2007/04/06━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ☆★☆ TEN's magazine  第262号  ☆★☆ 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net

こんにちは!天川 彩です。

先週末、薬師寺・花会式の朝3時からの法要に参列させてもらった後、
一睡もせずに岡崎に向いました。
岡崎では、映画「久高オデッセイ」の初の自主上映会でした。午前、午
後ともに定員以上の人々で埋まり大盛況。私は、講演を依頼されてその
会場に行ったのですが、主催してくださった方や陰で動いてくださって
いるスタッフの方々が、本当に懸命に「大切なこと」を伝えようとされ
ている姿に感銘を受けました。

因果応報。原因があるので結果があるのですが、最近特に、そんなこと
を強く感じます。
かなり以前のコラムにも書きましたが、幸せの因をうんと作ろうと思っ
ています。後々、満面の笑顔に繋がること。
かつて、宮沢賢治は「皆が幸せにならない限りは、個人の幸福はありえ
ない」と述べていますが、私も全くの同感です。

賢治さんの言葉を思い出したら、急に私が一番好きな言葉を皆さんに
伝えたくなりました。
もう十年以上前になりますが、花巻農業高校 羅須庭園の前にひっそり
と刻まれていた、賢治さんの言葉で、そこでメモをしてきた言葉です。

『われらに要るものは銀河を包む透明な意思 巨きな力と熱である』

まさに、私自身の指針にもなっているような言葉です。

銀河を包む透明な意思。この透明が難しいんですよね。自分の思惑が
少しでも入り込むと、透明な意思にはなれず、またどんなにピュアで
あっても、巨きな力や熱を持つことが無くしては、皆が幸せにはなら
ないのですよね。

さて、先週よりお知らせしておりますが、TEN’sショップに続々
と新商品が入荷しています。ケナフタオルや石鹸は早くも在庫がゼロ
になってしまい、今日、追加でまた入荷してきました。また今日から
セレクトの森に登場している 天然ラベンダー入り アイピロー「ぱ
すてるケロちゃん」や和紙絵扇子「ハッピーセンス」などは、どれも
一点ものですので、どうぞお早めに。

それから「大人のための究極・恋愛講座」は、既に半数以上のお席が
埋まりました。仕事関係のある方に「この講座、どんな人が受けに来
るんですか?皆の前で話したりとか、恥ずかしくないのでしょうか」
と聞かれました。もしかすると、皆さんの中にも同様の不安がある方
がいらっしゃるかもしれませんので、お伝えします。
今まで参加してくださった方々の年齢は幅広く、下は二十代から、上
は今のところ五十代の方です。中心層は三十代後半でしょうか。
皆さんに共通していえることは、純粋に真剣だということです。だか
らだと思うのですが、参加者の方それぞれのお話に共感できたり、共
鳴できたりするようで、その後、それぞれにお友達として交流してい
る方も多いようです。

どうしようかと迷っている方、どうぞ勇気の一歩を踏み出してくださ
いね。私は100%応援しますヨ!

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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・TEN’sショップ==続々、新入荷!
2・TEN占い======今週は「タロットカード」占い
3・天と大地に感謝する旅=「アメリカ先住民の教えと母なる大地」
4・募集中========「大人のための究極・恋愛講座」
5・連載小説=======「雨弓のとき」11
6・編集後記=======ひとりごと

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【1】◆◇TEN’s ショップ◆◇
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春の新入荷情報!!


■「潤子さんの まごころソーイング シリーズ」新登場!


