2007/02/16━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ TEN's
magazine 第255号 ☆★☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net
こんにちは!天川 彩です。
先週末、富士山の麓まで行って来ました。
やっぱり、霊峰・富士の御姿をしっかり拝めると、元気いっぱいになり
ますね。その日、不思議な光景に出合いました。空に虹の窓が開いたよ
うな…強い光が富士山を照らしていたのです。HPのトップページに写
真をアップしていますが、童話詩の「石とお月さま」の石のように、富
士山も、太陽やお月さまから、元気をもらっているんだなぁ…と単純に
思う私です。
それにしても、今週は、各地で春の嵐が吹き荒れていましたね。
今年は結局、東京では一度も雪が降らず、冬らしい寒さを体感しないま
ま春に移行しそうな気配です。考えたら、手袋を今年は一度も使いませ
んでした。やっぱり温暖化…とても気になります。
そんな暖かい中、もっと暖かい沖縄へ明日から行って参ります。旧正月
を久高島で迎える旅。さてさて、どんな時間が待っていることやら。
さーて…来週末は、ザ・熊野DAYin東京。
本当にささやかな催しですが、大きな画面で、熊野をどうぞゆっくりと
味わってください。そして、再来週末は、関西ですね。こちらは翌日に
TENの集いをしますので、関西方面の皆々様、よろしければ是非一度
お越しください。
イベントやツアーに一度も参加されていない方も、勿論大歓迎です♪
きっと、感性が近い素敵なお友達が増えると思いますよ。
では、今週末も素敵な時間を皆様お過ごしください。
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◇◇今日の目次◇◇
◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様==「Do My
Best」
2・スペシャル旅====「ホピとナバホの祈りの大地を巡る旅」
3・TEN占い======今週は「タロットカード」占い
4・おすすめイベント==「ザ・熊野DAY」in東京 in関西
5・最新情報!======「富士山・幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅」
6・新・連載小説=====『雨弓のとき』(6)
7・編集後記=======ひとりごと
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【1】◆◇コラム・風の文様◆◇
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□「Do My Best」
先日、仕事を終えて家に帰ると、高校生の息子が私の顔を見るなり「僕
の信念の言葉、やっと見つけたよ」と言う。
私は息子が何のことを言っているのか、最初よくわからなかった。が、
よくよく思い出すと数ヶ月前。あるアンケート用紙に「信念にしている
言葉は?」という欄があった。息子はそれを見て「僕にはそんな言葉な
いな」と呟いていたので、たまたま横にいた私が「世の中にはいい言葉
が沢山あるから、自分に一番しっくりくる言葉を探してみてごらん」と
言っていた。
そんな会話をしたことすら私は忘れていたのだが、息子はずっと信念に
通ずる言葉を探していたらしい。ようやく彼が辿り着いた言葉。それは
「Never Give Up」だった。普段、本人からあまり話しか
けてこない息子が、その日、目を輝かせながら理由をいっぱい話してく
れた。「ありきたりなんだけどね…、使い古されているけれどね…、と
ても普通なんだけどね…」と幾度も繰り返していたが、彼にとって信念
となる言葉との出合いは、かなり大きなものだったらしい。
いくら使い古されていようが、ありきたりだろうが、その言葉を腑に落
として、自分のものにすることは難しい。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉も、かなり前から言葉として
は知っていた。しかし、本当に深く意味をかみ締めるようになったのは
ここ数年かもしれない。
何か大きな目標に向かっている時、この言葉は私を勇気付け、そして励
まし奮い立たせてくれる。人としてやれるだけの精一杯をしたなら、後
は天の成すがまま、示すまま。例え結果が、自分の思い描いてた通りで
なくとも、それは天命なのだから喜んで従おうと思えるようになった。
