2007/01/19━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ☆★☆ TEN's magazine  第251号  ☆★☆ 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.office-ten.net

こんにちは!天川 彩です。

1月の下旬に入っているというのに、冬将軍がやってきませんね。
暖冬で過ごしやすいだなんて喜んではいられない、地球温暖化…。

先日、元アメリカ大統領候補だったゴアさんが、ニュース23の特別番
組に出演されていましたが、皆さんご覧になりましたか?
ここのところ他のニュースでも、多々取り上げられているのでご存知の
方も多いかと思いますが、今、地球上で実際に起こっている地球温暖化
の問題を真正面からとらえた映画「不都合な真実」が明日から全国で一
斉に公開となります。

明後日は、近未来ブリッジトークで高樹沙耶さんと「自然のリズムに合
わせる力」をテーマに語るのですが、私は、朝、六本木の映画館でこの
映画を観てから会場に向かうことにしました。
沙耶さんは、一足早く、国際線の飛行機の中で観たとのことですので、
トークの中でも少し話せれば…と思っています。

そうそう、いい情報なのですが、テトラパックが協賛となり、サンデー
エコキャンペーンと題して、この映画を下記の日曜日に500円で観る
ことが出来ます。キャンペーン対象の映画館は限られているので、他の
地域にお住まいの方には申し訳ない情報なのですが、一応最新情報とし
て皆様にお伝えいたします。
(ちなみに…私も500円チケットをサイトから購入しました)
http://www.tohotheater.jp/newstopics/topics/index.html#eco

実は、97年のCOP3地球温暖化防止京都会議の年、温暖化ストップ
運動に、私もほんの少しだけ関わったのですが、あれから10年。
事態は、益々深刻なことになっているのだと肌で感じます。

オフィスTENの一つの大きなテーマである、次世代のために、今でき
ることを…大人としてやはり考えていきたいですね。

先週に引き続き、オープニングが硬い話になってしまいましたが、今週
はウキウキ最新情報が2つありますよ〜!

さて、先週から連載を始めた「雨弓のとき」。週一のメルマガ掲載なの
で、一気に読み進めていただくことが出来ず、ごめんなさい。今回もほ
んの少しだけ物語りは進みます…。


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◇◇今日の目次◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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1・コラム・風の文様===「手に入れる選択・入れない選択」
2・TEN占い======今週も「タロットカード」占い
3・開催間近=======『自然のリズムに合わせる力」』
4・天と大地に感謝する旅=「旧正月を久高島で迎える沖縄の旅」ほか
5・新・連載小説=====『雨弓のとき』(2)
6・最新情報=======「ザ・熊野DAY」「恋のはなし」
7・編集後記=======ひとりごと
……………………………………………………………………………………
【1】◆◇コラム・風の文様◆◇
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□「手に入れる選択・入れない選択」

「ご縁」この言葉は、魔法のような言葉だ。なぜか、縁はある方が無い
よりも優っているかのような錯覚を覚え、何かのご縁だから…だとか、
前世からのご縁ね…などと言われると、ついその気にさせられることも
ある。

しかし、よくよく考えてみると、縁あることが、全て幸せに繋がるとは
限らない。何より本当に深いご縁のある人とは、そんな軽い言葉は不必
要だ。前世、来世は神のみぞ知ることだろうが、少なくとも今生におい
ては、深いご縁の人とは互いの人生に、大きく関わりあう。

誰しも人生は、出会い(出合い)と選択の連続だ。
たまたま、その時見たTV番組で、人生観が変わるようなニュースが流
れているかもしれないし、友達と暇つぶしで何処かに行って、運命の人
と出逢うかもしれない。

しかしやたらと期待を持ちすぎて「今だ!ご縁だ!来るもの拒まず!」
と次々受け取り過ぎていくと、仕舞いに本当に必要なものが何なのか、
わからなくなってくることもある。更に不必要なものを抱え込み過ぎる
と、手放すにも時間がかかり、身動きが取れないまま進めなくなること
だってある。