 ☆☆☆天然ラベンダー入り アイピロー☆☆☆

 ○なまえ「ぱすてるケロちゃん」
     限定5個 (次回入荷予定 初夏)
    (身長25センチ 色パステル 中味 天然ラベンダー) 
          
     1800円(送料350円)
     http://www.office-ten.net/shop/jyunko.htm

   *色はお任せください。

快適な睡眠のための可愛いアイピロー。目を瞑り、静かに目の上に乗せ
て、ぐっすりお休みください。また枕の横に置いているだけで、天然ラ
ベンダーの優しい香りが、夢の中に誘います。

ぱすてるケロちゃんの中には、潤子さんのお友達のお庭に咲くラベンダ
ーをポプリとして入れています。尚、次の収穫期まではこの商品は入荷
しません。


<潤子さんについて>

潤子さんとの出会いはインドでした。薬師寺のお坊様たちと、お釈迦様
の法要を兼ねて仏跡巡礼に行った際、なぜか何処へ行っても法要の度に
隣り合わせになったのが潤子さんでした。何度目かの偶然の後「よほど
ご縁がありますね」と互いに挨拶したのがきかっけで、帰国後も潤子さ
んとお付き合いするようになりました。

仙台在住の潤子さんは、主に癌入院をされている方たちのために、おし
ゃれなケア用品を地道に作られているソーイングアーティストさん。潤
子さんのお人柄を、ひと言でいうならば、まさに「愛の人」。いつも誠
心誠意、真心込めて作品を作られています。そんな潤子さんの作品は、
患者さんたちの為だけではなくどんな人にも安らぎを与えるものばかり。

今回、初めて取り扱うことになった 天然ラベンダー入りのアイピロー
「ぱすてるケロちゃん」も、アイピローとしてだけではなく、可愛いら
しい表情と共に、ラベンダーのアロマ効果がダブルで日常の疲れを取っ
てくれるアイテムとして大活躍しそうです。

*今回、この商品は入荷数が少なくて申し訳ございません。

可愛くて、ステキで、お手ごろ価格なので申し込みが多くなりそうな気
がします。メール先着順ですので、ピン!ときた方はお早めに♪



■享子アートシリーズ

 新登場
            ☆ハッピーセンス☆ 
         和紙扇子 各2500円(税込) 送料210円
       http://www.office-ten.net/l.htm
A 笑いの神々            
B 天の小鳥             
C 花よ蝶よ             
D 愉快な豚猫            
              

いつも、楽しいことばかりじゃない…。でも、この扇子を広げただけで
Happy Happy Happy day♪
そんな楽しい気持ちにしてくれる、ハッピーセンスが新登場です。

種類は4種。全て手書きの一点ものなので、同じシリーズでも
作風や色合いは少しずつ異なります。


A<笑いの神々>
見ているだけで、幸せ気分。更に風を送ると、めでたい気分。
神々の笑い声が聞えてきそうな、寿な一本。

B<天の小鳥>
天の小鳥の歌声は、あなたの心に響くはず。扇げば、爽やかな
風が吹いてきます。

C<蝶よ花よ>
蝶よ花よ、可愛いかりたい可憐な一本です。最も女性らしい雅な扇子。

C<愉快な豚猫>
なぜか、扇子に豚猫。最もファンキーなハッピーセンスです。
実は、豚猫たちに名前があります。その名もヤコブ、ガブリエル…


☆☆☆☆☆☆☆ 大好評のTENの取り扱い新商品 ☆☆☆☆☆☆☆☆


■天の紅茶
http://www.office-ten.net/shop/tea.htm

■ケナフスキンケアシリーズ
http://www.office-ten.net/shop/kenaf/1.htm

♪お得な春のキャンペーンセット♪
■TEN’トリプルセット
http://www.office-ten.net/shop/haru.htm


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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽に楽しんでくださいね。
                          
今週も[メディスンカード]で1週間の運勢を占ってみました。

2007年4月7日(土)〜4月13日(金)あなたの運勢

〈1月生まれ〉
アイディアを実行に移すときがやってきました。やりっぱなしになって
いることを終わらせたり、わだかまりを解消する週です。どんどん動き
ましょう。

〈2月生まれ〉
あなたが今まで目指してきたことが、もうすぐ達成されようとしていま
す。静かに内なる自分と対話して、あなた自身の考えに従ってください
ね。

〈3月生まれ〉
今は動く週ではありません。周りの動きをよく観察して、次に動くべき
道を考えてください。

〈4月生まれ〉
今週はあなた自身の為ではなく、周りの人々、世の中の人々の為に今自
分が何が出来るのかを、しっかりと考えてみてください。

〈5月生まれ〉
善悪で物事を判断しようとしたり、全てをきっぱりと分けて考えようと
はしていませんか。頭から否定するのではなく、本質的なことに目を向
ける努力をしてね。

