2008/08/08━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   ☆★☆   TEN's magazine 第330号   ☆★☆      

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こんにちは、天川 彩です。

先週は、石見銀山や出雲大社に行っておりましたが、今週は、またして
も奈良の天河神社におります。
天河太々神楽講の講元となり、旧暦の七夕祭お手伝いワーク「天の川に
祈る」で、皆様と共に、天河で過ごす旧暦七夕も、今年で8年目になり
ます。

今日は2008年8月8日。
世間では、北京オリンピック開幕で賑わっていますが、私にとってはも
っと大切で大きな意味のある日です。

この8並びの日。ちょうど10年前の8月8日は、私の運命を大きく変
えた「神戸からの祈り」という平和イベントが行われた日でした。

オフィスTENの10年の歴史の始まりは、そして天川 彩の始まりは
「神戸からの祈り」から、といっても過言ではありません。
ようやく、十年が過ぎたのだ…と実感しています。
天河神社も、目に見えないところで深くしっかりと繋がっていたお祭で
したが、あれから10年の月日が経った今日、私は七夕祭の後片付けで
天河神社におり…なんとも感慨深い気がします。

先日の家族旅行の最後の目的地は、広島の平和記念公園でしたが、天河
に行くと、いつも世の中の平和の為に、今、自分は何をするべきなのか
ということを真正面から向き合わされている気がします。

やはり、私は私としてできることを精一杯する、という答えしかありま
せん。

来週は、世間はお盆休みに入りますが、私は先週後半、夏休みを取った
ので、このお盆は集中して小説を書こうと思っています。

さて…
先週、メルマガ読者の皆様にお知らせいたしました来年の「皆既日食ツ
アー」ですが、有難いことに即日満員御礼となり、3日で倍以上の方々
からお申し込みがありました。そんなお申し込みメールの多くに、皆さ
んの熱い気持ちが書かれていて…、どうにかそのお気持ちにお応えした
いとの思いから、船をもう一艘出してもらえるよう交渉し、当初の予定
人数の倍の人数でツアーを決行することになりました。
現在は、キャンセル待ちを受け付けさせていただいております。来年の
ことですし、今のお申し込みでしたら十分に可能性はあると思いますヨ。
http://www.office-ten.net/20090722/top.htm

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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様==========「古き良きものを愛でる」
2・TEN占い===========今週は「タロットカード」占い
3・夏の集中講座=======「自分力講座」&「究極・恋愛講座」
4・日本を堪能する旅========「富士山頂までの登拝」募集中
5・天と大地に感謝する旅===「アメリカ先住民と母なる大地の旅」
6・連載小説===============『雨弓のとき』 (50)
7・編集後記=====================ひとりごと

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【1】◆◇コラム・風の文様◆◇
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 ■「古き良きものを愛でる」


昨年、世界遺産になったことで、一躍有名になった島根県の石見銀山。
そこに松葉登美さんという女性が暮している。

彼女は知る人ぞ知る、観光カリスマ大使。江戸時代の最盛期には、20万
人もの人々が暮らし、世界の銀の15%はこの石見銀山から採掘されたも
のらしいが、現在の人口はおよそ500名ほど。そんな小さなその街に、
年間何十万人もの人々を動員し、世界遺産にまで押し上げた陰の立役者
の一人といっても過言ではない人物だ。

そんな登美さんと知り合ったのは今から5年ほど前。今ほどの知名度で
はなかった石見銀山に、仕事の関係で知り合った知人に連れて行っても
らい出会ったのが最初だ。その後、折に触れTV番組登場のお知らせな
どを送ってくださったり、登美さんたちの会社の直営店が私の自宅のす
ぐ近くにオープンしたご縁で、東京でも幾度かお会いしてはいた。しか
し、石見銀山での訪問は、実に5年ぶり。それも今回は家族旅行の途中
という、全くのプライベートでの訪問だった。ふら〜っとお店に立ち寄
ってみると、スタッフの方に、登美さんが暮す築230年の古家へ案内さ
れた。

突然の訪問にも関わらず、登美さんは歓待してくださった。

石見銀山代官所地遺宅であるその家は、かつて誰も住めないほどの廃墟
となっていたようだ。それを、莫大な私財を投げ打って、修繕と改築を
繰り返し、10年ほどかかって人が住める家にまで戻したのだ。

