2007/02/09━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ☆★☆ TEN's magazine  第254号  ☆★☆ 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net

こんにちは!天川 彩です。

一週間は早いですね。気がついたらあっという間にもう金曜日です。
来週はバレンタインデー。今年高校生になった、我が家の息子が、先日
から「今年はどうなんだろう…」とブツブツ連発しております。
女性は、特に特別な思いがこの日にない限り、そんなに気にする日でも
ないと思うのですが、男性はやはりそうではないようですね。

14日は、仕事の打ち合わせがあるので、一応チョコを用意しなきゃ…
と思っています。

さて、先週スペシャル企画「ホピとナバホの大地を巡る旅」の第一報を
お知らせいたしましたが、本当に沢山の方々からお問い合わせや、早速
のお申し込みもいただいております。
一年半前から、このツアーを行うべきかやめるべきか、旅行会社のワー
ルドエキスプレスの久保山さんと協議を重ねてきたのですが、やはり決
定にして本当によかったと思っております。

なぜ、一年半も迷っていたのか、今日のコラムに書きますね。

また、5月の富士山ツアーのことも、以前からお問い合わせが多くあり
ましたので、今週発表いたします!
こちらも素晴らしい内容で、皆さんをご案内できることになりました。
ピン!ときた方、是非、ご一緒いたしましょう。

さーて、明日から三連休。
何処かへ出かける予定の方も多いと思います。
明日は家の掃除などをして明後日は、日帰りですが、たまには温泉に浸
かってこようかと思っています。
そして三連休最終日の3日目は、『恋のはなし』恋愛ミニ講座&座談会。
講座で話す内容、自分でいうのはナンですが、なかなか説得力あります。
素敵なパートナーシップを構築している方には不必要な会かもしれませ
んが、いまひとつ、なかなか恋愛が成就しない方、オヒマでしたら、来
てみてください。前日までネットで受付しています。

では皆様、素敵な連休をお過ごしください。


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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様==「真のスピリチュアリティ」
2・スペシャル旅====「ホピとナバホの祈りの大地を巡る旅」
3・TEN占い======今週も「メディスンカード」占い
4・バレンタイン特別企画=「恋のはなし」ミニ講座&みんなの座談会
5・最新情報!======「富士山・幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅」
6・新・連載小説=====『雨弓のとき』(5)
7・編集後記=======ひとりごと

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【1】◆◇コラム・風の文様◆◇
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 □「真のスピリチュアリティ」

何年ぐらい前からだろうか。「スピリチュアル」という言葉に心地悪さ
を感じ始めたのは。

私がオフィスTENを始めた頃は、スピリチュアルという言葉は、まだ
日常的には、さほど使われていなかったと思う。だからこそ、目にはみ
えなくとも本質的で尊い世界を表すときにこの言葉を大切に使ってきた。

しかし、『家庭』や『社会』が急激に崩壊し、無味乾燥としていく中で
救いを求める人たちが、癒しを求めるようになった。気がつくと、それ
らの癒し産業に目をつけた人たちの間で、一気にスピリチュアルという
言葉が、広まった。真のスピリチュアルとは似て非なる世界。

現実が苦しいから、誰かに癒してもらいたい。それは人として当たり前
の願望だろう。しかし、現実を変える努力も解決もしないまま、癒しば
かりに走り、目に見えない世界に救いを求めていくと、次第に現実逃避
症候群となり、危険な怖い落とし穴に落ちてしまう可能性がある。

入り口は、東急ハンズでも売っているような癒しグッズかもしれない。
冗談半分でそれらを使っている分には、何の問題もないだろう。しかし
どんどんエスカレートしていくと、様々なグッズを集めはじめ、次第に
パワースポットと呼ばれるような場所に興味を示す。そんなことに共鳴
する仲間と出会っていくと、やがて出口が見えにくい迷路のような世界
に紛れ込んでしまうのだ。