人と縁を結ぶのは、そう難しいことではない。しかし一旦結ばれた縁を
断ち切ることは、とてもとても難しい。

例えば、悪い仲間と付き合いだすと、そこから抜け出すには、大変な勇
気と決断力を要する。乱用薬物や大麻に手を出す人は、誘惑や悪の好奇
心という、心の弱さから始まるのだろうが、そのような「もの」を持っ
ている人との「縁」をつくったのは、他ならぬ自分なのだ。また、甘い
誘惑の言葉に乗って、大切な心や魂までをも、簡単に他人に委ねてしま
う人も多々いるようだ。知らず知らずのうちに、実生活と心が分離して
しまい、現実逃避中の似た感覚の仲間と浮遊しているようにみえる。現
実と向き合わず、心地よい状態かもしれないが、どこか幻覚剤に溺れて
いる人と、似ているようにも思える。そこから抜け出すことは大変だ。

男女の縁も同じで、付き合うことは簡単だが、別れ話を切り出すのは大
変だ。ノリで結婚はできるが、離婚はノリではできない。

以前は「直感」に従って、ドンドン動き、突然死んでも後悔しないよう、
経験は積めるだけ積みたいと思っていたが、今は突然死んでも後悔しな
いように、きちんと選択しながら丁寧に生きようと思うようになった。

「物」「事」「人」「場」…動いている分だけ、縁は繋がる。

しかし、本当に自分にはそれが必要なのか。しっかり考えてみると、手
に入れるばかり、そこに参加することばかりが大切なのではない。手に
入れないこと、参加しないことも重要な選択の一つなのだ。

世の中には、ありとあらゆるものが散乱している。
自分という存在にとって、必要な情報、必要な人、必要な時間や場所は
何なのか。きちんと選びとる『自分力』が、これから益々問われてくる
時代になるだろう。


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【2】◇◆TEN占い◆◇
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所詮、天川 彩が占っているものですので、あまり深刻にとらえず、気
楽に楽しんでくださいね。
                          
今週も[タロットカード]で1週間の運勢を占ってみました。

2007年1月20日(土)〜1月26日(金)あなたの運勢

<1月生まれ>
今週は困難な問題と立ち向かわなければならないかもしれません。不安
に襲われるかもしれませんが、諦めず勇気を持って前に進んでください。
切り抜けた時、次のステップが待っていますよ。

<2月生まれ>
自分のことで頭がいっぱいになり、他者への心配りが足りなくなってし
まうかも。今週はどんなに頑張っても、状況がなかなか前に進まない時
です。時期がくるまで、焦らず大らかな気持ちで過ごしてください。

<3月生まれ>
未来に向かって扉は開いているのに、あなた自身が勇気の一歩を踏み出
せない状態ではありませんか?今週は童心に戻って、無邪気に出来事を
楽しんでみてください。きっと自然と足が前に進みますよ。

<4月生まれ>
今、しっかりと休息を取ることが、次なる未来に繋がっているようです。
十分にエネルギーを蓄えておいてください。また、昔の知恵からいいヒ
ントを得るかもしれませんよ。

<5月生まれ>
自分自身を見直す時期です。無駄な時間やお金の使い方はしていなかっ
たか、今一度振り返ってみてください。今が変革のチャンスですよ。

<6月生まれ>
積み重ねてきたものが、いい結果をもたらすようです。今週のキーパー
ソンは、年上の男性。何か相談があったなら、身近な年上の男性にして
みましょう。きっといいアドバイスをしてくれますよ。

<7月生まれ>
予想していた結果とは、違う答えにガッカリするかも。問題はあなた
の執着心かもしれません。今週はできるだけ手放すことを心がけてみて
ください。

<8月生まれ>
今週は、他人とのコミュニケーションがうまくとれる週です。ただあな
た自身は、大きな変化と直面するかも。今週は、あなたの心の内を素直
に他人に相談すると、結果に繋がりそうです。