しかし、日常生活には、少々大げさな気がする。普段の私は、天命を待
つ、というよりは、ケ・セラ・セラ。成るようになるさ…なのだ。ただ
人として出来うる限りの精一杯、とまではいかなくとも、自分に出来る
精一杯まではやりたいと思っている。
だから「Do My Best」という言葉が私は一番心地よい。
ヤル時にはヤル。でも、出来ないときには出来ない。
他人がしていなくとも、自分が出来る状態ならば、精一杯頑張ればいい
と思う。他の人がみんな頑張っている時期でも、自分は出来ない状況な
らば焦ったり、無理をしても意味がない。自分の精一杯を、その時々に
応じてしていればいいのだと思う。
私は、今までの人生の中で「あの時、こうしておけば良かった…」と後
悔することはほとんどない。逆に言えば、後悔だらけの人生にしたくな
いから「Do My Best」を信条としているのかもしれない。
自分の精一杯は、自分にしかわからない。
自分の心に素直になって、騙さず甘やか過ぎず、自分を信じて道を歩ん
でいたならば、きっと天命のままの道を歩めるような気がしている。
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【2】◆◇スペシャル旅です!◆◇
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○ 続々とお申し込みいただいております ○
天と大地に感謝する旅 スペシャル2007
「アメリカ先住民の教えと母なる大地ツアー」
〜ホピとナバホの祈りの大地を巡る旅〜
★グランドキャニオン★モニュメントバレー★キャニオンデシェイ★
2007年6月20日(水)〜6月26日(火) 7日間
ツアー代金 288、000円(税込み)
<空港諸税は別途お支払いとなります>
*ツアー代金を分割払いで希望される方はご相談ください
募集人員 20名
最低施行人員 8名
20名に達しましたら、締め切らせていただきます。
参加希望の方はお早めにお申し込みください。
詳細 http://www.office-ten.net/hopi/1.htm
*6月22日夏至の日は、ホピの大地で迎えます。
アメリカ国立公園の中でも圧倒的なスケールを誇り
ホピ族の大切な聖地でもあるグランドキャニオン。
ナバホ族の人々の居留地でもある、
西部屈指の公園、モニュメントバレー。
古代人アナサジ族の遺跡が随所に残る国定公園キャニオンデシェイ。
そして、平和の民・ホピ族が守る大地メサ。
壮大な大自然…
祈りの地に吹く風…
先住の民とのふれあい…
貴方が何ものにもとらわれずニュートラルな状態ならば
きっと魂の奥に深くしっかりと、大切なメッセージを
受け取ることができるでしょう。
そして、それらをしっかりキャッチした後は
真逆な先端の街、ロサンゼルスに移動して
映画の都、ハリウッドで最後の一日を過ごしてください。
太古からの風と、最先端の風。
世界の「今」を肌で受け取ってください。
■ツアー代金に含まれるもの
成田→ラスベガス航空運賃 ロサンゼルス→成田航空運賃
アメリカ横断鉄道アムトラック夜行列車運賃(コーチシート)
アメリカ大陸 移動中のバスチャーター代
*セスナ代(参加人数によってセスナ移動する可能性もあります)
モニュメントバレー・ジープツアープログラム参加代
ホテル宿泊代
(宿泊予定地:グランドキャニオン公園内1泊 モニュメントバレイ近
郊1泊 ホピ・カルチャーセンター1泊 ハリウッド1泊)
自由行動日以外の全朝夕食代
■ツアー代金に含まれないもの
成田空港旅客施設使用料 空港税 航空保険料 米国出入国税
昼食代 自由行動日の交通費及び食事代
TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
企画 オフィスTEN/ワールドエキスプレス大阪
主催 株)ワールドエクキプレス 兵庫県知事登録旅行業第2-250
アメリカの大地が呼んでいると思う方、是非ご一緒しましょう。
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【3】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽に楽しんでくださいね。
今週も[タロットカード]で1週間の運勢を占ってみました。
2007年2月17日(土)〜2月23日(金)あなたの運勢
〈1月生まれ〉
今週あなたに必要なことは、平常心です。焦らず、冷静に対処しましょ
う。金運は急上昇ですよ。
〈2月生まれ〉
むやみに動いてしまうかもしれません。過去から引きずっていたことは