誰からか教えてもらった、霊能者もどきの人から、様々な「魂」の話を
聞き、はたまた推薦するグッズを買って身にまとい、歓喜の涙をこぼす
のだが…大抵の場合は、現実逃避を助長するような話や物ばかりだ。
「過去のカルマの解消で今の苦しい状況がある」「前世、私はインディ
アンだった」「昔××神社の巫女だった」とか…どれほど、私はそんな
人たちを見てきたことだろう。

過去世を語り出すのは容易い。しかし、神様から今世を課題として、今
この世に生まれていることを忘れてしまっている。

こうなっていくと今までの友達も、家族すらも話ができなくなってくる。
やがて霊能者もどきの人か類似した系統の仕事の人か、同じように現実
逃避症候群の人々としか交友関係が持てなくなってくる。更には現実社
会で懸命に生きている人々を「次元が低い」だの「レベルが低い」だの
と、見下したりする。そして、遂には普通の仕事にはつくことができず
同系統の人たちから「あなたもこの仕事が向くわよ」などと言われ霊能
者もどきの仕事を始めたり、類似した仕事に就き、次の現実逃避症候群
の悩める人々を、この迷路に連れて行く…。

この迷路から抜け出すには、唯一つ。
自分を信じて、今の現実を受け止め、ご先祖様に、家族に友人に、日々
に感謝する心を取り戻すことしかない。
他者や異次元の世界に委ねかけていた自分の「魂」を取り戻すことだ。

こんな世界を知らない人には、にわかに信じがたい話かもしれないが、
現実には、山ほどある話なのだ。

実は、hopiの大地も、今そのようなことに興味がある人たちの憧れ
の土地になりつつある。大変精神性の深い人々が暮らし、神秘的で魅力
的に感じるのだろう。日本人に限らず、世界中からhopiの大地まで
そんな人たちが来るようだ。

旅の企画をする、ということは、そういった人々をも、知らずに連れて
行ってしまう可能性もある。極シンプルに、大地や風や眼に見えないも
世界に対して謙虚に静かに暮らしている人々に、余計な波紋を広げる可
能性があるのなら…ツアーなど行わない方がいいのではないかと、この
一年半悩んだ。そして、旅行会社の久保山さんとも、そのことでずっと
話し合ってきた。

しかし、こんな殺伐とした時代となり、今の社会にいい風を吹かせるべ
く、何処からかメッセージを受け取り、実践している人も多くいると感
じていた。そしてその中に、かつての私と同じように理由はわからなく
とも、hopiの大地に、今行かなければ…と強く思っている人も必ず
いるのだと思う。

ヒーラーやチャネラーやパワースポットやインディアンに会ってみたい
とかではなく、純粋に、hopiの大地にネイティブの大地に導かれて
いるように感じている人々を、今、案内しなければ…と思っている。
もっとシンプルに、天地創造の大地と、違う文化の人に触れてみたい、
という人々を、今、案内したいと思っている。

その思いが、旅行会社の久保山さんとも共鳴した。

きっと、いい旅になる。そう確信した。

過去から受け継いできた叡智を守り、目の前の人にも、目に見えない世
界にも共に謙虚であり、今の時代をしっかり丁寧に生きていくことが
私は真のスピリチュアリティだと思っている。

必要なとき、必要な風は吹く。



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【2】◆◇スペシャル旅です!◆◇
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  天と大地に感謝する旅 スペシャル2007

  「アメリカ先住民の教えと母なる大地ツアー」
    〜ホピとナバホの祈りの大地を巡る旅〜


    2007年6月20日(水)〜6月26日(火) 7日間
    
      ツアー代金 288、000円(税込み)
    
     <空港諸税は別途お支払いとなります>
     
   *ツアー代金を分割払いで希望される方はご相談ください
  
         募集人員  20名
         最低施行人員 8名
     
     20名に達しましたら、締め切らせていただきます。
     参加希望の方はお早めにお申し込みください。
     
    詳細 http://www.office-ten.net/hopi/1.htm

   *6月22日夏至の日は、ホピの大地で迎えます。



アメリカ国立公園の中でも
圧倒的なスケールを誇り
ホピ族の大切な聖地でもあるグランドキャニオン。
ナバホ族の人々の居留地でもある、
西部屈指の公園、モニュメントバレー。
古代人アナサジ族の遺跡が随所に残る国定公園
キャニオンデシェイ。
そして、平和の民・ホピ族が守る大地メサ。