<9月生まれ>
今週は他者からのアドバイスにヒントがありそうです。自分の考えや、
進め方にこだわらず、人の意見にも素直に耳を傾けてみて。またTVや
新聞、インターネットなどの情報も、出来るだけチェックしてみてね。

<10月生まれ>
真の価値があるものを見極める時です。表面上の美しさに捕らわれるこ
となく、深く物事をみてください。今週は対人運も金運もいいので、積
極的に動いてみてね。

<11月生まれ>
ものごとがはっきりしないので、気持ちが焦りがちです。気をつけなけ
れば、勘違いや見間違いなどしてしまうかも。今週はまず心を落ち着か
せるよう、リラックスを心がけて。

<12月生まれ>
その時だけの思いつきで行動してしまい、自分勝手な行動で、まわりを
ふりまわしてしまうかも。今週はじっと時を待つ週です。無鉄砲に動こ
うとせず、忍耐も学んでください。


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【3】◆◇おすすめイベント◆◇  
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いよいよ、今度の日曜日ですヨ!!

前売り券は 明日20日(土)正午までメール&FAXで受付します。

  
☆当日券でお越しの皆様へ

東京都庭園美術館は通常入園料が必要ですが
イベントに参加の方は、無料で入園できます。
チケットを当日お求めの皆様は、できるだけ
http://www.office-ten.net/bridge/vol3-map.htm
↑こちらのページをプリントアウトして
入り口で、ご提示ください。



『自然のリズムに合わせる力』
  〜トーク&特別ワーク〜

◇対談 高樹沙耶 (女優・フリーダイバー)
     ×
   天川 彩 (作家・プロデューサー)

  プラス『直伝!沙耶流 呼吸法』

日時 2007年1月21日(日)
場所 東京都庭園美術館大ホール(港区 白金台)
   開場14:00 開演14:30

料 金 当日3500円

マップ:http://www.office-ten.net/bridge/vol3-map.htm

◇お申し込みなど詳しくは・・・
http://www.office-ten.net



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【4】◆◇天と大地に感謝する旅◆◇  
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 ◎このチャンスを逃したら、きっと後悔すると思った方は是非!

 旧暦。それは明治以前まで日本人が大切にしてきた暦です。
 神の島「久高島」で迎える旧正月の元旦。
 どんな時間が待っているか、あなた自身で確かめてください。



   天と大地に感謝する旅 walk24

 〜旧正月を久高島で迎え、沖縄の神々と楽しむ旅〜
  『めでためでたの 沖縄・かりゆしツアー』

 2007年2月17日(土)〜2月19日(月) 2泊3日
  (2007年旧暦元旦は2月18日(日)です)
   東京・大阪発着 88、000円(税込み)
 (地方発着希望の方は別途ご相談ください)
     最少施行人数 8名

 *宿泊の関係上 限定15名で締め切らせていただきます。
 
 詳しい日程や申し込みは
 http://www.office-ten.net/okinawa2007/t.htm

 <ツアー代金に含まれているもの> 
・往復航空運賃・宿泊代・フェリー代・貸切バス代・宿泊代・朝夕食代
・保険料(昼食代は各自でご負担ください)
・波之上宮で正式参拝をしたいと思います。
    初穂料として各自1000円程度現地でご用意ください。

*かりゆし…「嘉例吉」と書き かり→縁起、ゆし→良し
一言でいうと「めでたい」という意味です。

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【5】◆◇新・連載小説◆◇  
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『雨弓のとき』 (2)                天川 彩

「あー、こっちこっち」
窓際の奥のボックス席で、中年男が朋美に手招きをしたのと同時に、向
かいに座っていた若い男が立ち上がった。
「では、この書類を明日うちの木村に渡しておきます」
「悪かったね。今日、会場で渡しておけばよかったものを。わざわざ来
てもらって手間かけちゃったね」
「いいえ。では、失礼します」
若い男は、祥子や朋美にも軽く頭を下げて出口へ向かった。その後ろ姿
を目で追いながら、祥子は、どこかで会ったことがあるような気がした。

