま』12

私は、自分を空っぽにして、導かれるかのごとく直感的に動いた。
とにかく準備期間が二ヶ月も無い。あれこれ迷っている時間は無いのだ。

ワタリガラスの神話をボブが語る場として、既に、熊野の聖域中の聖域
大斎原は決まっていた。
大斎原は、かつて熊野本宮大社のお社があった地で、平安の頃より明治
時代まで、そこを目的地として日本人は巡礼の旅をしていた場所だ。
宮司様と相談の結果、この神事はできるだけ神聖なものとして、日時な
どは一切公開せず行うことになったが、熊野本宮大社の宮司様が、全面
協力してくださり、心配事は何一つなく順調に準備が進んだ。

しかし、ボブの渡航費や滞在費、移動費など捻出することを考えると、
どうしても、公開イベントもしなければならない。それも、東京のど真
ん中で、空と通じている場所で行う必要性がある、ということだけは、
直感的にわかっていた。ただ、2000年にボブが来日した後、閉じた
ものを開くには、単にイベントとなってはいけない。

会場は日比谷の野外音楽堂を選んだのだが、そこからがしばらく進まな
かった。そんなある日、天河神社の宮司さんの顔がふと浮かんだ。ボブ
は、天河神社の宮司様を兄のように信頼し慕っているのだ。

「そうだ!天河の宮司様にもゲストとして来てもらおう!」

そう思った途端、何の迷いもなく天河神社に電話をかけて、宮司さんに、
ことのあらましを話して懇願した。宮司様は快く承諾してくださった。

それから数日後、夫との結婚記念日に、二人でレストランで食事をして
いた時、私の携帯が鳴った。私は席を立ち、その電話を受けた。
天河の宮司様からだった。

「彩さん、その日ね、私がゲストとして行くだけではなく、きちんと神
様に、東京の真ん中にご降臨いただいて、正式なご神事を執り行うこと
にしましたよ。神官さんや巫女様など、日比谷に行く手はずにしたので
少し準備してもらうこともあるけれど。とにかく天河神社として行くこ
とになりましたよ」

私は、あまりのことに呆然とし、「ありがとうございます」と言うのが
精一杯だった。

電話を切って席に戻ると、夫が「誰からだったの?」と普通に聞いてき
た。私がガクガクしながら、宮司様から伝えられた言葉をいうと、
「それは凄いことじゃない。それほど宮司様に東京のイベントを大切に
考えてもらえるのは、幸せなことだよ」という。

確かにそうなのだが、神様がやって来られる…ということは、あまりに
もスケールが大きく、私はどう受け止めていいのかわからなくなり、固
まっていた。

すると、夫が「大丈夫。心配しなくったって、いつも君が言っているよ
うに、全て神様のはかりごとなんだろ。ならば、神様にお任せしておけ
よ。目の前のお料理冷めちゃうよ」と笑いながら言ってくれたことで、
気が楽になった。

その日、改めてこれから先も神様に委ねてお任せしておこうと決めた。

そして、大勢の人手も必要になるとわかり、急遽メルマガを通して協力
してくれる人々を募り、星野道夫さんの奥様、直子さんにも両会場での
ご神事に参列してくださるよう頼んだ。

あれこれ準備をすすめているうちに、あっという間に6月になり、ボブ
サムが4年ぶりに日本にやってきた。

ボブが真っ先に希望したのは、星野道夫さんのお墓参りだった。

お墓参りの後、一緒に星野家にお邪魔すると、道夫さんの一人息子、翔
馬君が、ボブが訪ねて来てくれたことを大喜びしていた。ボブとは小さ
な時からとても仲良しで、ボブも翔馬君のことが可愛くて仕方がない様
子だった。
その日、道夫さんのお父様が直子さんに「本当ならば、熊野のご神事は
私も行きたいところだけれど、体がなかなかいうこときかないから。熊
野のご神事は、道夫がいたら参列するべきはずの、ワタリガラスとヤタ
ガラスの神事なのだから、星野家の代表として行ってきなさい」
と話されていたことが、とても印象的で、私も気が引き締まる思いだっ
た。