〈6月生まれ〉
行動の時がやってきました。あなた自身の為、そして家族や友人など、
様々な人の為にあなたがパワーを発揮する週ですよ。

〈7月生まれ〉
先々のことばかりを考えて、一番の足元を見忘れてはいませんか。日常
の中に全ての答えはあります。そのことを決して忘れないでね。

〈8月生まれ〉
自分自身に嘘をついてはいませんか。あなたの本当の心が強く言ってい
る言葉にしっかり耳を傾けてね。とらわれてはいけませんよ。

〈9月生まれ〉
あなたのエゴや傲慢さが邪魔をして、本来の道を忘れかけてはいません
か。今週のあなたのキーワードは慈愛です。

〈10月生まれ〉
あなたが今まで様々な人に対して行ってきた行為が、自分に返ってくる
週です。親切にしたことは他人からの親切となって、また批判していた
ならば批判となって返ってくるでしょう。

〈11月生まれ〉
今週は夢に様々なキーワードが現れます。できるだけその夢を忘れない
よう夢日記などつけるようにするといいかもしれません。

〈12月生まれ〉
今週のあなたにとって重要なキーワードは、自分に正直になることです。
感情に邪魔をされると何が本当の自分なのかわからなくなるので、気を
つけてね。意志を強くもってね。


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【3】◆◇天と大地に感謝する旅◆◇  
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 天と大地に感謝する旅 スペシャル2007

  「アメリカ先住民の教えと母なる大地ツアー」
    〜ホピとナバホの祈りの大地を巡る旅〜
 
★グランドキャニオン★モニュメントバレー★キャニオンデシェイ★
    
    2007年6月20日(水)〜6月26日(火) 7日間
    
      ツアー代金 288、000円(税込み)
    
     <空港諸税は別途お支払いとなります>
     
   *ツアー代金を分割払いで希望される方はご相談ください
  
         募集人員  20名
         最低施行人員 8名
     
     20名に達しましたら、締め切らせていただきます。
     参加希望の方はお早めにお申し込みください。
     
    詳細 http://www.office-ten.net/hopi/1.htm

   *6月22日夏至の日は、ホピの大地で迎えます。

アメリカ国立公園の中でも圧倒的なスケールを誇り
ホピ族の大切な聖地でもあるグランドキャニオン。
ナバホ族の人々の居留地でもある、
西部屈指の公園、モニュメントバレー。
古代人アナサジ族の遺跡が随所に残る国定公園キャニオンデシェイ。
そして、平和の民・ホピ族が守る大地メサ。

壮大な大自然…
祈りの地に吹く風…
先住の民とのふれあい…

貴方が何ものにもとらわれずニュートラルな状態ならば
きっと魂の奥に深くしっかりと、大切なメッセージを
受け取ることができるでしょう。

そして、それらをしっかりキャッチした後は
真逆な先端の街、ロサンゼルスに移動して
映画の都、ハリウッドで最後の一日を過ごしてください。

太古からの風と、最先端の風。
世界の「今」を肌で受け取ってください。


■ツアー代金に含まれるもの

成田→ラスベガス航空運賃 ロサンゼルス→成田航空運賃
アメリカ横断鉄道アムトラック夜行列車運賃(コーチシート)
アメリカ大陸 移動中のバスチャーター代
*セスナ代(参加人数によってセスナ移動する可能性もあります)
モニュメントバレー・ジープツアープログラム参加代
ホテル宿泊代 
(宿泊予定地:グランドキャニオン公園内1泊 モニュメントバレイ近
郊1泊 ホピ・カルチャーセンター1泊 ハリウッド1泊)
自由行動日以外の全朝夕食代
 