壮大な大自然…
祈りの地に吹く風…
先住の民とのふれあい…

貴方が何ものにもとらわれずニュートラルな状態ならば
きっと魂の奥に深くしっかりと、大切なメッセージを
受け取ることができるでしょう。

そして、それらをしっかりキャッチした後は
真逆な先端の街、ロサンゼルスに移動して
映画の都、ハリウッドで最後の一日を過ごしてください。

太古からの風と、最先端の風。
世界の「今」を肌で受け取ってください。




■ツアー代金に含まれるもの

成田→ラスベガス航空運賃 ロサンゼルス→成田航空運賃
アメリカ横断鉄道アムトラック夜行列車運賃(コーチシート)
アメリカ大陸 移動中のバスチャーター代
*セスナ代(参加人数によってセスナ移動する可能性もあります)
ナバホ族・ジープツアープログラム参加代
ホテル宿泊代 
(宿泊予定地:グランドキャニオン公園内1泊 モニュメントバレイ近
郊1泊 ホピ・カルチャーセンター1泊 ハリウッド1泊)
自由行動日以外の全朝夕食代
 
■ツアー代金に含まれないもの
成田空港旅客施設使用料 空港税 航空保険料 米国出入国税
昼食代 自由行動日の交通費及び食事代


TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
企画 オフィスTEN/ワールドエキスプレス大阪
主催 !)ワールドエクキプレス  兵庫県知事登録旅行業第2-250



アメリカの大地が呼んでいると思う方、是非ご一緒しましょう。
    
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【3】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽に楽しんでくださいね。
                          
今週も[メディスンカード]で1週間の運勢を占ってみました。

2007年2月10日(土)〜2月16日(金)あなたの運勢

〈1月生まれ〉
今週はリーダーシップをとって動く週です。まわりの意見に耳を傾けな
がらも、信念を貫いてください。迷った時には、自分の内なる声に従っ
てね。

〈2月生まれ〉
予想外の展開が待っているかもしれません。その時々の状況に合わせて
俊敏に行動してください。今週は頭をフル回転させてね。

〈3月生まれ〉
今週は夢に大切なメッセージが現れる可能性が。夢日記をつけるのも、
よいかもしれませんよ。

〈4月生まれ〉
言っていることと、行動とが一致していますか?今週は、あなた自身が
本来しなければならないことを、思い出す一週間です。じっくりとあな
た自身を観察してみてね。

〈5月生まれ〉
直観力が冴える週です。また、新しい発見をするかもしれません。知識
欲旺盛な一週間なので、いろいろなことに目を向けてください。

〈6月生まれ〉
あなた自身の目標を忘れてはいませんか?自分の心に忠実に、そして正
直に突き進むことを忘れないでくださいね。

〈7月生まれ〉
今週は、目標達成の為にも、一旦休憩の時です。焦っている心を鎮めて
ゆっくりと一休みしてください。もうじき動くときがきますよ。

〈8月生まれ〉
今週は、考えがまとまりにくい週です。また、あなたを迷わせる人と出
会ってしまうかも。どちらにしても、大切な決断は避けた方がいいでし
ょう。

〈9月生まれ〉
日々の雑多に追われて、大切なことを忘れてはいませんか?今週は神社
や仏閣など、少しあなたの深い部分と向き合える場に行き、心の埃を掃
除しましょう。

