2008/03/07━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ☆★☆  TEN's magazine 第308号  ☆★☆ 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━  http://www.office-ten.net

こんにちは、天川 彩です。

一昨日、私はとてもとても特別な普通の日を迎えていました。
今年、オフィスTENが十周年であることは以前お伝えしましたが、
十年前の3月5日、私は天川 彩となりました。この日を境に、それまで
とは全く違った人生を歩み始めることになったのです。

この十年は、まさに「自然の叡智と命の尊厳」を学んでいた月日であり
同時に、有難すぎるほどの尊い出会いの連続の日々でもありました。こ
れらのご縁の数々は、私の生涯の宝物だと思っています。

もちろんメルマガ読者の皆さんにも、深いご縁を感じております。
このメルマガを、いつから皆さんが読み始めてくださっているのか、私
にはわかりませんが、こうして読んでくださっていると思うだけで、ど
れほど大きな励みになっているかわかりません。
ですので、やはりメルマガ読者である皆様に、真っ先に様々なことをお
知らせしたいと思っているのです。そこで皆さんに、まずは報告いたし
ます!

以前にも少しインフォメーションいたしましたが、雑誌での連載が正式
に決定しました。健康と美をテーマとした月刊誌『日経ヘルス』(日経
BP社)という雑誌、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、来月
4月2日発売の5月号より、エッセイを書きます。健康と美の雑誌といっ
ても、体の健康や美についてのエッセイを書くのではなく(それは、書
けといわれても難しいです・・・)心がスッキリ元気になるような、そ
んなエッセイをお届けする予定です。挿絵は、弊社のアーティスト、享
子が担当。いつもと同じコンビですが(笑)、よろしければ読んでみて
ください。

さて、先週、募集を開始いたしましたペルーツアーですが、お陰様で大
反響いただいております!既に半数以上の席が埋まってしまいました。
GWのことですし、抑えてある航空券やマチュピチュまでの移動列車も
既に満席状態のようですので、どうしても定員を越してお受けする状況
は難しそうです。どうしようかお悩み中の方、どうぞお早めにお申し込
みください。きっと、思いきって決断してよかった、と思えるはずです
よ!

それから、平和の民・ホピの村を訪れるツアーは、いよいよ、今月10日
が最終締め切りになりました。こちらのツアーは、今までになく少人数
の旅となりそうです。ホピの村は、本当にその大地に呼ばれている人し
か行けないような場所にありますので、通常の旅行社では、ほぼ間違い
なくツアーはないと思いますし、ホピや先住民族、ネイティブスピリッ
トに興味のない方にすると、あまり面白くないかもしれません。でも、
それだけに、『平和の民』というものと、ご自身に何か共通するものが
あると思う方には、是非訪れてほしい場所です。

以後、数年間は「ホピツアー」は行わないかもしれませんので、やっぱ
り「今だ!」と思われた方、すぐにお申し込みくださいネ。

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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様===============「怪我の巧妙」
2・TEN占い==========今週は「メディスンカード」占い
3・締め切り間近!=====「アリゾナ・ホピの大地へ行くツアー」
4・本物志向のプログラム====「伊勢詣と木曽の神木の森ツアー」
5・大反響!========「神秘と世界遺産の国 ペルーツアー」
6・連載小説==================「雨弓の時」37
7・編集後記=====================ひとりごと
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【1】◆◇コラム・風の文様◆◇
……………………………………………………………………………………
 
□「怪我の巧妙」

二ヶ月ほど前、北海道に住む実家の母から「今度、仕事で東京に行くこ
とになったので泊めてね」と電話がかかってきた。
母は、七十四歳。仕事大好き人間で、四十年近く経理仕事をしてきたの
だが、父の他界後は一線を退き、今は趣味に遊びに日々を謳歌している。
だから「仕事で」という言葉に、少々驚いた。

なんでも、所属している全国組織のボランティア団体の北海道支部の経
理を担当しているらしく、会計ソフトが新たに導入されるにあたり、東
京の会議室で研修があるのだという。

十年近く前、母は介護ヘルパー2級の資格を取得した。そろそろ介護され
る側の年齢といってもおかしくない年で、資格を取っていたので、なぜ
ヘルパーの資格を取ったのか聞いてみた。母は「いつか自分が介護され
る側になった時、ヘルパーさんは、どのような苦労や心持で介護にあた
ってくれるものなのか、勉強してみたかったのだ」と返答だった。