目の前に残った中年男は、スイッチが切り替わったかのように途端にだ
らしない顔つきになって、朋美を見た。
「いやよく来たね。今夜はゆっくり相談に乗るよ。で、こちらは?」
中年男の視線が朋美から自分に移った時、瞬間的に祥子は自分が招かれ
ざる客であることを悟った。しかし朋美は何も感じていないらしく「今
日まで一緒だった、祥子ちゃん。えーっと…ナニ祥子だったっけ?」と
悪びれる風もなく聞いてきた。

「高原祥子です」

祥子は、ぶっきらぼうに返答しながら、なぜ、自分がこんな場所にいな
ければならないのか意味がわからなかった。
「祥子ちゃん、こちらカミヤ商亊の吉田部長さん。ほら、展示会場の左
側のゾーンに大きく出展していた会社あったでしょ。あちらの部長さん。
展示会で部長さんと色々お話ししているうちに、今夜、就職の相談にの
ってくださるってことになって。ほら、祥子ちゃんも大学生じゃない。
だから今夜は一緒に就職の話なんか聞けたらいいなぁ、なんて思って…」

朋美は一人で止め処なく喋っていた。祥子は何も聞かされていなかった
話に驚いたのだが、それは目の前にいた吉田部長と呼ばれていた中年男
も同じだった。

「おいおい。今日は君が相談に乗って欲しいというから、夜の予定をキ
ャンセルして、ここの店も予約してだね…」
「祥子ちゃんと二人でご馳走になっちゃ、マズイですか?」
「いや、マズイというか何というか…。何しろ二人分しかオーダーして
いないしね」
「なんとかならないんですか?一人分ぐらい」
「いや、そんな問題以上にだね、今日は君が相談があるというから…」
祥子は、慌て二人の会話に割入った。
「私、帰りますから」
「そう?そうしてくれるかな。また、機会があったら、その時にでもま
た食事をしようかね。…ただ、ナンだな。このまま一人で帰すのも可哀
想だな」
「いえ、大丈夫です。帰ります」
「そうだ、ちょっとここで座って待ていなさい。あ、君」
テーブルの近くで黒子のように静観していた若いボーイを呼び、何か耳
打ちをした後、吉田は何処かに消え去った。

祥子はかなり腹が立っていたのだが、店の雰囲気から大声では怒鳴れず、
小声で目いっぱいの怒りを朋美にぶつけた。
「ちょっと、どういうことですか?!」
「ごめんね。私もこんな風になると思わなかったから…」
「どうして一人で来なかったんですか。私を巻き込む必要なかったじゃ
ないですか」
「わかってよ。就職の相談に乗てくれるってところまではよかったけれ
ど、食事をしようってことになって…。わかるでしょ。ちょっと一人で
行くの怖いじゃない」
「何言っているんですか。自分で誘っておいて」
「私が誘ったわけじゃ…」
「第一、嘘つくなんて酷いですよ」
「嘘なんてついていないわよ。ちょっと理由があるって、私最初に言っ
たじゃない。ただ、もっと気軽に二人ともおごってもらえると思ってい
たんだけどなぁ。ダメだったか」

「とにかく、私帰ります。どいてください」

奥のフロアから吉田が戻って来たのは、そんな押し問答をしている最中
だった。
「祥子さんて言ったかな。まぁ、いいから待っていなさい。さっき、こ
こに来ていた取引先の彼、今呼んだから。この店の姉妹店が近くにある
んだけれど、そこで二人で食事して帰りなさいよ」
「はっ?いえ、結構です。私、今帰りますから」
「まぁ、遠慮しないで。料理も二人分注文しておいたし」
「そんな…」
「まだ、食事前だろ」
「それは、そうですけれど」
「高梨君っていうんだけど、いい男だぞ。」

あの執事のような老紳士が、つい先ほど立ち去ったばかりの若い男性を
再び案内してきた。
「あー高梨君、何度も悪いな」
紺色のスーツを品よく着こなし、端正な顔立ちによく似合ったメガネと
短い髪。祥子は、改めてその男性の顔を見てドキンとした。よく見ると、
展示会でお手洗いの場所を聞いてきた男性だった。展示会に来ている、
何百、何千人という人の顔など、いちいち覚えていない。しかし、その
男性の顔だけは、ほんの数秒話しただけなのになぜか記憶に残っていた。