実は、5年前に訪れた際にも、泊まらせていただいたことがある。その時
には、まだ登美さんは、その家では暮していなかったので、住宅という
空気感はなかった。が、今はしっかりその家の主となり、家と呼吸を合
わせて暮らしていることが肌で感じられた。

今回、子供たちを連れて行ったからなのか、家の復元の映像を見せてく
ださったり、隅々まで案内してくださったりとありがたい限りだった。
そして、そこにある、照明や椅子、テーブルもガラスも、物という物の
多くが、家と同様に、手間暇かけて甦らせた物であることを教えてくれ
た。
誰かが長く愛着を持って使っていた物が、愛情と技術いう新たな息吹に
より、再び使える物として、生活の中に溶け込んでいる。

私も家族も、そんな登美さんの暮らしぶりに感動した。

今はお金を出せば、どんな物でも簡単に購入できる時代だ。
まだ十分に使えるのに、すぐに飽きて捨てては、新たなものを購入する。
大切にしないから愛着も湧かないのかもしれないが、物を大切にしない
人は、いい物とは出会えないように思う。
縁というものは、人だけでなく、家にも物にも通じている気がする。家
や物を大切にしている登美さんは、家にも物にも縁がある人なのだと感
じた。

私たちは、今、取り戻していくべきものが沢山ある。

世界遺産になると、多くの人が新たな観光地として注目し訪れる。
世界遺産に指定された多くの地域の人々は、急に観光客目当ての商売を
始め出すのが常だ。世界遺産になったことで、ガッカリしてしまうこと
になった地域は、多々あるはずだ。
本来、世界遺産に登録されるということは、後世まで人類の宝として残
していくものと認定されるもので、決して観光誘致が目的ではない。

そういう意味においては、石見銀山は、世界遺産になっても、ほとんど
何も変わっていなかったことにホッとした。
昨年、石見銀山が世界遺産に登録されて、本当に多くの人が訪れている
ようだが地元の方の話によるよると「がっかりした」と言って帰ってい
く人が後を絶たないそうだ。
きっと、そんな人々は、派手な観光案内や観光土産、豪華なホテルや旅
館に泊まって、旅気分を満喫させてくれる場として期待して来たに違い
ない。

しかし、石見銀山にあるのは、静かな銀山の間部と呼ばれる坑道遺跡と、
かつて天領だった頃の街並みや、寺院が静かに残っているだけだ。

石見銀山がなぜ世界遺産になったのか。

それは、戦国時代から江戸時代という時代にありながら、世界の鉱山に
共通した『山を崩し、森林を伐採する』という特徴を持たず、採掘した
森には木を植え、山を切り崩さず、狭い坑道を掘り進んで採掘するとい
う、環境に配慮した遺跡だから、という理由からだ。

石見銀山は、昔から、良きものは取り壊さず残し守っていくという気質
を持った人たちが暮す場所柄なのかもしれない。

ありがたいことに、登美さんとのご縁で、TENの旅で石見銀山を訪れ
た際には、一般には公開されていない、その築230年の家に特別に泊め
てもらえることになった。

古き良きものを愛でる人たちと、いつかゆっくり石見銀山の街並みをゆ
っくり歩きたいと思っている。

   
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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
                          