■ツアー代金に含まれないもの
成田空港旅客施設使用料 空港税 航空保険料 米国出入国税
昼食代 自由行動日の交通費及び食事代


TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
企画 オフィスTEN/ワールドエキスプレス大阪
主催 株)ワールドエクキプレス 兵庫県知事登録旅行業第2-250


アメリカの大地が呼んでいると思う方、是非ご一緒しましょう。

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【4】◆◇募集開始!◆◇  
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  『大人のための 究極・恋愛講座』

 運命の人と巡り逢う方法 パートナーと生涯恋愛する方法
          伝授いたします

     *既に半数以上のお席が埋まりました*
          

日  程 2007年4月21日(土)
時  間 10:30〜16:30 (昼休憩 1時間)
会  場 葛飾シンフォニーヒルズ 別館 <ローズの間>

講座内容 Step1 恋の言の葉拾い
     Step2 パートナーシップについて
     Step3 理想の相手・理想の自分
     Step4 セルフプロモーション術

受講料  10500円(税込)
    (夫婦・恋人で参加の場合は、二人で10500円で結構です

定  員 15名 

申し込み http://www.office-ten.net/com-kouza/421.htm

講  師 天川 彩 作家・プロデューサー
     作家としては、昨年末、ダ・ヴィンチ誌上で発表された
     BOOK OF THE YEAR 2006の恋愛小説部門で第4位に輝く。
     自然の叡智と命の尊厳をテーマに、映像作品やイベントなど
     多種多様な仕事を通して、太古から今に通ずる普遍的なもの
     を伝え続けている。
     恋愛講座はコミュニケーション術達人講座の番外編として行
     っているが、素晴らしいパートナーと巡り逢うことは、核戦
     争まで止められるかもしれない…との思いで、本気で取り組
     んでいる講座。



 運命の人…。
 どこを探せば、何をしたら
 出逢えるえるのでしょうか。
 あなたが、もし、
 本気でその人を探していたとしたなら
 その人も、本気であなたを探しているはず。

 だけど、生涯を通して
 互いに愛し慈しみあえる人に
 真剣に出逢いたいのなら…
 ちょっぴり自分改革も必要なのです。

 出逢った時から、この世を去るまで
 ずっと、人生を共にする
 唯一無二のパートナー。

 結婚しても、お父さんとお母さんになっても
 おじいちゃんとおばあちゃんになっても
 生涯、素敵な恋人同士で
 あり続けてください。

 素晴らしい恋愛は、
 世の中の平和の糧になるのです。



・寂しいから、誰かと一緒にいたい、とか
・贅沢な生活をさせてくれる人を探したい、とか
・家事が面倒くさいから、できる人と出会いたい、とか

こんな人は、運命の人との恋愛は望めません…。

依存したり、束縛したり…幸せじゃない恋も
そろそろ卒業しましょう。

この講座は、こんな人におすすめです

● この世にただ一人の運命の人と巡り逢いたい人
● 心から、愛し愛される関係を望んでいる人
● パートナーに、恋のトキメキを感じられなくなっている人
● ひとりでも生きていける、でも…と時々思う人

勇気を出して、是非お越しください!


*尚、他の地域で、この講座の開講をご希望される方は、
 メールでご相談ください。ある程度の人数が集まったなら
 可能な限り開講したいと思います。
 

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【5】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>

高原祥子は、近くに住むアパレルメーカー勤務の高梨良一に恋をしてい
た。出会ってから二ヶ月。毎土曜にはずっと近所の散歩をするだけの二
人だったが、ようやく良一の気持ちも確かめることが出来て…