手放してください。全く新しい事が始まりそうですよ。
〈3月生まれ〉
人のためにしていると思いながら、あなたの自己満足に過ぎないことは
ありませんか。物事を甘く見ず、あなた自身の何が力不足かをもう一度
じっくり見直してみて下さい。
〈4月生まれ〉
何事も積極的に動けそうですが、一気に片づけてしまおうとしないで下
さい。今週あなたに必要なことは計画性です。
〈5月生まれ〉
心が堅くなって今の状況が悪化することを恐れてはいませんか。今週は
こだわりを捨てて、心の負担を軽くしてね。
〈6月生まれ〉
今週は忍耐力が必要な週です。ただ、精神的に強い状態なので弱音を吐
かず、がんばり通せそうです。でも信頼できる人には弱音をはいてもい
いのですよ。
〈7月生まれ〉
喜びと不安が入り交じりそうな一週間です。心が不安定になりそうなの
で、なるべく目先の問題以外のことに目を向けてください。きっと楽に
なりますよ。
〈8月生まれ〉
プレッシャーで疲れきってはいませんか。今週のあなたに必要なことは
休息です。心身ともにリラックスすることをこころがけて。
〈9月生まれ〉
いろいろなところから、いままで知りたかった情報が入ってきそう。そ
れらを自由に駆使できる頭脳も冴えそうですが、人への思いやりが欠け
てしまう可能性があります。優しさを忘れずにね。
〈10月生まれ〉
今週は恋愛運が絶好調です。伝えたい気持ちは素直に言葉にしてみまし
ょう。また、それ以外の対人関係もスムーズにいきそうですよ。
〈11月生まれ〉
今週は集中力にやや欠けてしまいそう。新たな計画を立てようとせず、
今していることの継続を心がけて。ただ新たな出会いもありそうです。
心は開いておいてね。
〈12月生まれ〉
何か大切なものを失ってしまったかのような失望感におそわれるかもし
れません。でもよく周りを見回して下さい。あなたにとって必要なもの
は何一つ失っていません。不必要なものを手放しただけですよ。
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【4】◆◇おすすめイベント◆◇
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『ザ・熊野DAY』in東京&in関西
大自然と祈りの聖域『熊野大権現』上映会
&
熊野の魅力と撮影秘話の監督トーク
2004年に世界遺産となった紀伊半島、熊野。人が太古の昔より惹か
れ続けたこの土地に焦点を絞り、1年かけて、撮影・取材したものを美
しい映像と音楽、ナレーションでまとめあげた『熊野大権現』。
人が太古の昔より大切にしてきた感覚を、この「熊野」の映像より感じ
ていただければ幸いです。また、当日は取材するに当たり取りそろえた
豊富な熊野の資料も閲覧できます。監督のトークでは、映像にまつわる
撮影秘話や、熊野の知られざる魅力など、たっぷり皆様にお届けいたし
ます。熊野に一度行ってみたかった方、行ってみたけれど、あまりよく
わからなかった方など、熊野に少しでも興味がある方ならどなたでも遊
びにいらして下さい。音楽家、細野晴臣さん絶賛の美しい映像ですよ。
既にDVDをお持ちの方もよろしければ是非大画面でご覧下さい。
監督・脚本:天川 彩/ナレーション:高樹沙耶/映像62分
●『ザ・熊野DAY』in東京
日 程:2007年2月24日(土)
時 間:昼の部…14:30〜16:00 (開場14:00)
:夜の部…19:00〜20:30 (開場18:30)
会 場:ムーブ町屋 ハイビジョンルーム
(東京メトロ・京成「町屋駅」下車すぐ)
料 金:前売り1500円/ 当 日1800円
定 員:各回 50名限定
東京会場は少人数の会場の為、前売りで定員に達した場合、当日券の販
売はいたしません。予めご了承ください。
● 『ザ・熊野DAY』in大阪
日 程:2007年3月2日(金)
時 間:昼の部…14:30〜16:00 (開場14:00)
:夜の部…19:00〜20:30 (開場18:30)
会 場:トレピエホール
(阪急神戸線「武庫之荘」南口下車すぐ)
厳密には大阪ではありませんが、梅田(大阪)から15分です
料 金:前売1500円
:当日1800円
定 員:各回250名
申込み:http://www.office-ten.net/DVD/day.htm
◎「TENの集い in関西」
上映会翌日、3月3日(土)10:30〜13:30 夙川
阪急夙川にある趣のある和室にて「TENの集いin関西」を開催いたします。
メルマガ読者の方はもちろんのこと、知らないお友達をお連れ頂いても、
大歓迎です!