今週は[タロットカード]で今週の運勢を占ってみました。

2008年8月9日(土)〜8月15日(金)あなたの運勢

〈1月生まれ〉
今週は何事にも積極的に動く週となりそうです。ただ、何かに熱中しす
ぎて大切なことを忘れないよう気をつけてね。

〈2月生まれ〉
何かに執着しすぎて、必要ではない物にこだわってはいませんか。今週
はよく見極めてみてください。

〈3月生まれ〉
損得勘定で物事を考えてはいませんか。また何かと疑い深くなってはい
ませんか。今週は素直さがキーワードですよ。

〈4月生まれ〉
必要以上に人の目を気にしてしまいそう。今週は自分に自信を持ってあ
なたの考えを優先させてね。

〈5月生まれ〉
好奇心いっぱいの一週間となりそうです。でも心の内側に反映して、様
々なこともおこってきそうです。できるだけプラス思考になってね。

〈6月生まれ〉
あなたが動いた分だけ、評価される一週間となりそうです。怠慢な心は
捨てた方がよさそうですよ。

〈7月生まれ〉
ぎりぎりの状態でバランスをとってはいませんか。今週は一度休憩をし
て、あなたのゆとりを取り戻すようにしてみてね。

〈8月生まれ〉
今週は懐かしい思い出と再会しそうです。子どもの頃のような素直さで
周りの人と接してみてください。

〈9月生まれ〉
今まで、結論を先延ばしにしていたことの答えを出すときかもしれませ
ん。物事の終わりは新たな始まりにもつながっています。怖がらず、次
のステップに向かってね。

〈10月生まれ〉
気持ちだけが焦って、物事が中途半端になってはいませんか。今週、あ
なたに必要なキーワードは忍耐力です。一つずつ片づけてね。

〈11月生まれ〉
今週は、あまり物事が前に進まないかもしれません。こんな時は思い切
って休憩のときに充てて、気分転換してみてね。

〈12月生まれ〉
やる気がわき起こる一週間です。どんな事にも積極的に取り組めそうな
ので、思い切り動いてみてね。


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【3】◆◇夏の講座「自分力UP講座」&「究極・恋愛講座」 ◆◇
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   ◇◆◇「自分力を高める」夏の1日集中講座 ◇◆◇
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 
     夏の間に一皮向けて、新たな自分に出会おう!

     この講座は、自分への信頼や自信を取り戻し
    「自分力」をしっかり高める為のカリキュラムを
     夏の1日、集中して行います。

      *平日と週末の日程をご用意しました*
         各日とも定員15名

日 程 1・ 2008年8月21日(木)
    2・ 2008年8月23日(土)

時 間 10:30〜16:30 (昼休憩 1時間あり)

会 場 葛飾シンフォニーヒルズ別館 (京成・青砥駅下車)
     お申し込みの方に詳しい地図をお送りいたします

受講料 10、500円 テキスト代含む

講座内容 Step1 自分を見る
     Step2 心の扉を開く
     Step3 自分の魅力を知る
     Step4 自分を輝かせる

詳細・お申込み http://www.office-ten.net/com-kouza/power-up.htm



この世に「あなた」として生まれた、たった一度の人生です。

ぜひ素敵なあなたに出会ってください。


http://www.office-ten.net/com-kouza/power-up.htm
******************************
*8月24日の「大人の為の究極・恋愛講座」
(受講料10、500円)も合わせて受講される方は、2講座で
15、000円という大変お得な割引価格でご参加いただけます。

******************************



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    ◇◆◇『大人のための 究極・恋愛講座』 ◇◆◇
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  

 運命の人と巡り逢う方法 パートナーと生涯恋愛する方法
          伝授いたします

日  程 2008年8月24日(日)
時  間 10:30〜16:30 (昼休憩 1時間あり)
会  場 葛飾シンフォニーヒルズ別館 (京成・青砥駅下車)
     お申し込みの方に詳しい地図をお送りいたします
受講料 10、500円 テキスト代含む

講座内容 Step1 恋の言の葉拾い
     Step2 パートナーシップについて
     Step3 理想の相手・理想の自分
     Step4 セルフプロモーション術

申し込み http://www.office-ten.net/com-kouza/love.htm


運命の人…。
どこを探せば、何をしたら
出逢えるえるのでしょうか。
あなたが、もし、
本気でその人を探していたとしたなら
その人も、本気であなたを探しているはず。

だけど、生涯を通して
互いに愛し慈しみあえる人に
真剣に出逢いたいのなら…
ちょっぴり自分改革も必要なのです。

出逢った時から、この世を去るまで
ずっと、人生を共にする
唯一無二のパートナー。

結婚しても、お父さんとお母さんになっても
おじいちゃんとおばあちゃんになっても
生涯、素敵な恋人同士で
あり続けてください。

素晴らしい恋愛は、
世の中の平和の糧になるのです。

http://www.office-ten.net/com-kouza/love.htm
******************************
*8月21日又は8月23日の「自分力を高める」夏の1日集中講座
(受講料10、500円)も合わせて受講される方は、2講座で
15、000円という大変お得な割引価格でご参加いただけます。

******************************


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【4】◆◇日本を堪能する旅◆◇
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           締め切り間近!