『雨弓のとき』 (10)                天川 彩

「あのさ、クリスマスイブだけど、何か用事ある?」

良一の突然の声に、祥子はビックリした。祥子も調度クリスマスのこと
を考えていたところだった。大切な人と過ごす日。クリスマス。いつの
頃からか日本でもそんな風潮が広がっていることに、祥子は子どもの頃
から抵抗があった。
不仲だった両親が、クリスマスなど共に過ごすはずもなく、枕元にサン
タさんからのプレゼントが届いたことはなかった。クリスマスの思い出
といえば、祖母が毎年買ってくれた菓子入りのサンタブーツ。それをテ
レビの上に飾ることが、祥子のクリスマスの唯一の楽しみだった。しか
し、祖母が亡くなり、その楽しみも途絶えてしまった。母親の敏子が、
毎年、イブには仕事帰りにフライドチキンとショートケーキを買って来
てはくれていたが、ラウンド型のクリスマスケーキは一度も出たことも
ない。昨年、母のもとを離れて、初めて一人暮らしを始めた年、イブも
クリスマスもアルバイトをした。

しかし、今年は…微かな期待を込めて予定は空けていた。だから、良一
からクリスマスの言葉が祥子には小躍りするほど嬉しかった。

「ううん。これといって、別にないけれど」
「いや…前からクリスマスイブに食事に誘いたいなって思ってはいたん
だけどさ、なんとなくタイミングがさ。でも、今日…はっきりしてよか
ったね」
良一が手を握ったまま祥子の顔を覗きこんだので祥子は照れながら、小
さくコクンと頷いた。

「その日は平日だから、帰りは少し遅くなるけれど…。この近所なら、
何処かレストランの予約は、まだいけるんじゃないかな。祥子ちゃんは、
何が食べたい?」
「私は、何でも」
「何でもって、クリスマスだからこそ食べたいものとかない?」
「クリスマスだからこそ?」
「普通の日じゃないしさ」
「それなら、丸いケーキが食べてみたい…かな。サンタさんとか上に乗
っているヤツ」
「え?それは難しいリクエストだな。丸いケーキか…」
「子どもの頃から、一度食べてみたかったの。丸いまんまのケーキ」
「一度も食べたことないの?誕生日とかにも?」
「…。私の母、もともと甘いものがあまり好きじゃないし…。誕生日も
クリスマスも、いつもショートケーキだったから」
「そうなんだ」
「テレビとかで、誕生日に丸いケーキに蝋燭つけて、ふーって消すやつ、
やったこともないし。ね、クリスマスもケーキに蝋燭つけて、ふーって
するの?」
「普通しないと思うけど…」
良一は、急に祥子を抱きしめたくなった。普通に当たり前だと思ってき
たこと出来事が、祥子にとっては当たり前ではなかったのだ。抱きしめ
たい衝動を抑えて、さっきから繋いでいる祥子の小さな手を強く握り締
めた。

「ねぇ、それじゃ丸いケーキ買って来て、家でクリスマスしようか?」
「家って?」
「俺んちとか…じゃ嫌かな?」
「良一さんの家?」
「狭くて汚いけれど、その日は掃除しとくしさ。チキンとか何か、帰り
買い込んできてさ」
「それじゃ私、お料理作って持って行きます。こう見えて、何でも結構
作るんですよ」
「なら、イブの日には、大きな丸いケーキ買って帰るよ」
「はい!」
「じゃ、一応、家を教えとくよ。こっちなんだ」
良一は、祥子の手を引いて、細い路地を何度か曲がり、下町によく馴染
んだ低層マンションの前まで連れて行った。
「ここの三階の奥から2件目が俺んち」
下から覗き込んでもよくわからない。入り口はオートロック。この辺り
のオープンな住宅事情の中で厳重な入り口はややチグハグな気もしたが、
逆に高級な部類のマンションなのだということは一目でわかる。
「へ〜。こんなマンションに住んでいるんですね。高級そう」
「いや、そんなことないんだよ。ただ東京に来てから、ずっとこんなタ
イプのマンションにしか住んでいなかったから、最初は、よかったんだ
けど…。祥子ちゃんと出会ってからこの辺りを毎週のように散策してい
るとさ、なんか折角こんなエリアに住んでいるんだから、古い日本家屋
もいいよなぁって最近思うんだよね」
「私の家は、日本家屋なんて格好いいものじゃないけれど、古い木造の
アパートで部屋の窓から大きな木が見えるんですよ」
「そうなんだ。じゃ、今からその家の前まで送っていくよ」
「あ、大丈夫です。近いですから一人で帰れますし」
「いや、彼女を送らず、自分の家の前まで送らせて帰る男なんていない
よ」
「か、彼女ですか」
「でしょ。彼女だよ」
良一は、繋いでいた手をさっと離すと、祥子の肩に手を回した。祥子は、
足をどう出して歩いたらいいのかわからなくなった。肩にも腕にも、必
要以上に力が入ってしまう。
祥子はカチカチになりながら、歩き続けた。良一のマンションから祥子
のアパートまでは、およそ十分。こんなに近くで暮らしていたことに、
祥子は改めて驚いた。