この日だけの参加の方は、1500円(お茶・お菓子つき)ですが、上映会
にもお越しいただく方は、500円割引の1000円で参加いただけます。
こちらは、小さな会場ですので、先着20名様までとさせていただきま
す。ご参加希望の方は、早めにお申し込みください。
ザ・熊野DAYin大阪にも同時にお申し込みの方は、イベント申し込
みフォームに「TENの集い参加希望」と追記してお申し込みください。
「TENの集いin関西」のみお申し込みの方は住所・氏名・TEL・
FAXをお書きの上、ten@office-ten.net までお申し込みください。
尚、参加者の方に会場までの地図など詳しい案内を後日お知らせいたし
ます。
関西の皆皆様〜、まぁ、いうなればオフ会みたいなものです。。。
是非是非、みんなでお会いいたしましょう!!
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【5】◆◇日本を堪能する旅 ◆◇
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只今、募集中です
富士山 ツアー 2007
幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅
2007年5月18日(金)〜5月20日(日)
2泊3日 38、000円
東京発着
(現地集合解散の方 33000円)
定員 20名 最低施行人員8名
富士山にこの季節だけに現れる、幻の滝。
緑のビロードを敷き詰めたような、新緑の苔森の世界。
満点の星空や、ありがたいほどのご来光。
日本一の霊峰、富士の御山のその中で
幻想的な風景に包まれた至福の時を存分に過ごしてください。
そして湖畔から眺める富士の御姿や青木ヶ原樹海の神秘。
忍野八海の澄み切った湧き水や古きよき日本の姿も楽しんでください。
グルメも唸らせる割烹旅館の御食事や、くつろぎの温泉時間。
こんな贅沢すぎるほどの富士の旅があったでしょうか。
富士登山とはまた違った極上の富士の旅へご案内します。
http://www.office-ten.net/j/2007top.htm
<ツアー代金に含まれるもの>
新宿―河口湖・御殿場―新宿 高速バス代
旅館1泊 山小屋1泊 割烹料理を含む全朝夕食代
全ネイチャーガイド料金
レトロバス1日乗車代
須走口五合目までのタクシー代
温泉「赤富士の湯」入浴料
コウモリ穴入洞料
<ツアー代金に含まれないもの>
昼食代・路線バス代・浅間神社玉串料(各自千円程度)
おすすめはコレ!