「いや実はね、さっきも君に話したように、今日まで展示会でアルバイ
トに来てくださっていたお嬢さんが、折り入って私に相談があるという
から、ここで食事を取りながらって考えているんだが、お嬢さんのお友
達がここまで送って来てくれていたようでね。そのまま帰すのも気の毒
だしね。で、君もちょうど食事前だろうからと思って」
「はぁ…」
「近くに姉妹店が近くにあるから、そこで二人で食事でもしたらいいだ
ろう」
「あ、はぁ」
「そうだ、まずは紹介しなきゃな。彼は高梨良一君。『イニシュモア』
の若き営業マンだよ」
吉田は祥子に向かって紹介したつもりだったが、隣にいた朋美が高い声
を上げた。
「え?『イニシュモア』って、あの『イニシュモア』?」
イニシュモアは、この十年で急成長し今や若者たちに絶大な人気を誇る
ブランドになっていた。そこの若きサラリーマンであり、なかなかいい
男の部類に入る高梨良一を、朋美も興味持たないはずがなかった。
「そうだよ。そこの有望株だよ」
「私、三浦朋美です」
朋美がすかさず挨拶をしたのだが、吉田はそれを無視するように、後ろ
でおとなしくしている祥子の腕を取り、「こちらは祥子さん」といって、
前に引っ張った。
「あ…高原祥子です」
祥子は、急な展開になぜか恥ずかしくて顔をさげながら挨拶した。
「高梨良一です」
良一は、まっすぐに祥子の方を向いて、挨拶をした。
「あのな、高梨君。そんな訳で、予約も入れておいたし、二人で食事に
行ってくれるかな」
「…。はぁ」
「勿論、今日は私が二人にご馳走するから」
「あの、四人で一緒にお食事っていうのも素敵じゃないですか」
吉田は、頭を振り朋美の往生際の悪い言葉を軽く却下して、またしても
黒子のように隅に立っていた若いボーイを呼んだ。

「君、彼らをあっちの店まで案内してくれるかな」

狐につままれたような顔をして立ち去ろうとする二人の背中に吉田は、
慌てて声をかけた。
「そうだ!高梨君。今日のことはプライベートなことだし、わかるよな。
そちらの木村君には余計なことは何も言わないでくれるよな。仕事上、
面倒なことになるのは君も嫌だろうし。食事が終わったら適当に帰って
くれていいから」

祥子と良一が案内された店は、先ほどの店とは全く異なるカジュアルレ
ストランだった。二人は席に腰を下ろしたまま、しばらく無言だった。
知らないもの同士が、互いに身勝手な顔見知りに呼び出されて、レスト
ランに向かい合わせで座っている。その不自然さからいえば無言でいる
ことは当然だった。長い沈黙の末、口火を切ったのは良一だった。

「あ、君…えーっとタカ、タカ…」
「高原祥子です」
「そう。同じタカがつくな、と思っていたんだ。僕は、高梨良一。何を
言えばいいのかな…難しいな…」
「そうですね」
「あの展示会のバイトに来ていたんだよね」
「はい」
「さっきの友達、就職の相談だったんだ」
「さぁ…友達ではないですし、よくわかりません」
「そうなの?なら、どうしてあの店まで彼女を送り届けに行ったの?」
「今回のバイトで一緒になった人なんですけれど、帰りに食事に付き合
って、って誘われたからで。でも行ってみたら違っていました」
「そうなんだ。じゃ、僕と同じようなものか」
「…みたいですね」
良一が笑ったので、祥子もつられて笑った。