それから数日間、北海道まで移動して、アイヌのレラさんのところに滞
在した。

天河の宮司様を兄のように慕うなら、姉のように慕っているのが、レラ
さんだった。私はこの時の来日で、ボブが日本で会いたいと思っている
人たちに、会わせてあげたかったのだ。

実は、ボブの来日話よりも前に、6月のこの時期には、レラさんのとこ
ろに、アイヌ・エコ体感ツアーで行くことが決まっていたので、ツアー
参加者と一緒というかたちになった。

羽田空港の集合場所にボブサムの姿を見たツアー参加者の人々は、はじ
めはかなり驚いた様子だった。が、すぐに時間と共に馴染んでいった。
ツアー中、毎晩アイヌ刺繍をしたのだが、ボブはかなり上手で刺繍好き
なのだということを初めて知った。

東京に一旦戻り、準備を整えて、私たちは車で西へ向った。

運転は、天河と熊野の映像を撮影するスタッフとして、その年の春から
行動を共にしていたケンちゃんが引き受けてくれた。

奈良の天河に着くとまずは、真っ先に神様へのご報告と、成功を祈願し
ての正式参拝となった。そして宮司様と日比谷でのご神事の打合せを終
えた翌日、いよいよ、熊野へ向った。

熊野に着くと、音楽家の長屋和哉さんが先に到着していた。

長屋さんと会ったのは、この時が初めてだった。しかし、メールや電話
では幾度も挨拶していたので、初めて会った気がしなかった。
長屋さんを紹介してくれたのは、石の写真家の須田郡司さんだった。
熊野の映像制作の仕事が入ったとき、須田さんに、熊野に長期で泊まれ
る適当な宿は知らないか聞いた際、「長屋さんならよく熊野で音楽制作
をしているから知っていると思うよ」と連絡先を教えてもらったのが最
初だった。

長屋さんとメールや電話で話をするうちに、とても澄んだ魂の人だとい
うことは感じていた。長屋さんが奏でる音霊と共にボブが語ると、きっ
と神々が喜ぶだろうと直感的に思った。

2006年6月16日夕刻。
この日、熊野本宮大社の旧社地、大斎原の祠の前に、ワタリガラスが魂
の炎を持ってきたような、篝火が灯された。

熊野本宮大社の宮司様と数名の神官さま、そして星野直子さん、長屋さ
んスタッフのキョウちゃん、私とボブ・サムが並べられたコショに座り、
祝詞に続き、玉串をあげてご神事が始まった。

大斎原には、神々に呼ばれたのであろう。風に導かれて、たまたまやっ
てきた十数名が芝生の上に静かに腰掛けている。

ボブは、天と大地に向って両手を広げ、祠の横にある大きな木の前で、
長屋さんの音霊と共に、クリンギット語でワタリガラスの神話を語りは
じめた。

目に見えぬ沢山の存在が、確かに一緒にここで耳を傾けていると、私は
肌で感じていた。
                       
  

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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
                          
今週は[メディスンカード]で運勢を占ってみました。

2009年1月10日(土)〜1月16日(金)あなたの運勢

〈1月生まれ〉
あなたの感覚を、信頼し直してみましょう。今週はできるだけ、人に意
見を求めず、自分の直感にしたがってみてね。

〈2月生まれ〉
物事が順調に進んでいないことの言い訳ばかりをしていませんか。今週
は言い訳をするのはやめて、あるがままのあなたを認めましょう。きっ
と楽になりますよ。

〈3月生まれ〉
なにをするにも無力になってはいませんか。今週あなたに必要なキーワ
ードは、誇りと自信です。

〈4月生まれ〉
問題を解決しようとせず、誰かに愚痴を聞いてもらうことで気晴らしを
してはいませんか。今こそ、根本的な問題の解決を自らしてみてね。

〈5月生まれ〉
直観力が優れている週です。今週は流れに逆らわず、そのまま進んでく
ださいね。

〈6月生まれ〉
誰かに気がついてもらいたいと思いながら、前に出る勇気が無く、心の
中で悶々とはしていませんか。今週は勇気をだして、自ら前に進んでみ
てね。状況が変わるはずですよ。