その時のご縁から、以後そのボランティア組織団体に母が入っていたら
しいのだが、そんなこと、今年に入るまで全く知らなかった。

先月、経理ソフト研修の数日前、母は東京にやってきた。

今まで、母がたまに東京へ遊びに来た時にも、平日休んでゆっくりと何
処かへ連れて行く、などという時間もなかなかとれなかったので、今回
は、一日ゆっくり休みをとった。
その日は、長女が大学で助属している落語研究会の落語会が、神楽坂の
お寺で催されるというので、昼間はそれを聞きに行き、その後は次女が
アルバイトしている有楽町のカフェに行き、夜は銀座あたりで二人で食
事でもしよう、などと話していたのだが…。

落語会。娘の出番も無事に終わり、その後もしばらく何席か、そのまま
聞いていたのだが、そろそろ出て次に行こうということになった。そし
て幕間、入り口に近かった私は、さっと立ち上がってそのまま玄関まで
進み、先に靴を履いていたのだが、続いて玄関に来ると思っていた母は、
待てども待てども出てこない。おかしいな…と思って、部屋の前まで戻
ってみると、母が足を抱えて座り込んでいる。話を聞くと、正座したま
ま落語をずっと聞いていたので、足が痺れきっていたところで、急いで
部屋から出ようと、立ち上がってみたのだが、思いのほか足が利かず、
転倒したのだという。

あまりに痛がっていたので、その日の予定を中止にして、神楽坂から自
宅近くの整形外科病院までタクシーで走った。診断の結果、右膝は四針
縫う裂傷。左足の甲には軽く骨にヒビが入っているという、両足とも使
えない状況になっていた。

病院には貸し出しできる車椅子はない、とのことで、結局松葉杖を借り
て、翌日の経理ソフト研修に母は意地で出席したのだが、無理をしたの
がよくなかったのだろう。その日の夜から、足が腫れあがってきた。
ボランティア団体の方から、社会福祉協議会に行くと無償で車椅子を借
りることができると教えられ、車椅子を借りてくることにした。福祉が
充実しているということは、なんとありがたいものだろう、とこの時初
めて実感した。

母は、寝たきりの状態になったわけではなかったが、当初はお手洗いに
一人で行くこともままならない状態だったので、夫が抱きかかえて連れ
て行ったり、家族が代わる代わる肩や手を貸して行く、という状態だっ
た。そんな時、普段使うこともなく意識すらしていなかったが、お手洗
いの中に、手すりがあったことが、どれほどありがたかっただろう。

外で車椅子を押していて一番驚いたのは、日本という国の公共施設での
車椅子利用者に対する福祉の行き届きぶりだ。
地下鉄でもJRでも空港でも、何処に行っても車椅子の人がスムーズに
移動できるよう、乗降する駅には前もって次の行き先に連絡が入ってい
る。車椅子用の板が電車とホームの間には敷かれ、ほとんどの駅や公共
施設には、車椅子優先エレベーターがついている。エレベーターの無い
階段には、移動リフトが付いているか、無くても駅職員が対応してくれ
る。ほとんどの場所には、車椅子用のお手洗いも完備され、ちゃんと使
いやすいように設計されていることも、今回初めてわかった。

母が車椅子使用者にならなければ、全くそれらのことには気が付かなか
ったかもしれない。母自身も「こんな経験、望んだってできないから、
凄くいい体験させてもらったし、今までにないくらい、ここの家の皆と
お喋りが出来てよかった」と怪我の功名を素直に喜んでいるようだ。

それにしても…時代はよくなっている、と最近しみじみ実感している。
福祉にしても、十年、二十年前はこれほどまでに充実は、していなかっ
ただろうし、人の対応も、違っていたのではないだろうか。
また、地球温暖化がこれほど顕著に見えてくると、環境問題にしても、
世界中で放ったらかしにはできなくなってきた。
9・11以降、世界平和について考える人が爆発的に増えたことも、
同じだ。このほか、様々な出来事も同様に思える。

何か目に見える大きな現象によって、どんどん、まともな方向へ方向転
換してきているように思える。

怪我の功名と表現するのは適切ではないかもしれないが、どうしても必
要なことは、時には痛みを伴うこともある。しかし、それは必要だから
起こっているのだろう。

怪我もかなり快復した母は、昨日、札幌へ戻った。

完全に両足が直ったら、どんな心境の変化があったのか、いつか聞いて
みたいと思う。


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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽にお遊びとして楽しんでくださいね。
                          