「それじゃ、木曜日に」

祥子は、もしかして恋人の別れのキスというものがあるのかと思ったが、
いともあっさりと見送られた。

部屋に戻り靴を脱いだ瞬間、疲れがどっと出て、玄関前にへたり込んだ。
しばらくは、そのまま放心状態で座ったままだったのだが、ふと床の冷
たさがジンジンお尻に染み込んでくる。祥子は重く感じる体を引きずる
ように、ようやく部屋の奥まで移動した。
そして、お気に入りの大きなクッションを抱え、明日香に電話をかけて、
この日の一部始終を一時間近く話した。

「で、彼の家に行くってことはさ…やっぱりそれなりに、考えておいた
方がいいよ。子どもじゃないんだしさ」
「だけど、クリスマスケーキを食べようってことで、家に行くことにな
っただけだし。それだけだからさ」
「彼と付き合っているんでしょ。なら、そんなことになっても、いいじ
ゃない」
「だけど…。え…。ちょっと待って。家に行くって、そんなに…そんな
ことなの?」
「もう、本当に祥子は恋愛に関しては、ちょっと、なんていうかなぁ」
「私、どうしたらいい?」
「どうって、なるようになるんじゃないの?でもクリスマスなんだし、
ロマンチックに過ごしたらいいじゃない」
「明日香は、どうするの?」
「私?私は今夜まで彼と一緒に過ごすけれど、明日、熊本の実家に帰る。
今、彼はシャワー浴びているから言えるけれど、別にクリスマスだから
って、彼と一緒に過ごしたいとか思わないの。私、クリスマスは家族で
過ごしたい派なのよね」

祥子は明日香のことが時々、理解できなくなる。
人として好きとか嫌いとかではなく、恋愛や家族に対する思いは、人そ
れぞれなのだと感じるのだ。明日香の家族には会ったことはないが、話
を聞いているだけで、明日香がどれほど家族のことが大好きなのかがわ
かる。どうしたら、そんなに家族という存在を好きになれるのか、わか
らない。なのにどうして恋人を本気で好きにならないのか、わからない。
更にいうならば、それほど好きでもない男性に、なぜそう簡単に抱かれ
るのか、それもわからない。

「あ、彼シャワーから出てきたから。じゃ、いいクリスマス過ごしてよ
ね!そうそう。年賀状出すからさ、祥子もちょうだいね」明日香は、早
口で喋ると、一方的に電話を切った。
―年賀状か―
そんなものも、今までほとんど出したことがない。面倒くさいとか煩わ
しいとかではなく、出したいと思う相手が今までいなかったのだ。
クリスマスや年賀状…。今まで祥子の人生の中で色あせていたものが、
少しずつ鮮やかに彩りはじめていた。                                        つづく…

                          
……………………………………………………………………………………
【6】◆◇編集後記◆◇
……………………………………………………………………………………
なぜなのか。私のまわりは急に結婚ラッシュになってきた。
といっても、二十代の結婚ラッシュではなく再婚や大人婚の人たちばか
り。式の報告やパーティの相談などなど、あっちから、こっちから連日
のようだ。凄いぜ〜!と叫ばずにはいられない。幸せの種が、そこらじ
ゅうに飛んでいるみたいだ。
                     aya
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