2007/03/16━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's
magazine 第259号 ☆★☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net
こんにちは!天川 彩です。
昨日は真ん中の娘の高校卒業式でした。来月には長女に続き次女も大学
生。息子は、まだ高校生活が2年間残っていますが、そろそろ私の子育て
時代も卒業が近いのかな?…なんて思う今日この頃です。
さて、最近つくづく「本当の恋愛は尊い」と思っています。
先日亡くなった、鈴木ヒロミツさんは、余命3ヶ月とお医者様に宣告され
てから亡くなる直前まで、奥様に向けて沢山のラブレターを書き、沢山
の話をされたそうです。そして、お子様を含めて時間の限りを家族と共
に過ごし、なんと戒名も、家族を永遠に愛する、という意味の名をご自
身で考えられたというので驚きでした。奥様は「最高のダンナ様だった
」と言われているそうですが、きっとヒロミツさんにしても最高の奥様
であったのでしょうね。命ある限り、必ず死は迎えるのですが、唯一無
二のパートナーと巡りあい、結婚生活を続けられたことは、本当に幸せ
なことだと思います。
先週末、仙台の主催者様が企画してくださり、恋愛集中講座の講師とし
て、朝から夕方まで、恋愛講義をしてきました。最初、聞いた時には、
丸々一日?と戸惑いましたが、それがよかったようで…参加された方も
企画してくださった方も、もちろん私もみんな真剣でした。
参加してくださった方々は、未婚者はもちろんのこと、既婚者、離婚経
験者、中にはご夫妻での参加者もあり…というバラエティに富んだ皆さ
んたち。本当に有意義な時間だったのですが、中でも特に印象的だった
ことは、もうすぐ50歳を迎えるというある既婚女性の言葉でした。
あまりに感動的だったので、mixi日記に同じ内容のことを既に書い
たのですが…
その女性は、今まで誰一人とも恋愛することもなく、二十歳でお見合い
し、一ヵ月後には結婚。三人のお子さんも、それぞれ既に社会人となり
独立し、結婚生活も三十年の月日が過ぎようとしている方でした。
その方が、講座終了間際に言ってくださった言葉に感動したのです。
「私は、今日のこの講座に参加するまで、今までずっと気がついていな
かったけれど、実は自分の理想の相手と私は結婚していたんですね。な
んて、幸せ者なのかしら。今日、生まれて初めて、恋のスイッチが入り
ました。今日から死ぬ日まで、ずっと夫に恋ができそうです」
そして昨日、その方から葉書が届きました。帰ってから、ご主人と会話
が増え、将来の二人の夢についても語り合っている、と書かれていまし
た。本当に、この講座をさせて頂けてよかった、と心底思いました。
連日ニュースで流れてくる、悲しい事件や社会問題の多くは、もしかす
ると、生涯恋愛関係でいられるパートナーと出会い、そして暮らしてい
くことで、かなり解消されていくのではないかとすら大胆にも思ってい
ます。
人生は長いようで短いものです。結婚相手が浮気をしていたり、また、
悪い人ではないけれど、心の底からはどうしても愛せない、と思うよう
なら、その相手とは別れた方がいいです。人生の限られた時間が、もっ
たいないです。人として努力が足りない人が、ワガママから離婚しても
幸せは、はるか遠く…努力を重ねない限り、同じことの繰り返しでしょ
うが、パートナー違いに気がついて、勇気を持って離婚をした人は、も
うすぐ幸せがやってきます。人間、誰しも妥協せず、心から愛し愛され
る相手と巡りあった方が幸せです。
そんなこんなで…近日、この丸々一日恋愛集中講座を、東京でも企画し
てみようかと考え中です。
独身の方、既婚の方、バツイチの方、どんな方でも、唯一無二の相手と
本当の恋愛がしたい!と思っている方は、是非どうぞ。東京以外の場所
でも、人数がある程度集まるようでしたら、可能な限り参上いたします。
みんな幸せにならなきゃ、世界の平和は訪れない♪ですよね!