○ 富士山幻の滝・苔森ネイチャーツアー
○ 山中湖 割烹旅館「芳野」
○ 忍野八海
○ 樹海ネイチャーツアー
○ 赤富士の湯
詳しい行程などは、http://www.office-ten.net/j/2007top.htm
TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
企画 オフィスTEN/ワールドエクスプレス大阪
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【6】◆◇連載小説◆◇
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<今までのあらすじ>
高原祥子は、偶然、近所に住む高梨良一とひょんなきっかけから出会う
のだが、帰り道で靴擦れから歩けなくなってしまう。良一からサンダル
を借りた祥子は、週末、互いの家に程近い神社の鳥居の前で会い、サン
ダルを返す。淡い期待通り、良一から「何処か行きたいところある?」
と聞かれ…
『雨弓のとき』 (6) 天川 彩
「それならまず、ここでお参りしてからにしませんか?」
祥子は、神社の前まで来ているのに、そのままお参りもせず何処へ行く
ことに違和感があった。
「そうか、ここ神社の前だよね。近所に住みながら、ちゃんとここでお
参りしたこと、もしかしたらないかもしれないな」
「え?!こんな近くにいるのに…ですか?」
「半年前に引っ越してきたんだけど。その頃、ちょうど東京の三大花祭
りになっている、えーと何て言ったかな、ほら…根津神社の花の祭りで」
「つつじ祭り」
「そう、その祭には行ってみたけれど、それっきりだな。だけど、神社
って普通さ、お祭りとか初詣の時以外はあんまり行かないじゃない」
「そうですか?」
「あ、行くか。何か願いする時とか…修学旅行とか。昔、受験の時には、
どっかの神社で絵馬も書いたような記憶もあるな」
「それ以外、行かないですか?普通にお参りとか」
「普通にお参り…か。僕はそんなに信心深い方じゃないから。君は、そ
の、普通によくお参りするの?」
「よくって訳でもないですけれど。まぁ、なんというか普通に…です。
ただ私この神社すごく好きで、だから、この近所に住みたいなぁって思
ったんです」
「へぇ、そうなの」
「変ですか?」
「いや、変じゃないと思うけど。僕、そんなことにウトイから。じゃぁ、
やっぱりまずはお参りしようよ」
「はい」
祥子が鳥居の前で小さくお辞儀をして中に入ったので、良一も慌てて同
じようにお辞儀をして中に入った。手水の前でも手馴れた仕草で手と口
をすすぐ祥子の横で、良一はよくわからないまま適当に手を洗い、ひし
ゃくの水を一口飲んで、社殿の前に立った。そして財布から小銭を取り
出しと勢いよく賽銭を投げ込もうとした時、祥子の手が良一の腕を優し
く止めた。
「あ、あのね。昔お婆ちゃんに昔教えてもらったんだけど、賽銭は放り
投げるものではなくって、神様にお供えする気持ちで、そっと入れるも
のなんだって。でね、鈴を鳴らしたら、二回ちゃんとお辞儀をして、そ
の後、二回手をパンパンって叩いて、神様にお祈りするの。お祈りが終
わったら、もう一度、お辞儀するんだって」
良一は、教えられた通りの手順で手を合わせてみたのだが、そもそも神
様にお参りだとか、お祈りというのがよくわからない。更にこれといっ
て今は何も悩み事もなく、取り急ぎのお願い事も見当たらなかった。「
とりあえず、幸せになりますように」とだけ心の中で呟くと、目を開い
た。しかし、祥子はまだ横でじっと祈ったままだった。何をそんなに祈
っているのだろう…と横顔を見た時、祥子がお辞儀をしたかと思うと、
急に目をあけて良一の方を向いた。
「いやだ。そんなに見ないでくださいよ。恥ずかしいですから」
「あ、いや…ごめん。真剣に祈っているなぁと思ってさ。ま、お参りも
済んだし、今日は一日空いているの?」
「はい。特に用事はないです」