  今年の夏、日本一の富士山頂へ 一緒に登ってみませんか?

        夏┃の┃富┃士┃山┃登┃拝┃!┃
         ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ 
        〜吉田の火祭りと富士山頂への登拝〜 

    2008年8月26日(火)〜28日(木)
           2泊3日
  
       東京発着39、800円(税込)

  詳細は http://www.office-ten.net/j/fuji/tohai/2008top.htm


古来より霊峰として仰がれていた、富士山。
この夏、縁あって富士の御山頂まで登ることになりました。
ただし、一般的な富士登山のように
日本一の山を制するわけでも、
山頂でのご来光を目的とするものでも
自己との戦いの為でもありません。

霊峰・富士にいらっしゃる神々と自己とがしっかり向き合い、
心身共に清く元気になるための「富士登拝」です。

一歩一歩踏みしめ、要所要所でお参りをしながら
普通の富士登山のおよそ倍の時間をかけて
ゆっくり山頂を目指していきます。

せっかくの機会ですので、かつて昔の人々がしていたように、
白い行衣に金剛杖という出で立ちで向かいましょう。
金剛杖には、途中途中で、昔ながらの焼き印を押してもらいます。

富士を仰ぎ、富士に登り、富士を感じる。
きっと生涯の宝物となるであろう体験
一緒にいかがですか?


*登拝前日には、奇祭・吉田の火祭りや富士歴史民俗博物館へ参ります。

「TEN'Sトラベルメンバーのための旅企画」

行程や登拝についてなど、詳しくはHPをご覧ください。
とても綺麗なページですヨ。
http://www.office-ten.net/j/fuji/tohai/2008top.htm

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【5】◆◇天と大地に感謝する旅◆◇
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   平和の民・ホピ族の人々が暮らす大地は、
   荒涼とした砂漠の中に、突き出たメサと呼ばれる
   崖の上にあります。

   そこは、間違いなく地球上の数少ない聖地中の聖地。

   しかし、その神聖なる大地ははるか遠く…
   更には興味本位で行く場所でもありません。

   でも、今の地球の状態や荒れていく人々の心を
   そのまま見過ごせない、という思いの人を
   ホピの大地は呼んでいるかもしれません。

   タイミングと縁を感じる方、是非、ご一緒いたしましょう。

           
      ●天と大地に感謝する旅 スペシャル!●
 
     『アメリカ先住民の教えと母なる大地ツアー』
   〜平和の民・ホピ族の大地とナバホ族の聖地を巡る旅〜

    2008年9月21日(日)〜9月27日(土) 7日間
    
      ツアー代金 288、000円(税込み)
   <空港諸税は後日・別途お支払いとなります>
     
         募集人員  20名
         最低施行人員 8名
     
          
    詳細 http://www.office-ten.net/hopi/2008/9/t.htm

平和の民・ホピ族が守る大地メサ。
アメリカ国立公園の中でも
圧倒的なスケールを誇り
ホピ族の大切な聖地でもあるグランドキャニオン。
ナバホ族の人々の居留地でもある、
西部屈指の公園、モニュメントバレー。

壮大な大自然…
祈りの地に吹く風…
先住の民とのふれあい…

貴方が何ものにもとらわれずニュートラルな状態ならば
きっと魂の奥に深くしっかりと、大切なメッセージを
受け取ることができるでしょう。

そして、それらをしっかりキャッチした後は
真逆な先端の街、ロサンゼルスに移動して
映画の都、ハリウッドで最後の一日を過ごしてください。

太古からの風と、最先端の風。
世界の「今」を肌で受け取ってください。
 

前回・前々回の旅の感想
http://www.office-ten.net/hopi/repo.htm
http://www.office-ten.net/hopi/2008/repo.htm

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【6】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>
両親の不仲が原因で自分は不幸だと思い続けてきた祥子。しかしアルバ
イト先で知り合ったアパレルメーカー勤務の良一と付き合いだしてから
少しずつ考え方が変わってくる。大学卒業後は、マスコミ就職の希望を
持っていたが、妊娠していることがわかり、急遽良一と結婚することに。
娘の真由子を産んでから、幸せいっぱいの祥子だったのだが、良一が突
然、札幌へ長期出張に。楽しみにしていたクリスマスが迫り…。