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◇◇今日の目次◇◇
◇◇ ◇◇ ◇◇
◇◇
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1・出張記========「目に見えない確かな流れ」中編
2・TEN占い======今週は「タロットカード」占い
3・命の賛美=======「命の賛美展2007」
4・連載小説=======「雨弓のとき」9
5・日本を堪能======「富士山・幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅」
6・編集後記=======ひとりごと
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【1】◆◇出張記◆◇
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□「目に見えない確かな流れ」中編
神戸から大阪まで出て、阿倍野から近鉄吉野線に乗り、下市口駅で降り
てバスに乗り、神社まで向かう。
文字で書くと、いとも簡単そうだが、実際は電車と連結しているバスは
一日2便のみ。そのバスを乗り過ごしたら、1万円近くかけてタクシーに
乗って行くか、歩いて30分以上かかるが、近くを通るバス(こちらも一
日四便だったかな?)に乗るしかない。
天河は日本のチベットなどと表現する人もいるほど、行き難い場所なの
だ。しかし、実際にはカウントしたことはないが、多分私は百回以上は
その行き難いといわれている場を往復している。だから、私自身は遠い
と感じたことは一度も無い。
東京に引っ越してからは、京都からの近鉄電車に乗るか、誰かと車で移
動する、というのが天河行きの常だったので、神戸から大阪経由で電車
に乗ったのは、8年ぶりぐらいだった。
電車が、大阪から奈良に移行するに連れて、車窓に映る風景がゆっくり
変わっていく。いつも感じることなのだが、二上山や飛鳥のあたりに来
ると、空気の色がうっすら霞がかって見える。この電車に乗るたび、古
代へと誘われているような気がするのだ。電車からバスに乗り替える。
途中、道の駅で一瞬降りて、名物の煮込みコンニャクを買い、食べなが
ら移動すること約一時間。天河神社の前に到着した。
私は大抵、どんな仕事の折にもスタッフのキョウちゃんを伴っていく。
5年前、私のもとに彼女がやって来た時には、完全にアシスタント見習い
という状態だった。正直なところ、全くといっていいほど何一つ仕事ら
しい仕事はできなかった。しかしそんな彼女も、いや彼女だからこそ、
この5年の間に大きく成長し、TENの事務所にとってなくてはならな
い存在になっている。
今回の天河行きは、彼女も私同様、楽しみにしていた。
何も予定のなく、誰との約束もない天河。全てが自由だ。更にいつも泊
まっている民宿の女将さんの都合が悪く、ペンション泊まりにしたこと
も幸いして、部屋も別々だ。
日曜日の午後、神社に着くと、真っ先にお掃除中の宮司様の姿が目に入
った。普段、全国を駆け巡っていらっしゃるので、お祭りの時以外は、
なかなかいらっしゃらないのに…
宮司さんは、私にすぐに気づいてくださり、ひとしきりお喋りをした後
「今日は上まで行ってお参りしてきなさいよ…」と幾度もおっしゃる。
しかし、普段はお祓いをしていただかないと、絶対に昇れない。
社殿の前まで幾度か行ってみたが、入れ替わり立ち代り、下で誰かがお
祈りをしているので、勝手に上までは到底行けない。
私は、諦めてキョウちゃんと共に、神社の近くのお気に入りの場所まで
散策することにした。少し歩き始めた時だった。ふと、神殿から「今、
来なさい」と呼ばれたような気がした。
小走りに神殿に向かうと、その手前に張り紙がしてあった。
「祈祷中ですので、これより中に立ち入らないでください」と書かれて
いる。私は、神様がお人払いをしてくださっているように感じて、迷わ
ずキョウちゃんを連れて上まで行き、神様にご挨拶をした。
そして、その時、瞬間的に決めた。2004年から2005年にかけて1年間撮り
続けてきた天河の映像を、いよいよ一本の作品にさせていただこうと。
その日は3月4日。翌3月5日は、私が天川 彩になった日だ。9年前の3月
5日、私はこの場所で天川 彩になったのだ。来年でちょうど十年。
私は、これからの一年をかけて、天河神社の映像を、一本の映像作品に
させていただこうと心に誓った。
この日、神殿から降りると、宮司様のお姿は見えず、社務所も早々にカ
ーテンが引かれていた。私はキョウちゃんに、天河の映像作品をいよい
よ手がける話を告げ、天川村の重要な場所を二人で巡り、それぞれの場
所で手を合わせた。
夕刻、貸しきり状態のような天の川温泉に浸かり、ペンションで出され
た美味しい夕食とビールを飲んだ。途端に体のスイッチがオフになった
かのように、二人揃って眠気が襲ってきた。まだ午後7時を少しまわっ