「それにしても、吉田部長から再び呼び出されるとは思わなかったから
驚いたけど、まぁ腹減っているから、ラッキーってとこかな。あ、これ
僕の名刺」
良一は胸ポケットから名刺入れを取り出し、祥子に手渡した。
「へぇ。私、名刺をもらったの初めてです」
「そうなの」
「だって、まだ二十歳の大学生なので」
繁々と自分の名刺を見ている祥子を良一は、可愛いと純粋に思った。
「そうか、若いんだね。僕は二十八。今日、一緒にいた彼女も同じ大学
なの?」
「いえ、彼女も確か大学生ですけれど、何処の大学なんだろう…。あま
り聞いていないので、ほとんど知らないんです。私の大学にも、あんな
タイプの人たまに見かけますけれど、友達にはいないタイプだから」
「確かに、全く違う感じだったよね」
「三日間同じバイトだったので名前だけは知っているんですけれど。そ
れ以外のことは」
祥子はそう言いながら、連絡先の交換などしなくて本当に良かったと心
底思った。しかし、その朋美やあの吉田という男のお陰で、突然こんな
時間が巡ってきたことが不思議で可笑しかった。
気がつくと、テーブルの上には、サラダやスープなどと共にサイコロス
テーキが運ばれている。先ほどの店と姉妹店だと聞いていたが、随分と
様々な部分においてランクが違っていた。しかしそれが祥子を落ち着か
せていた。吉田が勝手に注文したのであろう料理を、初めて出会った男
性の向かいで食べていながらも、かなり緊張感がほぐれ、祥子から質問
をしてみた。

「高梨さんは、ずっと東京ですか?」
「出身は仙台。仙台市内で生まれ育って、大学になってから東京。仙台
の父親は公務員で母親は看護婦だったんだけど、祖母が寝たきりになっ
てからは、今は家にずっといるって感じかな。妹が母親の影響で、同じ
看護婦になったんだけど、両親と一緒に暮らしていてね。ま、これとい
って何も自慢するところもない、極一般的な普通の家ってところ。君の
家は?」
「私ですか…」
祥子は自分の家族の話はしたくなかった。相手に聞いたなら、当然に返
されるであろう質問をしてしまったことを、一瞬にして後悔した。


                      つづく…

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【6】◆◇最新情報◆◇
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●バレンタイン特別企画●

 
      『恋のはなし。』
 〜恋愛成就のワンポイント講座&みんなの座談会〜
 
 日 時 2007年2月12日(月・祝)
     13:3O〜16:00 
 会 場 小石川後楽園 涵徳亭(予定)
     地下鉄大江戸線「飯田橋」(E06)C3出口下車 徒歩2分
 参加費 2000円(ハーブティ&ミニチョコ付き)  
 定 員 30名
 申込み http://www.office-ten.net/love.htm

 <ワンポイント講座は>
 コミュニケーション術達人講座・恋愛開運編の講座内容から
 一部抜粋して伝授します。

なかなか運命の人と出逢えない…
好きな人にうまく気持ちが伝わらない…
夫婦なのに、心がすれ違う…

みんな恋では、悩むのです。

バレンタインを目前にした休日。
みんなで恋のお話しませんか?



●東京で熊野を感じる日●

  『ザ・熊野DAY』
2007年2月24日(土)

昼の部…14:30〜16:30 (開場14:00)
夜の部…19:00〜21:00 (開場18:30)

    大自然と祈りの聖域
   『熊野大権現』上映会
      &
 熊野の魅力と撮影秘話の監督トーク   


会 場:ムーブ町屋 ハイビジョンルーム
料 金:1500円
定 員:各回 50名限定
申込み:http://www.office-ten.net/DVD/day.htm


*当日は熊野に関連する書籍等も多数閲覧いただけます。


映像上映時間 62分
   (監督・脚本 天川 彩 ナレーション・高樹沙耶)
 音楽家、細野晴臣氏絶賛の映像です。


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【7】◆◇編集後記◆◇
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今、メルマガに連載している小説とは、全く違うストーリーの別作品な
のですが、もしかするとまた映像作品化されるかも…ということになり
ました。まだ本決まりではないのですが、もしも決定したならメルマガ
読者の皆様に、いち早く朗報をお知らせしたいと思います。
                        aya


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