〈7月生まれ〉
体が疲れているかもしれません。時間ができたら休むのではなく、今週
は時間を見つけて休んでください。

〈8月生まれ〉
世の為、人の為に動くことに喜びを感じる週となりそうです。またそう
いう仲間と出会う幸せがあるかもしれません。今週は惜しみなく力を出
してくださいね。

〈9月生まれ〉
今週はあなた自身の人生の意味や平和ということについて考える一週間
となりそうです。謙虚に生かされている意味をしっかり受け取ってくだ
さいね。

〈10月生まれ〉
どんなことも良し悪しをつけて考えようとはしていませんか。今週は、
もっと様々な考え方があると、柔軟になってみてください。人間関係が
より良くなるはずですよ。

〈11月生まれ〉
先々のことや、大きなことにばかり意識が向き、目の前の小さなことを
忘れてはいませんか。今週は、一歩一歩着実に歩むことを忘れない
でね。

〈12月生まれ〉
今までのアイディアを実行に移す週です。今まで以上にエネルギーをそ
そいでみてください。きっとよい結果に繋がるはずですよ。
  
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【3】◆◇ 明日です! ◆◇
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     思いっきりそぞろ歩きを楽しみながら
       開運招福な一日を過ごしてください♪

    
     ■お江戸下町・谷中七福神めぐり&新年会
  
『天々福々の集い』*七福神の詳しい御利益は、HPをご覧ください。

◇日 時:2009年1月10日(土) 集合13時00分
◇集 合:上野駅 公園改札出口(「天々福々」の看板が目印) 
◇参加費:2000円(下町ガイド+下町おやつ付き)
     新年会のおばんざい費は割り勘でお願いします
◇申込み:http://www.office-ten.net/tentenfukufuku/top.htm 

          当日参加ご希望の方は
   明日1月10日の正午までにメールでお申し込みください。



正月に七福神を参拝すると7つの災難が除かれ,7つの幸福を授かると
いわれています。 

下町情緒あふれる寺町をそぞろ歩きしながら、七福神のありがたいご利
益を共に授かりに参りましょう。ここはオフィスTENの地元。私たち
が地元の魅力をたっぷりとご案内します。七福神全てを巡った後は下町
人情漂う「谷中銀座」へ移動して下町の人気おばんざいを買い込み、い
ざ新年会へと突入!初めて参加される方も、おなじみの方も、新しい年
を大いに祝って盛り上がりましょう!
         


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【4】◆◇日本を堪能する旅◆◇
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          ●大人のお年玉ツアー●
      【 新春の富士山と極旨のお料理を楽しむ旅 】

   〜朝焼けに映る紅富士と夕暮れに輝くダイヤモンド富士〜
               そして
          割烹の宿で過ごす2日間
       
    
      2009年 1月24日(土)〜1月25日(日)

             23、800円 
             (東京・発着)
       定員12名 最低施行人員 8名

  詳細・お申し込みは http://www.office-ten.net/j/fuku.htm

           日本一の富士の山。
      できることなら年の初めに手を合わせ
   新しい年が良い年になるよう願掛けをしたいもの。
         それも、せっかくならば
          冬の日の朝焼けが
     雪積もる富士に染まり、紅富士が現れる時…
        富士山頂に夕日が重なり
   眩いばかりに光り輝く、ダイヤモンド富士になった時…
        行ってみたいと思いませんか?
    
        年の初めにご案内する旅は、
     そんなありがたいほどに美しい富士山を愛で
        TEN一押しの割烹の宿で
    心ゆくまで美味しい食事を味わっていただく旅です。
      勿論、富士山を真正面に見ながらの温泉も
         存分に堪能してください

    あなた自身へ幸運を運んでくれそうなお年玉の旅、
          ご一緒にいかがですか?