たばかりで、子どもでも眠らないような時間だ。が、私たちは、それぞ
れの部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。
目が覚めたのは、午後十時半だった。私は外を散歩しようかどうか迷っ
ていたのだが、とりあえず隣の部屋をノックしてみた。キョウちゃんも
ちょうど目が覚めていたようだった。外に出てみるか聞くと「今夜は満
月ですから、外へ出て観てみましょうよ」という。
外に出ると、見事!としか言いようの無い、大きな満月がぽっかりと夜
空に浮かんでいた。私たちは、あまりの美しさに、言葉も忘れしばらく
そのお月様をただ眺めていた。
そして、その夜、私が天川村の中で一番ほっとできる空間「お薬師堂」
に行き、般若心経を一巻あげさせてもらった後、再びペンションに戻り、
あっという間にまた眠った。
その日の夜中、あの雲ひとつ無かった満月の空が嘘のように、大嵐が吹
き荒れていたことなど、全く気がつかずに。
翌朝、神社に向かうと、いたるところに葉っぱやら小枝やらが落ちてい
た。朝拝の時間、私は神様に改めて、映像のことを誓い、早々にキョウ
ちゃんと、神社のお掃除をさせていただくことにした。
久しぶりに、竹箒で神社のお掃除をしていると、実家の掃除を手伝って
いる気分になる。
朝食をとった後、禰宜様と今年の七夕祭りのお手伝いの話などをさせて
いただいていると、宮司様がやって来られた。私は、神様からやっと映
像に着手してもいいとお許しをいただいたような気がしたので、一年が
かりで完成させます、と初めて宮司様に告げた。
宮司様は、ニコニコとされ、「ならば、彩さんの一番得意な分野である
物語風に作品をされたらどうですか?」と助言してくださった。
一番最初に、天河の映像を撮りたい、と考えた時、「大銀杏」を主人公
にした物語にしようと考えていた。が、私自身すっかりと忘れていたこ
とだった。
私はいよいよ、何かが動き出すような気がしていた。
この日、天河からバスで下りている途中、京都に住む松本さんから電話
がかかってきた。
「なんだか凄いことになっている予感がするでしょ」
私は天河でのことを思い、そうですね、と返答したが彼女が言っていた
のは熊野のことだった。
つづく…
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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽に楽しんでくださいね。
今週も[タロットカード]で1週間の運勢を占ってみました。
2007年3月17日(土)〜3月23日(金)あなたの運勢
〈1月生まれ〉
今までにがんばってきたことの結果が出そうです。また、経済的にも思
わぬ収穫があるかも。今週は素直に受け取ってね。
〈2月生まれ〉
変化の時です。予想もしていない事態が待っているかもしれません。で
もそれは同時にあなたの成長のチャンスです。しっかりと逃げ出さず前
を向いてね。
〈3月生まれ〉
いつも以上に執着心が強くなってしまいそうです。いっぱい持っていな
いと不安になるかもしれませんが、手放さない限り、大切な答えは見え
てこないかもしれませんよ。
〈4月生まれ〉
今週は縁の下の力持ちになりそうです。積極的に前に出るよりも、その
状態の方が心地よさそうです。誰かをしっかりサポートしてあげてね。
〈5月生まれ〉
今週はこれから先のことをしっかり考える週です。あれこれ迷いながら
動こうとせず、忍耐強く考えることに徹してみてね。
〈6月生まれ〉
無関心になってはいませんか。あなたの情熱の火が消えかかっているか
もしれません。全力疾走する心地よさも思い出してね。
〈7月生まれ〉
頭の回転が速くなりそうです。またフットワークも軽そうなので、つい
いろいろな所へ行きたくなるでしょうが、軽いノリで動くと失敗しそう
です。慎重にね。
〈8月生まれ〉
知性的な一週間となりそうです。合理的に物事を判断する力もありそう
なので、計画を立てたり、貯蓄を始めるにもよさそうですよ。
〈9月生まれ〉
自分の考えに固着しそうです。周りの意見を受け取る心の余裕に欠けて
いるかもしれません。信頼を置ける人の意見には耳を貸してね
〈10月生まれ〉
空想ばかりして、現実逃避をしてはいませんか。何事も地道な努力は華
やかさに欠けます。でも現実を変えるには、地に足をつける必要があり
ますよ。
〈11月生まれ〉
コミュニケーション能力が少し不足してしまっているかも。まずは家族
や友人、職場の仲間などにあなたから積極的に話しかけてみてね。
〈12月生まれ〉
芸術的な才能を発揮できる一週間です。想像力が豊かになっているので、
見るだけではなくあなた自身が作るのにも適しています。
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【3】◆◇いのちの賛美 ◆◇
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いよいよ、来週末です!