〈10月生まれ〉
ふと気になったことは迷わず動いてみてください。きっと大切なタイミ
ングに繋がっているはずですよ。


〈11月生まれ〉
自分か、もしくは他人に嘘をついてはいませんか。ばれないようにと、
ドキドキしているよりも正々堂々正直になりましょう。

〈12月生まれ〉
不安なことは全てあなた自身の目で確かめてください。人の噂に惑わさ
れず、確かな選択をしてね。


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【4】◆◇バレンタイン特別応援企画◆◇  
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    2月11日(日)午後6時締め切り

     ミニ講座&みんなの座談会
        『恋のはなし』
 
 日 時 2007年2月12日(月・祝)
     13:00〜15:30 
 会 場 東京都 六義園(東京の名日本庭園)心泉亭
     JR・東京メトロ「駒込」駅 徒歩7分
     
 参加費 2000円(ハーブティ&ミニチョコ付き)  
 定 員 25名
 申込み http://www.office-ten.net/love.htm

 当日は、折角の東京屈指の庭園内を利用するので、ゆっくり
 散策していただけるよう、午前中より心泉亭をお借りしました。
 午前10時半には、お部屋を空けておきます。お弁当などご持
 参いただいたお荷物はこちらのお部屋に置いて、庭園散策など
 是非、楽しんでください。
 
 六義園http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index031.html

 <ミニ講座は>
 コミュニケーション術達人講座・恋愛開運編の講座内容から
 一部抜粋して伝授します。通常の講座とは内容が異なります♪

 みんなで、ちょっとだけ恋愛力をパワーアップさせるような
 恋のお話しませんか?


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【5】◆◇日本を堪能する旅 速報!◆◇  
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   お待たせしました!!!
    こちらも募集開始ですよ!!

    富士山 ツアー 2007
   幻の滝と苔森と幸せ三昧の旅

 2007年5月18日(金)〜5月20日(日)

    2泊3日 38、000円
        東京発着
(現地集合解散の方  33000円)

   定員 20名 最低施行人員8名

富士山に年に数日この季節だけに現れる、幻の滝。
そして、緑のビロードを敷き詰めたような、新緑の苔森の世界。
満点の星空や、ありがたいほどのご来光。
日本一の霊峰、富士の御山のその中で
幻想的な風景に包まれた至福の時を存分に過ごしてください。
そして湖畔から眺める富士の御姿や青木ヶ原樹海の神秘。
忍野八海の澄み切った湧き水や古きよき日本の姿も楽しんでください。
グルメも唸らせる割烹旅館の御食事や、くつろぎの温泉時間。
こんな贅沢すぎるほどの富士の旅があったでしょうか。

富士登山とはまた違った極上の富士の旅へご案内します。

http://www.office-ten.net/j/2007top.htm



<ツアー代金に含まれるもの>

新宿―河口湖・御殿場―新宿 高速バス代
旅館1泊 山小屋1泊 割烹料理を含む全朝夕食代
全ネイチャーガイド料金
レトロバス1日乗車代
須走口五合目までのタクシー代
温泉「赤富士の湯」入欲料 
コウモリ穴入洞料

<ツアー代金に含まれないもの>
昼食代・路線バス代・浅間神社玉串料(各自千円程度)


おすすめはコレ!

○ 富士山幻の滝・苔森ネイチャーツアー
○ 山中湖 割烹旅館「芳野」
○ 忍野八海
○ 樹海ネイチャーツアー
○ 赤富士の湯

詳しい行程などは、http://www.office-ten.net/j/2007top.htm

TEN’sトラベルメンバーの為の旅企画
企画 オフィスTEN/ワールドエクスプレス大阪


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【6】◆◇新・連載小説◆◇  
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<今までのあらすじ>

高原祥子は、アパレルメーカーの若き営業マン、高梨良一とひょんなき
っかけから、二人で食事をすることになる。偶然にも隣駅同士だったこ
とが判明。帰り道、祥子は我慢していた靴擦れが酷くなり、良一の母親
が上京用に履いていた、ピンクのつっかけサンダルを借りて帰る。。。