「ならさ、新宿や渋谷あたりはどう?お台場とか六本木近辺でもいいし、
表参道でもいいよ。でも、池袋ならそう遠くないか。そうだ、君はどん
な場所が好きなの?」
「私ですか?私はどちらかというと、静かな場所が好きです」
「静かな場所か。じゃ、鎌倉とかもいいか…」
「そうだ。高梨さん、この近所散策したことありますか?」
「え?近所?いや、ほとんどないような…」
「それじゃ、この近くを歩くっていうのはどうですか?」
「でも折角の休みだよ。お天気もいいのに近所じゃもったいないよ」
「だけど、ここを知らない方がもったいないですよ」
「そう?じゃ、今日は近所歩いてみようか」
良一は、新鮮だった。今まで女性と何処かに出かけるといえば、繁華街
での映画や食事、そしてショッピングだった。ひとりで過ごす休日も、
家でCDを聴いたり本を読むか、地下鉄に乗って何処か目的地まで出か
けていくというのが常で、近所を散策するという発想自体がなかった。
「今日はお天気もいいし、谷中の近辺を歩きましょうか。知っていまし
た?谷中と根津と千駄木って近いのに、なんていうのかな…流れている
空気感のようなものが違うんですよ」
「そうなの?」
「言葉でうまく言えないですけれど」
祥子は、車の往来が少ない、お気に入りの路地を歩きながら、自分の知
る限りの道案内をした。良一は、谷中が寺町だということぐらいは知識
で知っていた。しかし、この日歩いて実感した。ここは徳川家の菩提寺
である上野の寛永寺の子院が時代と共に次々と建立され、現在も七十を
越す寺院が所狭しと点在している。良一は近所を毎日のように歩いてい
るはずなのに、まるで別の場所を小旅行をしているような気分になった。
「今日は、とにかく驚いたよ。この辺りは本当に凄い場所だね」
タイムスリップしたかのようなレトロな喫茶店の片隅で、ココアをすす
りながら良一が言うと、我が意を得たりと、向かいの席に座った祥子が
ニッコリ笑った。
「歩かないとわからないですよね」
「確かにそうだね。それに、君にも驚いた」
「え?何がですか?」
「いや、確か二十歳だったよね。僕より八つも若いのに、神社もお寺も
ちゃんとお参りするんだと思って。僕なんか寺と神社の区別も怪しいも
んな。とにかく凄いなと思ってさ」
「そうですか?自分ではよくわからないです」
「いや。僕のまわりには、少なくとも君のようなタイプの女の子いない
よ」
「私、お婆ちゃん子だったから」
「お婆さんは、いくつなの?」
「中学一年の時に亡くなったので…でも、それまでは、私の母親みたい
な存在で、とにかく一番大切な存在でした」
「そうか。それじゃ、そのお婆さんに色々教えてもらったんだ」
「私の母は、ずっと仕事ばかりだったので」
祥子の顔色が曇ったことを察知して、良一は話題を変えた。
「そうそう、君の下の名前、ショウコさんだったよね」
「はい」
「どんな字?」
「吉祥天のショウの字です」
「キッショウテン?」
「う〜ん…じゃ、吉祥寺のジョウ。衣辺に羊です。良いことがあるとい
う意味らしいんです。でも、今のところはあんまり…」
「いい名前じゃない。祥子と書いて良いことがある子ならいいよ。僕な
んかモロ、良いこと一番!って感じの良一だもんな」
「でも、なんとなく似ていますね」
「本当だね。苗字も似ているし…ね」
「そうですね」
「それじゃ、親しみを込めて祥子ちゃんて呼んでもいいかな」
「…」
「ちょっと、馴れ馴れしかったたかな」
「いえ…でも…」
「じゃ、これからも高原さんの方がいいかな」
「これからですか?」
祥子は急に顔が赤らんだ。これからも、会えるのかと思うとドキドキし
た。
「凄いご近所さんだしさ、よかったらまた今度も案内してよ」
「あ、はい…」
「やっぱり祥子ちゃんて呼んだらダメ?高原さんより呼びやすいんだけ
ど」
勿論、嫌ではなかった。普段は母親からも友人たちからも「祥子」と呼
び捨てにされていたので、祥子ちゃん、などと呼んでくれる存在は初め
てだった。