皆さん、是非お誘い合わせの上、お越しください♪
〜祈りのアートを観て・触れて・感じる2日間〜
『命の賛美展 2007』
―どんな「いのち」も美しい―
◆開催日: 2007年3月24日(土)〜3月25日(日)
◆会 場:ぎゃらりい茶屋町三番地
(東京都台東区谷中7−5−28)
・JR「日暮里」駅から谷中方向へ徒歩7分
・東京メトロ千代田線「千駄木」駅から徒歩で10分
◆時 間:24日(土)
正午〜午後8時
25日(日) 午前10時〜午後6時
◆入場料:無 料
作品販売あり
(収益金の一部は(財)日本ユニセフ協会へ寄付)
◆詳 細:http://www.office-ten.net/art2007.htm
どんな「いのち」も美しい。
こんな当たり前のことが、当たり前ではなくなっている現代。
私たちが、何処かに置き忘れてしまった感覚は、
どうしたら蘇るのでしょうか。
『命の賛美展』は、それぞれの、内なる思い、内なる祈りを
「かたち」で表現している、アート作家たちの作品展です。
新人作家から、芸術作家までアート歴は様々ですが、
どの作品も「いのち」に対する祈りが込められています。
また、今回出展されている多くの作品は、購入していただくことも
できます。心惹かれる作品と出あえましたら、是非お求めください。
また、賛美展会場では、TEN’sショップで取り扱っている全商品、
全て、直接お手にとってご覧いただくことができます。
よろしければ、この機会に是非どうぞ。
尚、「命の賛美」の売り上げの一部は、毎年、次の世代を担う子ども
達の為に「(財)日本ユニセフ協会」へ寄付させていただきます。
会場のギャラリーは、サクラ満開の上野桜木にあります。
春の一日、散策がてら是非、遊びにいらしてください。
◇出展者
雨宮あさひ(絵画)・松岡典子(織物)・廣田まりも(絵画)
谷 倫子(織物)・鉾山潤子(帽子・ネクタイほか)
松岡享子 (絵画)・沖
文 (和刺繍)・松田育子(絵画)
アン・サクライ (イラスト・Tシャツ)
松本京子 (染色・スカーフほか)天川 彩(写真)
◇併設
★TEN’ショップ…取り扱い品全品
★ミニカフェ … コーヒー・紅茶など 全て100円
*ケナフ石鹸・タオル *TEN’sTEA 天の紅茶
会場にて先行新発売!