今週も[メディスンカード]で今週の運勢を占ってみました。

2008年3月8日(土)〜3月14日(金)あなたの運勢

〈1月生まれ〉
前進あるのみです。今週は予想外の出来事も次々とクリアー出来そうな
ので、頭をフル回転させてね。

〈2月生まれ〉
やりっぱなしになっていることはありませんか。今週は気になっている
ことを片づけるのに適した一週間です。誰かとわだかまりがある人は解
消するかもしれませんよ。

〈3月生まれ〉
あなた自身がどうありたいのかを、見失ってはいませんか。他人の言葉
に左右されずあなた自身で判断することを忘れないでね。

〈4月生まれ〉
いつかやろうと思っていたことは、今週向き合うといい結果が出るかも
しれません。恐れず、勇気を出してね。

〈5月生まれ〉
うまい話や、出来過ぎた話には気をつけましょう。そこに惹かれるとし
たならば、あなたの心の隙が引き寄せているのかもしれません。今週は
慎重さが必要ですよ。

〈6月生まれ〉
あなたの軽率な態度や言動があなた自身を苦しめてしまうかもしれませ
ん。今週はあなたらしさを失わないよう気をつけてね。

〈7月生まれ〉
今週はあなたの内面が問われる週になりそう。相手の立場に立って物事
を判断しているか目先だけで動いていないか、一度よく考えてから動き
ましょう。

〈8月生まれ〉
変化の時がやってきています。次のステップに移ろうと思っているのな
ら、今がそのチャンスの時です。勇気を持って進んでね。

〈9月生まれ〉
調和がキーワードの一週間となります。あなたが動いたことによって、
周りの人が幸福感を得るような行動を心がけてね。きっと、後々大きな
幸せに繋がっていきますよ。

〈10月生まれ〉
今まで集めてため込んでいたものを、手放す時期がやってきているのか
もしれません。あなたに不必要な物をいつまでも執着せず、次へのステ
ップへと進みましょう。

〈11月生まれ〉
働きすぎて、疲れが出てはいませんか。また、悩んでいるのに、誰にも
言えず、鬱憤がたまってはいませんか。今週は、できるだけリラックス
を心がけて下さい。お風呂やプールなど、水の中に浸るのも効果的です
よ。

〈12月生まれ〉
誰かを見下して否定的な気持ちになってはいませんか。また、他人の成
功を妬んではいませんか。今週はあなたの中で絡まっている糸を解きほ
どいていく努力をしてみてね。



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【3】◆◇締め切り間近!◆◇
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    平和の民の地へ、呼ばれていると感じている方
      この旅が人生を変えるかもしれません。

          3月10日締め切り!
  
    TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
    ●天と大地に感謝する旅 スペシャル!●
 
 『平和の民・HOPI族の大地とアメリカの大自然を訪ねる旅』

    2008年3月20日(木・祝)〜3月26日(水) 7日間
    
      ツアー代金 288、000円(税込み)
    <空港諸税は別途お支払いとなります>
  詳細 http://www.office-ten.net/hopi/2008/t.htm


アリゾナの砂漠の地に
聳え立つ大地。
そこに、平和の民
ホピ族の人々が静かに暮らしています。

なぜか、ホピが気になる方
先住の民のから、叡智を受け取りたい方
カチーナが気になる方

そしてアリゾナの風が
赤土の大地が

今、呼んでいると思う方、

この旅があなたを待っています。


ツアーの詳しい行程は
http://www.office-ten.net/hopi/2008/t.htm

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【4】◆◇本物志向のプログラム◆◇
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    今年のお伊勢さんツアーは
       とにかく凄いです!

   日本を感じ、日本を学び、日本を知りたい人には
      絶対におすすめの旅です。

   一般向けの伊勢ツアーでは、決して行かないような
     本物志向の人の為の旅プログラム

    <日本を堪能する旅シリーズ 其の八>
      『お伊勢さんツアー2008』


  〜式年遷宮ご神事「鎮地祭(ちんちさい)」と
     ご神木を育んだ木曽の森を訪ねる旅〜
  
   2008年4月25日(金)〜4月27日(日)
    2泊3日 39,900円 名古屋 発着

   帰りに東京着を希望される方は今回のツアーは
       なんと+3,000円でOK
   (その際には、必ずお申し込み時に、
        東京着希望とお知らせください)

     定員 15名 最低施行人員8名

  詳細・お申し込みはhttp://www.office-ten.net/j/ise/2008t.htm
 
「お伊勢いきたや伊勢路がみたい せめて一生に一度でも」
日本人共通の心の故郷、お伊勢さん。
宇治橋を渡り、神域に入った途端、身も心も洗われるような気持ちに
なるのは、そこが日本の総氏神様だからでしょうか。