  <ツアー代金に含まれるもの>
  東京発着長距離交通費 宿泊代 割烹料理夕朝食代
  紅富士温泉入湯料 ツアーガイド代

  <ツアー代金に含まれないもの>
  昼食代 近距離移動バス(タクシー)代
 
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【5】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>

両親の不仲が原因で自分は不幸だと思い続けてきた祥子。しかし大学2年
の秋、アルバイト先で知り合ったアパレルメーカー勤務の良一と出会っ
たことで、両親との関係も少しずつ変化する。父が病気で他界した後は、
母親、敏子との関係も修復されていく。娘、真由子の妊娠を機に大学を
中退し、良一と結婚した祥子は、些細なことに心揺れながらも、それな
りに穏やかに暮していた。そんなある土曜日の朝、一本の電話が入る。
それは、アパレル展示会の時のアルバイト仲間、三浦朋美だった。朋美
の意味ありげな口調に憤慨した祥子は、良一に真由子の世話を押し付け
て家を飛び出した。追いかけてきた良一の姿を見て、信じることにした
祥子だった…


『雨弓のとき』 (59)
                天川 彩


育児に奮闘していると、毎日はあっという間に流れていくようだったが
祥子の孤独感は、日に日に増していた。

真由子が活発に動き始めるようになってから、お天気の良い日には、近
所の公園に連れていくようにしていた。が、同じぐらいの幼児を連れた
ママたちの輪の中に、どうしても入れないのだ。一言でいえば、居心地
が悪い。既に出来上がっているような連帯感は、自分を拒絶しているよ
うに感じていた。

少し離れた公園に足を伸ばしてみても、結局は同じだった。

真由子の方は、何処に連れて行っても、すぐに誰とでも仲良くできてい
るというのに、祥子は話しかけられても、会話に上手く返答できない。
「お嬢ちゃん、何歳?」まではいいのだが「ママは?」と聞かれ、自分
の年齢を言うと必ず「随分若いママなのね」と判で押したように返って
くる。そして、会話が止まり…というのが、お決まりのパターンだった。

今の出産平均年齢が何歳なのか、祥子は知りもしないが、どうみても、
自分よりひと回り近く年上に思えるママたちばかりで、自分が酷く幼く
思えた。

数ヵ月後、大学時代の親友、明日香から封書の手紙が届いた。

就職活動で忙しくなってから、ほとんど電話やメールも来なくなってい
たが、祥子も真由子の世話に明け暮れる毎日で、自分から連絡を取るこ
とも忘れていた。

明日香から、メールでもなく電話でもなく、封書が届いたことに、祥子
は驚いた。開くと、綺麗な便箋に几帳面な丁寧な文字で、就職が決まっ
た知らせが綴られていた。そして、祥子と互いにマスコミ就職を目指し
励ましあっていた日々を懐かしみ、最後に祥子が子育てを選んだことを
尊敬していると追記してあった。

明日香が精一杯の誠意で、自分に就職したことを報告してくれたことは
素直に嬉しかった。しかし、明日香との間にも、いいようのない距離を
感じ、益々一人取り残されていくような苦い感情が湧き上がっていた。

とても手紙を書く気にはなれず、正直な所電話で話すのも辛かったので
とりあえす携帯メールで「おめでとう」という文字だけを打って送信し
た。

ややしばらくして、少し長文で返信メールが返って来た。が、祥子は読
む気になれなれず、携帯を閉じた。

そこに、「ママ〜ちっこちた〜」とお昼寝から寝覚めた真由子がパンツ
を濡らしながら駆け寄ってきた。どうやらおねしょをしたらしい。
祥子は思わず、真由子の頬を叩いた。真由子は、驚いて火がついたよう
に泣いた。そして「ごめんなちゃい ごめんなちゃい」と謝る真由子を
見て、急に自分に悲しくなった。

祥子は、真由子を引き寄せ抱きしめ小さな頬を撫でた。

マズイ。私。本当に余裕が無い…。祥子は薄々、自分が育児ノイロー
ゼになっているのではないかと感じ始めていた。
 
                        つづく…

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【6】◆◇編集後記◆◇
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『たまたま』の続きを、何年かぶりに書いた。もう4年も前のことなのに

色鮮やかに覚えていることに、ちょっと驚いた。
それにしても、今日、改めて最初から読み返しながら、多くの友人知人
たちのことを思い出していた。
誰しも、たまたまご縁あった人たちと、関わりながら生きているんだよ
なぁ。。。縁ある人とは、時を隔てても続くんだよなぁ。。。なんて、
しみじみ思った。
                       aya