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【4】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>
高原祥子は、近所に住む高梨良一と出会い、幾度か近所を案内している
うちに自分が良一に好意を抱いていることに気付く。しかし良一の気持
ちが、いまひとつわからず、親友の明日香に、ハッパをかけられるのだ
が…
『雨弓のとき』 (9) 天川 彩
千駄木にあるレトロな喫茶店。そこが祥子と良一の週末のいつもの待ち
合わせ場所になっていた。出会ってから二ヶ月。季節はすっかり冬に移
り変わっていた。
この日、良一は休日出勤だったので、待ち合わせは夕方になった。先に
着いていた祥子は、奥のボックス席に通されていたのだが、メニューを
手にしながらしばらく神妙な面持ちで宙を見つめたままだった。
「注文は決まったかな?」
既に顔なじみとなったマスターが、祥子が握りっぱなしにしているメニ
ューを引き上げにきた。
「あ、じゃぁコーヒーで」
メニューをぼんやりと手渡しながら、自分の思考回路が止まっているこ
とを祥子は感じていた。
―気持ちを確かめる?でも、どうやって?―
数日前、親友の明日香から言われた言葉が、グルグルと脳裏を駆け巡っ
ている。しかし、コーヒーの芳しい香りが店内に漂ってきたことだけは
わかる。祥子が、その香りを胸いっぱいに吸い込んでいた時、重い木の
扉が開いた。
「いらっしゃい。あ、あちらにお座りですよ」
マスターは良一の顔を見るなり、祥子の座っている座席の方を向いた。
良一は、祥子の気持ちの変化など知る由もない。いつもと変わらぬ屈託
のない笑顔を祥子に向けて、軽やかに奥のボックス席までやってきたか
と思うと、躊躇することもなく向かいに座った。
「お待たせ。悪かったね、今日は仕事になってしまって」
「あ、いいえ…。大丈夫です」
祥子は、良一を前にして、どんどん頬が赤らんでいくのがわかった。自
分と毎週のように会っている良一。しかし、付き合っている…という訳
でもない。何も告白もされていないし、勿論、手ひとつ握るわけでもな
い。考えてみると、二ヶ月も毎週会いながら、ただ近所を散策するだけ
の散歩仲間のように思っているのかもしれない。それなら、悲しすぎる
…。微妙な沈黙をやぶるように、マスターが自慢のコーヒーをトレーに
乗せてやってきた。
「お待たせしました。ホットコーヒーです」
祥子に、そのコーヒーを差し出すと、良一の前にメニューを差し出した。
「メニューはいいや。僕は、ホットミルクにしようかな。マスター、ホ
ットミルクちょうだい」
「ホットミルクですね。かしこまりました」
カウンターに戻るマスターの後姿を目で見送りながら、祥子は、単純に
思ったことを口にした。
「ホットミルクって、なんだか意外」
「そう?寒い日はよくホットミルク飲むよ。今日は一日外回りだったん
だ。体が芯まで冷えてしまって、ほら」そう言ったかと思った次の瞬間、
良一は、自分の冷たい手の甲を祥子の頬に軽く押し付けた。
「キャッ」祥子は、あまりの衝撃に、小さな叫び声をあげた。
「あ、ゴメンゴメン。あんまり、祥子ちゃんの頬が暖かそうだなぁと思
ちゃって、つい。本当にごめん」
良一が、素直に頭を下げたので、祥子はバツが悪くなった。祥子にして
みたら、驚きはあったものの、内心は凄く嬉しかった。しかし、短い悲
鳴を受け、良一は、嫌っていると勘違いしてしまったかもしれない。そ
う思うと、どうにか今の悲鳴を否定しなければ、と思った。
「いえ、あの別に嫌だったわけではなく…。いいんです。頬っぺたに、
手をつけられても。あ、いや、あの…驚いたというか、なんというか」
「本当に、悪かったね。突然冷たい手を押し付けられたら誰だって嫌だ
よね」
「いえ、その…あ、ちょうど、えーっと…」
「何?」
「ですから…ちょうど」
「ちょうど?」
「えーっと…お正月は、戻られるんですか?仙台に」
「そうだね。毎年戻っているし」
「そうですか」
「何?なんだか今日は変だよ、祥子ちゃん」
「そんなことないです」と、言いながらも、祥子は意を決めたように大
きく息を吸い込んだ。そして、マスターが、カウンターの中で作業をし
ていることを目で確かめて、もう一度深呼吸をして、良一の方に体を向
き直した。
「あの…」
祥子のその姿につられて、良一ももう一度、きちんと向きなおした。
「はい?」
「あの、私たちの関係って、どんな関係なんですか?」