今年は二十年に一度のご神事、鎮地祭が行われる年です。これは、新
宮を建てる御敷地で行われる一番最初の祭儀です。

お伊勢さんツアー2008では、通常ではなかなかできない内宮での
正式参拝(御垣内参拝)に加え、外宮、月讀宮での「鎮地祭」(ちん
ちさい)を観拝させていただくことにしました。
さらに、今回の旅では伊勢から木曽へと足を延ばし、内宮・外宮など
伊勢神宮の大事なお社となる、ご神木を育んだ山、木曽の御杣山へ向
かいます。この貴重な機会は、木曽でご遷宮に関わられた、林業関係
の方の多大なるご協力を得てのことです。
ご神木となった御木の切り株にも対面させていただけそうですよ。

はじめての伊勢、久しぶりの伊勢、またしてもの伊勢。
せっかくの「伊勢詣で」ならば、特別な機会を是非選んでください。
きっと、生涯忘れられない、特別な時間となることでしょう。


行程など詳しくは

http://www.office-ten.net/j/ise/2008k.htm

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【5】◆◇早くも大反響!◆◇
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    募集開始より1週間で、残席5となりました

  
 TEN'sトラベルメンバーの為の旅企画 

    ●天と大地に感謝する旅 プレミアム● 

        『神秘の国・ペルーツアー』
   ペルーの世界遺産とインカの末裔達の生活に振れる
          心贅沢な11日間の旅
   
         5月1日(木)〜5月11日(日)
       GW休日を最大限に利用した日程です!
          418、000円(税込) 

(全朝夕食・現地日本語ガイドつき 宿泊ホテルは全て3星クラス)  

 

        詳しい日程やお申し込みはどは
     http://www.office-ten.net/pelu/top.htm


天空の遺跡・マチュピチュ…
不思議な地上絵・ナスカ…
古代インカの都クスコ…
南米ペルーは神秘と世界遺産の宝庫。

でも、地球の反対側にある、遥か遠いその場所には
誰もが気軽に行けるものではありません。

でも、一生に一度は、行ってみたい。

そんな憧れの地に行くのなら
やっぱり、納得できるいい旅で行きたいと
ずっと思っていました。

ありきたりな、団体観光旅行でもなく
不必要なものが多い、高級旅行でもなく
戸惑いが多そうな、個人旅行でもなく
急ぎ足の余裕のない旅でもない。

インカの風を存分に感じられるような
その土地に暮らす人々と
少しでも触れ合えられるような
それでいて、快適さも
見どころも忘れない
ペルーの旅。

そんなわがままな旅ができないか
ペルー在住の友人に相談したところ
素敵な旅のアイディアと
同じようにペルー在住の彼の友人で
旅行社を営む人を紹介してもらいました。

それから、共に練りに練って…

本当に素敵なペルーへの旅プランが出来上がりました。

TENの旅企画初の、皆さんと初めて現地へ
訪れる旅です。

もしも、生涯一度はペルー旅行をしたいとお考えなら
思い切って、今、行ってみませんか?
きっと、一生ものの宝になることでしょう。


詳しい行程は http://www.office-ten.net/pelu/top.htm
     

 
高山地対策を十分に考慮しながら、ペルーの魅力を存分に味わって
いただけるよう考えたスペシャルオリジナルプログラムの旅です。
GW期間を利用しながらの、この内容でこの価格はかなり安いと思
います! 

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【6】◇◆連続小説◆◇
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<今までのあらすじ>

女子大生の高原祥子は、両親の不仲が原因で自分は不幸になったと思い
込んでいたのだが、近所に住むアパレルメーカー勤務の高梨良一と付き
合い始めたことで、少しずつ考え方が変わりはじめていく。マスコミ就
職への希望を持ち始めた頃、予定外の妊娠で、急遽、良一と結婚するこ
とになった祥子は、良一の実家がある仙台に向う。そこで出会った家族
達は…