「じゃ、それで…」
その後、良一は何か考え事をしているようで、しばらく言葉が途切れて
いた。そして次の言葉は祥子の予想外の言葉だった。
「あのさ、祥子ちゃんて、誰か付き合っている人とかいるの?」
不意打ちの質問に、祥子の心臓は破裂しそうなぐらいドキドキした。
「えっ?は、い、いや…ないです」
「そうなんだ」
祥子はその後、どんな言葉が続くのか期待しながらしばらく待っていた。
が、それ以上良一から続く言葉はなかった。
「あの…高原さんは?」
耳まで赤くなりながら、祥子も思い切って質問してみた。
「僕は、半年前に振られちゃってね。本当はその彼女と結婚しようと思
っていたんだ。だから、それまで住んでいたマンションも引越す準備し
ていたんだ。でも結局、何だかんだ最後にゴタゴタこじれちゃってさ…。
心機一転、新たな場所に引っ越そうと思って、引っ越してきたんだ」
「そうだったんですか」
「だけどさ、今日改めて自分が素晴らしい所に住んでいるんだって実感
できたよ。君に…あ、いや祥子ちゃんに色々案内してもらったお陰だね」
「いえ、そんな…」
「これからも、いろいろ教えてよ」
「あ、私でよければ」
「実はさ、今日ビックリしたことのもう一つにね」
「はい」
「いや、なんて言うのかな。自分の知らない部分を新たに知ったという
か…」
「別の部分ですか?」
「うん。そう。言葉にするのが難しいんだけど」
「えぇ…」
「僕も、こんな古きよき日本というかさ、懐かしい風景が実は大好きな
んだなって感じたよ。いいよね。やっぱり、ホッとできる感じとかさ」
「私もそう思います。だから、それを感じられる所に住んでいるんだっ
て思えたら嬉しくって」
「祥子ちゃん、今日はありがとう」
「い、いえ。私の方こそ、ありがとうございました。それから、いろい
ろご馳走になっちゃって」
この日、ココアを飲む前に蕎麦を食べたり煎餅を買ったりしたのだが、
全て良一が払っていた。
「そんな、それぐらい構わないよ。僕も凄く楽しかったんだし。そうだ。
君の…あ、いや違った。祥子ちゃんの電話番号って教えてもらっていい
かな」
祥子は、ペーパーナプキンに自分の携帯番号を書いて渡した。
祥子が部屋に戻ると、日はかなり傾きかけていた。祥子は少し冷たくな
った布団を取り込み、すっかり乾いたシーツや他の洗濯物も部屋の中に
取り込むと、祥子はそこにバタンと倒れこんでみた。まだ、微かに太陽
の匂いが残っている。布団に顔を埋めて、今日の時間を振り返りながら、
顔がニヤつくのを抑えられなかった。
ー私は今、恋をしているー
祥子は別にもてなかった訳ではない。小学生六年生の時、そして中学二
年の時にも、同級生の男の子から告白されたことはある。高校一年の時
には、告白してくれた男の子に少しは好意を抱いていた。が、結局、自
分の心にブレーキをかけて、誰のことも本気で好きになれないまま二十
歳になっていた。でも、この日、しっかりと自覚した。台所の隣にかか
っている鏡が夕日を部屋の中に取り込んでいた。祥子はその鏡で、自分
のニヤついている顔を見たくなった。布団から立ち上がって、鏡の前に
立った時だった。
プルルルル…。プルルルル…。携帯が鳴った。
祥子は、口から飛び出しそうになる心臓を抑えながら電話を取った。が
…受話器の奥から聞こえてきたのは耳慣れた声だった。
つづく…
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【7】◆◇編集後記◆◇
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明日は、早朝から沖縄出張だし…と思ったら思いのほか早くメルマガが
書けた。やればできるじゃない、と自分でも思う。でも、毎週金曜の夜
メルマガを書いている時間も、結構私は好きなのかも…と思う。
aya
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