『雨弓のとき』 (5)                天川 彩


約束の土曜日は、あっという間にやってきた。約束は午前十時。家から
神社まで、ゆっくり歩いても十分もかからないというのに、祥子は五時
半には目が覚めてしまった。いくら目を閉じても眠れない。祥子は思い
切って布団から飛び起き、窓を全開にした。やや冷ややかな風が部屋を
通り抜けていく。薄っすらと明るみを帯びて行く東の空。早起きの鳥た
ちが、木々に集って楽しそうに喋っている。朝を、こんな気持ちで迎え
たのは、何年ぶりだろう…。

祥子は、熱く濃いめに煎れたコーヒーをゆっくり飲み干すと布団からシ
ーツや枕カバーを勢いよくはがし、さっきまで着ていたパジャマと共に
洗濯機に入れた。そして、普段洗っていないような、薄手のカーテンま
で洗い終えると、干し竿めいっぱいに広げて、ありったけの洗濯物を干
した。そして最後に一番太陽の当たるベランダの角に布団も干した。更
に部屋の掃除を隅々までしても、まだ時間を持て余していた。が、いざ
出かける直前になって、急にその日の服装が気になり始め、結局、あれ
これ迷っているうちに、約束の時間ギリギリになってしまい、祥子は大
慌てで玄関を飛び出した。

根津神社。その歴史は古い。今からおよそ千九百年前、日本武尊(ヤマ
トタケルノミコト)が東征の折に千駄木の地に素盞鳴尊(スサノオノミ
コト)を創祀したのが始まりとされ、文明年間には太田道灌が社殿を再
興。現在の地に社殿が奉建されたのは、今からおよそ三百年前、五代将
軍・徳川家綱が世継に定まった折に、千駄木の旧社地から御遷座したと
いう。往来の激しい幹線道路から、ほんの一本奥まった道に入ると、立
派な鳥居が現れる。閑静な境内の奥には、国指定重要文化財にもなって
いる江戸屈指の荘厳な社殿が、今も堂々とした姿でご祭神を守っている。

祥子は、この神社の歴史もご祭神も、詳しいことは何一つ知らなかった。
しかし、この神社に来るたび、祥子は心がスーっとするような気がして
いた。

祥子の母、敏子は祥子が物心つくころから働き始めていた。当時、離婚
すらしてはいなかったが、他所の女性の所で暮らしていた父親は、多分、
家計費などほとんど家に入れていなかったのだろう。祥子が小学校にあ
がってからは、休日にも出勤する日が多くなっていた。そんな日は、決
まって近所に住む祖母の家で過ごすのが日課となっていた。祥子は世界
で一番この祖母が好きだった。しかし、信心深い祖母は、お天気がよい
日には決まってあちらの神社だ、こちらのお寺だとお参りに行き、幼い
祥子にとってはそれが少し苦痛でもあった。

小学校ニ年生のある日のこと。いつものように祖母に連れられて電車に
乗り、古くて大きな神社へ向かった。いつものようにツマラナイ気持ち
の祥子だったが、参道で不意に祖母が金太郎飴を買い、祥子の小さな口
に一粒放り込んでくれた。甘く広がる幸せな感覚…。祥子の脳裏にこの
神社の記憶だけは鮮明に残った。

それから十年後の高校二年の冬の日の午後。たまたま開いた雑誌の片隅
に、根津神社の紹介記事が載っていた。立派な楼門や特徴のある透塀、
社殿横に咲く梅の花、そして金太郎飴屋…。既に、祖母は他界していた
ので、小学生の時のあの記憶に残っている神社が根津神社なのかどうか
確かめる術はなかったが、祥子は衝動的に、その日どうしてもその神社
へ行ってみたくなった。

地下鉄を乗り継ぎ、改札の階段を上りきると、小雪がチラついていた。
交差点に立つ丸い時計は、四時を少しまわったところだった。標識に沿
って歩くと、意外なほど直にそこに辿り着いた。社殿の前には誰一人い
ない。祥子は、昔さんざん祖母から教わった通り、ゆっくりと二礼二拍
手をして神殿に手を合わせた。すると、どこからか急に熱い思いが込上
げて、みるみる涙が溢れ出てきた。死んだ祖母のことを急に思い出した
わけでも、特別に何かが起こったわけでもない。ただ、心の深い部分に
固まっていた、何かの固まりが涙となって溶けていくような不思議な感
覚だった。