「どんなって…付き合っているんじゃないの?」
「え??」
「あれ?ご、ごめん。違うのかな?僕、勘違いして…いた?」
「でも、今まで何も」
「あ、そうか。そうだよね。なんとなく、始まっているのかな…って一
人で勘違いしていた。ごめん。そうだよね。何もそんなこと言っていな
かったしね。勝手に…アハハ」
良一の顔が、みるみる作り笑顔になっていくのが祥子にはわかった。
「ち、違うんです」
「ん?」
「私、前にも話したように、今まで男の人と付き合ったことないから」
「ないから?」
「だから、普通は『付き合ってください』とか言われて付き合うものか
と…。だから、私という存在は、ただの近所の散歩友達なのかなって不
安になって」
「そうか、ごめん。そうだよね、ちゃんと言っていない僕がいけないよ
ね。祥子ちゃん、ちょっとこんなところで照れるけれど、僕の彼女にな
ってくれる?」
祥子が小さく頷くと、タイミングよくホットミルクが運ばれてきた。
マスターがこのやりとりを見ていたのかどうか、二人にはわからない。
ただ、揃って妙に恥ずかしい気持ちで一杯になっていた。
「アチチ…」
良一は、照れ隠しに、運ばれてきたホットミルクを一気に口に流し込み、
そして、思い切り舌を火傷してしまった。
つづく…
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【5】◆◇日本を堪能する旅 ◆◇
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富士山 ツアー 2007
幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅
2007年5月18日(金)〜5月20日(日)
2泊3日 38、000円
東京発着
(現地集合解散の方 33、000円)
定員 20名 最低施行人員8名
富士山にこの季節だけに現れる、幻の滝。
緑のビロードを敷き詰めたような、新緑の苔森の世界。
満点の星空や、ありがたいほどのご来光。
日本一の霊峰、富士の御山のその中で
幻想的な風景に包まれた至福の時を存分に過ごしてください。
そして湖畔から眺める富士の御姿や青木ヶ原樹海の神秘。
忍野八海の澄み切った湧き水や古きよき日本の姿も楽しんでください。
グルメも唸らせる割烹旅館の御食事や、くつろぎの温泉時間。
こんな贅沢すぎるほどの富士の旅があったでしょうか。
富士登山とはまた違った極上の富士の旅へご案内します。
http://www.office-ten.net/j/2007top.htm
<ツアー代金に含まれるもの>
新宿―河口湖・御殿場―新宿 高速バス代
旅館1泊 山小屋1泊 割烹料理を含む全朝夕食代
全ネイチャーガイド料金
レトロバス1日乗車代
温泉「赤富士の湯」入浴料
コウモリ穴入洞料
<ツアー代金に含まれないもの>
昼食代・路線バス代・浅間神社玉串料(各自千円程度)
おすすめはコレ!
○ 富士山幻の滝・苔森ネイチャーツアー
○ 山中湖 割烹旅館「芳野」
○ 忍野八海
○ 樹海ネイチャーツアー
○ 赤富士の湯
詳しい行程などは、http://www.office-ten.net/j/2007top.htm
ーTEN’sトラベルメンバーの為の旅企画ー
企画 オフィスTEN/ワールドエクスプレス大阪
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【6】◆◇編集後記◆◇
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ここしばらくずっと休みがなかった。先日、疲れのピークを感じ、これ
じゃいい仕事ができないぞ!と思ったので、会社を半日お休みに。
向かった先は東京ドーム隣の「ラクーア」という施設。会社からわずか
タクシーで10分。笑ってしまうほど別世界だ。まずは焼きたてパンの
ランチを食べて、次にウィンドーショッピングを楽しみ、次に絶叫マシ
ーンのジェットコースターに乗った。最後は東京に湧き出る天然温泉と
各種の低温サウナのスパリゾートでじっくりと汗を流した。最後にスパ
のウッドデッキで東京タワーや東京ドームを下に見ながら、ジュースを
飲んでクールダウン…。う〜ん、最高。聖なる場所ばかりに行っている
と、たまには思い切り俗な世界にも浸りたくなる。
やっぱり私は凡人なのだ〜。それでいいのだ〜。
aya
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