『雨弓のとき』 (37)                天川 彩



「えーと、彼女の名前は高原祥子さん。まぁ、いろいろ伝えてあるから
詳しく言わなくてもわかっていると思うけれど…今度、彼女と結婚しよ
うと思っているんだ。…というか、結婚するよ。で、こっちにいるのが
僕の両親と妹の小百合」
「あ、あの。高原祥子です。はじめまして。えーっと、今は大学生なん
ですけれど、学校は…良一さんと話し合って、やめることにしました。
…で…」
「子どもは、今年の9月に生まれる予定なんだ」
「そうか」
良一の父親が、ぶっきらぼうに返答すると、するとすかさず横にいた母
親が口を挟んだ。
「最近じゃ、出来ちゃった結婚っていうの、多いしね。でも、その出来
ちゃったって、あんまり好きになれないのよね」
「え?ウソ!!お母さん、お兄ちゃんの結婚に反対なの?」
妹の小百合が驚いた顔をして母親の顔を見ながら、素っ頓狂な声をあげ
た。
「嫌ね。違うわよ。出来ちゃった、じゃ、お腹の赤ちゃん、なんだか望
まれていないみたいで可哀想じゃない。それなら堂々と、おめでた結婚
とかの方がいいなぁ、なんてね」
「そうだよね。おめでただし、おめでたいし。よかったね。お兄ちゃん。
あ、お婆ちゃんの目が覚めたみたい。今、連れてくるからね」
小百合は、そういうと嬉しそうに、部屋から出て行った。

祥子は、小百合の後姿を目で見送りながら、自分よりも3歳年上だと良一

から聞いている小百合が、続柄では妹になるということが、なんとも不
思議な気がしていた。そして、良一のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ小百
合は、自分のことを『お姉ちゃん』と呼ぶのだろうか、などとどうでも
いい想像をしていた。

「祥子ちゃんのこと、良一からお正月に、話だけは聞いていたのよ」
「え?お正月にですか?」
「お正月帰ってきて、あんまり機嫌がよかったものだから。これは彼女
でもできたかな??って女の勘でね」
「うちの母さんは、勘がいい人なんだよ。」
それまでずっと黙っていた父親が、突然、口を開いたので、祥子は少し
驚いた。

「良一から、聞いているかしら。私とお父さんはお互いに再婚で、良一
は私の連れ子なんだけど、小百合はお父さんの連れ子で。今、小百合が
連れて来るお婆ちゃんは、お父さんの母親。我が家はそんな感じで、ま
るでパッチワークのような家庭なんだけど、でも皆仲良くってね」
「凄いですね。うちなんか…」
祥子が、自分の家族の愚痴を言おうと思った時、良一が口を挟んだ。
「あのさ、息子の俺がいうのもおかしいけれど、お袋が随分頑張ったと
ころあると思うんだよね」
「あら、良一。それは違うわよ。お父さんもお婆ちゃんも小百合も。勿
論良一も。みんな家族になろうって努力したからだと思うわよ」
「家族になる努力ですか?」
祥子にとって、想像もしていなかった言葉だった。家族は、結婚したら
自然と新しい家族になるものだと思っていた。家族になるのに、努力な
ど必要だという話など、今まで聞いたこともなかった。

「そうね。ちょっと表現が間違っていたかな。家族になる努力じゃない
か。仲の良い家族になる為には、それぞれの努力が必要ということかし
ら」

祥子は、ハッとした。確かに、自分の家族に置き換えてみると、自分は
両親の不仲ばかりを指摘し、母親や父親を責めてばかりいたが、自分自
身は努力などしてきただろうか。

「だから、うちの母さんは勘がいい人でね。誰かが、何か口に出せずに
心の中で思っていることがあると、スーッとうまく喋らせることができ
るんだよね。本当に凄い人なんだよ。私の奥さんは」
「嫌だ、お父さん。そんな照れてしまうじゃないですか」
「いやいや。祥子さんとは、嫁姑という関係になるんだから、母さんの
いいところ、まずは知っておいてもらった方がいいと思ってね」

祥子は、良一の素晴らしさは、この家族の中で培われてきたものなのだ、
と改めて感じていた。と、同時に自分のイジイジとした性格はこの家族
に嫌われてしまうのではないかと、急に不安になった。
と、そんな心の中を読み取るように、良一が言った。
「それじゃ、祥子ちゃんの良さも知っておいてもらわないと。祥子ちゃ
んは、料理上手で…そして、今時の女の子には珍しいほど、古い習慣と
かよく知っているんだ。そして、何より優しい女の子なんだ」

「それは、会った瞬間からわかっているわ。私は勘がいい人だから」

良一や良一の母の気持ちが、祥子は、言葉にならないほど嬉しかった。


                         つづく…

……………………………………………………………………………………
【7】◆◇編集後記◆◇
……………………………………………………………………………………
明日からミステリーツアーです。目的地は、今は内緒ですが、どこにご
案内して、どんな旅をしていたのかは来週のメルマガでお伝えします。
                       aya