『雨弓のとき』 (50)                天川 彩

札幌に行くことを決めた祥子だったが、真由子はまだ生後二ヶ月。首も
座っていない娘を飛行機に乗せてもいいものかと迷ったが、航空会社に
問い合わせると、心配はないとの返答で、祥子の胸は躍った。

出発まで一週間と迫ったある日、祥子は、初めて真由子を母の敏子に預
けて新宿のデパートまで出かけた。
週末の百貨店は、クリスマスのプレゼントを買いに来ている人々で、酷
く混みあっていた。
あれこれ迷った末に、北国札幌で冬を過ごす良一へ、帽子とマフラーを
選んだ。そして帰り際、数ヶ月ぶりに、千駄木の喫茶店に立ち寄った。

扉を開けると、いつものようにマスターが奥のカウンターでコーヒーを
ゆっくり淹れているところだった。運よく、お気に入りの席が空いてい
る。祥子は、迷わずその席まで行くと、椅子に深く腰掛けた。体の奥か
ら、ドッと開放感が湧き上がってくるような、そんな気がした。

「あれ、随分久しぶりだね。今日は旦那さんは?」
マスターが水を運んできながら、前と変わらぬ笑顔を向けてきた。
「札幌に長期出張していて」
「そうか。じゃ寂しいね」
「そうでもないかな」
「喧嘩でもしているの?」
「まさか。そうじゃなくて、来週、私も札幌に行くんです」
「へぇ。じゃ、クリスマスはロマンチックに札幌で二人仲良く、ホワイ
トクリスマス過ごすのかな」
「二人じゃなくて、娘も」
「えっ?娘って?あ、そうか。そういえば前に来てくれた時、ちょっと
お腹大きいのかなぁなんて思っていたんだけど、そうか。もうお母さん
になったんだ。今日は赤ちゃんは?」
「母に初めてお願いして」
「そうか。そんな日も必要だからね。で、注文何にする?」
「えっと…ホットミルクください」
「ホットミルクね。そういえば、去年だったよね。旦那さんがホットミ
ルクで舌を火傷しながらさ…」
「嫌だ、マスター。そんなこと覚えていたんですか?」
「なんつーか、いい光景だったな。そんな二人が、早くもパパとママだ
もんな」

しばらくして運ばれてきたホットミルクを一口飲んだら、途端に胸が張
ってきた。ふと真由子が起きて泣いているような気して落ち着かなくな
ってきた。祥子は火傷しないように注意しながらホットミルクを飲み干
すと、早々に店を出た。そして自分も母親になってきていると初めて実
感していた。

家に戻ると、案の定、真由子が泣いていた。母の敏子が哺乳瓶でミルク
を飲ませようとしていたが、なかなか飲まずぐずっているところだった。

「あ、よかった。真由子がずっと泣いていてどうしようかと思ったわ」
「ごめんね」
祥子は直に着替えて手を洗い、真由子を抱きかかえると、熱く張って
いた乳を真由子にふくませた。

次の日早朝、喉の痛みで祥子は目が覚めた。
何度かうがいをしてベッドに戻り、眠ったのだが、今度は咳で目が覚め
た。

昨日のデパートかな…。風邪の人多かったみたいだし…。
救急箱に手を伸ばし、風邪薬を飲もうとした。が、真由子に与えている
乳に、薬の成分が混じるような気がして、その手を引っ込めた。

                            つづく…

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【7】◆◇編集後記◆◇
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来週はお盆。夫の父のお墓は、近所にあるので折に触れてお参りしてい
るが、私の父のお墓は札幌にあり、なかなかお参りに行くことが出来な
い。全国、あれほど飛び回っているというのに、自分の親の墓参りも出
来ない私は、ちょっぴり親不孝かな…と反省しきり。でも、天河の七夕
祭で毎年、父の燈篭を流しているので、きっと大目にみてくれているよ
うにも思う。何より一番の供養は、思い出すことだよね、なんて、更に
付け足しもしておこう。
                    aya