━2021/09/17━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆★☆ TEN's magazine 987号 ☆★☆

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こんにちは!天川 彩です。

私だけの感覚かもしれませんが、今年は例年より早く日
々が過ぎている様に感じます。年末まで残り13週。
やれることを、やっておかないと…なんて気持ちになり
ますよね。

今週はあれこれ用事が多く、慌ただしくもあったのです
が、そんな中でも行きたいな、と思っていた場所へ出向
くこともできました。

一つは、昨年TENで企画したファンタジー展にも参加し
てもらったRyncoさんのアート展。一つは先月試写会に
も行ったドキュメンタリー映画「くじらびと」を大き
なスクリーンで観る為に映画館へ。

そしてもう一つ。
前々から気になっていた『木彫り熊の申し子 藤戸竹喜
 アイヌであればこそ 展』に行ってきました。
ミケランジェロの再来、などと称する人もいますが、デ
ッサンも何もなく一本の木から綿密に作品を生み出して
いく、まさに天才。

更に、どの作品からも愛が感じられ…ちょっと見に行っ
たつもりが時間がどれほどあっても足りないほどでした。

生きていらしたならお会いしてみたかった…と思ったの
ですが、実はお会いするチャンスが過去にあったのだ、
ということがわかりました。

あぁ、あの時行っておけば良かった…。後悔先に立たず
といいますが、本当にそうですね。

もう20年近くも前のことですが、アラスカのハイダ族と
クリンギット族の血を引く友人ナイナが日本にやって来
ました。彼女にとっては2度目の来日。最初に来日した
折には、クリンギット族のエスター達のサポート的な役
割としてやって来ましたが、2度目の来日は彼女のワーク
ショップやトークライブと共に、個人的な旅行を兼ねて
のものでした。

「北海道へ、木彫り名人に会いに行くのだけど、Ayaも
一緒に行こうよ」

彼女は最初の来日で知り合った、木彫り名人に再び会う
ことを旅の楽しみの一つにしているようでした。

ナイナが生まれ育った南東アラスカは、トーテムポール
文化の地。かつて、私も彼女を訪ねてアラスカに行った
折、数えきれないほど数多くのトーテムポールに案内し
てもらったことがあります。

またトーテムポール職人を紹介してもらったり、製作現
場に連れて行ってもらったり…。

だから日本の先住民族であるアイヌの木彫り名人と知り
合えたことは、彼女にとっては何よりの喜びだったので
しょう。

彼女は、私に、是非紹介したいし、知り合っておいた方
がいいと何度も誘ってくれていたのですが、私は彼女を
ゲストに迎えたイベントやワークショップの準備に忙し
く、とても北海道まで一緒に行く時間的余裕がなかった
のです。

そして、その翌年の2004年の秋。
彼女はアラスカのケチカン島で、トーテムポールプロジ
ェクトなるものを企画したのです。詳しいことまではわ
かりませんでしたが、各地のトーテムポール職人の交流
を兼ねたものらしく、日本からも、北海道の木彫り名人
もアラスカに招いた、ということでした。

その際にも、私に是非アラスカに来てトーテムポールプ
ロジェクトに立ち合わないか、と誘ってくれたのですが
…。その年、私は一年がかりで熊野の映像作品をつくる
仕事をしていたこともあり、アラスカへ行くことは難し
く、結局、その時も行くことは出来ずでした。

そして、そんな出来事もすっかり忘れていたのですが、
記憶は突然甦るものですね。

東京駅の中にある「東京ステーションギャラリー」。

『木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ』と
題された展覧会が、現在開催中であることは知ってはい
ました。

ただ、7月中旬から9月下旬までという、かなりのロング
ラン展示ということで、今度、時間が取れた時にゆっく
り行こうと先延ばしにしているうちに、9月も中旬にな
ってしまい、私は慌ててキョウちゃんと一緒に見に行く
ことに。

中に入った途端、展示されている作品それぞれの精密さ
や、愛情深い眼差しに驚くばかりでした。

藤戸さんは、一歳で母親を亡くし、祖母が母親がわりと
なり育てられるのですが、各地を転々としたことから学
校にも馴染めず、わずか小学校2年生で自主退学したのだ
そう。幼い頃からおもちゃがわりに小刀を持ち、父親や
まわりの大人たちが木彫りする姿を見ながら育ったのだ
とか。

12歳からは本格的に父のもとで修行を始め、15歳になり
藤戸さんは、観光客で賑わう阿寒湖の土産物店で木彫り
熊の実演販売をはじめたそうです。

一切デッサンすることもなく、木を見て鉞(まさかり)
と小刀などを当てながら、余分な部分を削り取る手法で、
数々の作品を生み出しているのですが、特に驚いたのが
『樹霊観音像』という作品です。

知り合いからの依頼だったそうですが、当時は熊以外ほ
とんど彫ったことがなかったそうで、まさに試練だった
と振り返っておられますが…。下書きもスケッチも一切
せず、自分の中にある姿だけで彫りあげるスタイルの藤
戸さんは、観音像や仏像の姿を目に焼き付ける為に関西
に1週間滞在。

古仏の姿を目に焼き付けた後、アトリエに戻り、来る日
も来る日もイチイの大木と対峙し、最初の鉞(まさかり)
を木に入れてから半年かけて彫りあげたそうです。

阿寒正徳寺に安置されているこの観音像も、展覧会にや
って来ていましたが、見事な御姿に思わず手を合わせま
した。

他にも魂揺さぶられた作品が沢山。

そして展覧会場の最後に展示されていた、藤戸さんの年
表を見ていた時、私は驚きました。

「2004年、アラスカ先住民ハイダの招待を受けてアラス
カ州ケチカンを訪問。ハイダ、クリンギットなど世界各
地の先住民のトーテムポール作家たちの集いに参加し、
現地の作家と交流する」

と書いてあったのです。

18年前に、ナイナが私に繋げようとしてくれていた北
海道の木彫り名人とは、藤戸さんのことだったのです。

会場で作品に触れ、藤戸さんご本人に出会ってみたかっ
た…と今更ながら思うのですが…。巡り巡って今、この
時だから藤戸竹喜さんという木彫り名人のことを知るこ
とができたとも思うのです。

展覧会から戻ってきて久しぶりに、アラスカのナイナに
連絡を取ってみました。彼女の人生も私の人生も、この
18年の間に変わったことが沢山。でも、またいつか会お
うと約束しました。

今回のこの話はブログにもう少し詳しく、そして写真付
きで書いています。
よろしければ、ご覧いただけると嬉しいです。

https://ameblo.jp/aya-tenkawa/

そしてご覧頂ければ…といえば、我が家の長女でフリー
アナウンサーをしている萌果が、来週水曜日22時から放
送のフジTV「突然ですが占ってもいいですか?」とい
う番組に登場します。

長女は、実は西洋占星術を何年も勉強しているほど筋金
入りの占い好き。この番組も欠かさず観ているようで、
この番組のオファーがきた時、ドッキリ?と思ったほど
嬉しかったようです。事務所の大先輩で本人の師匠だと
いうサンドイッチマンのお二人と出ますので、よろしけ
ればご覧ください。

それではどうぞ、皆さま良い週末をお過ごしくださいね。


aya