周りに人がいないことが幸いだった。祥子は溢れる涙を拭くこともせず
手を合わせたまま、ありがたい気持ちでいっぱいになっていた。
息も凍るほどの寒い日だったが、祥子は心の芯が、ほっこりと暖かくな
っていくのを感じていた。

深々と社殿にお辞儀をして、鳥居を後にした頃には、すっかり陽も翳っ
ていた。参道の金太郎飴屋は、ありがたいことにまだ開いていた。祥子
は、道すがら買ったばかりの小さな袋から一粒口の中に放り込んだ。そ
の途端…甘くて懐かしい味が、祖母の限りなく優しい笑顔を脳裏に連れ
て来た。祥子の瞳は、再び涙でいっぱいになり、恥ずかしさから、表通
りではなく、一本中に入った路地を歩いた。そこには、表通りからは想
像できないほどの、昔懐かしいような昭和の風景が広がっていた。何処
もかしこも、自分の遠い記憶の中にそのまま保存していたような風景や
匂い。十七歳の祥子は確信した。「私はこの町に帰ってくる。」

一年後、この近隣の大学をいくつか受験した祥子は、念願かなって第一
志望の大学に見事合格した。決して、越谷の実家から通えない距離では
なかったが、決意は固かった。更に、本音をいえば、母の敏子と離れて
暮らせることも嬉しかった。


良一は、鳥居前の石垣にもたれかかりながら本を読んでいた。この前の
スーツ姿とは全く違うカジュアルな服装。そのまま大学生として通用し
そうな雰囲気だ。良一は白い紙袋を持って、駆け足で参道を走って来る
祥子の姿が視界に入り、本から目を離した。

「ごめんなさい。待たせてしまいましたか?」
「いや、さっき来たところだから」
「この前はありがとうございました。これ。一応洗っておきました」
「え〜、こんなの洗わなくてよかったのに」 
「すごく助かりました」
「なら、よかったよ」
「本当にありがとうございました」

良一は、それまで読んでいた本をその白い紙袋の中に入れて、祥子の顔
を改めてみた。
「さて、今日はこれからどうしようか」
「え?」
「用事ないんでしょ」
祥子は、どこかでそんな言葉を期待していながらもドキンとした。そし
て、どう返答していいかわからず、コクンとだけ頷いた。良一は続けざ
まに、祥子に更に聞いてきた。

「そうだ。もう大丈夫なの?」
「何が…ですか?」
「足だよ、足。この前、かなり酷い水ぶくれになっていたもんね」
「あ、大丈夫です。ほとんど治りましたから。私、若いですし」
「あはは。確かにそうだよね。僕なんか、後二年で三十だよ。自分は若
いつもりでいても、オッサンの部類に入ってきているのかな」
「いやだ。高梨さんは若いですよ。うちの大学にそのまま紛れ込んでも
わからないです」
「そう?」
「はい」
「じゃ気をよくして…。さ、どうしよう。何処か行きたいところある?」

祥子は、自分が思ったほど緊張せず、良一と自然に話せていたことにほ
っとしていた。しかし、何処か行きたいところと突然リクエストされて
も、直には思いつかない。こんな時には、他の人はどうするのだろう…。
あれこれ頭の中に思いを巡らせても真っ白になっていくばかりだった。


                         つづく…

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【7】◆◇編集後記◆◇
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友人が今度、嵯峨野に絹のギャラリーをオープンすることにした。
そのお祝いを兼ねて、久々に3月京都へ行く。
映画「久高オデッセイ」も愛知と埼玉で上映会が決まった。
春になり、少しずつみんなが動き始めていく…。

私も風にまかせて、ゆるゆると動こう。

                       aya