━2021/09/03━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆★☆ TEN's magazine 985号 ☆★☆

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こんにちは!天川 彩です。
9月に入った途端、東京は一気に秋の気配。真夏の洋服
では肌寒く感じるほどですが、皆さんがお住まいの地域
は、どんな感じですか?

そんな中、パラリンピックがいよいよ終盤を迎えていま
すよね。見どころ満載。感動の連続。それぞれに与えら
れたもので、それぞれの限界まで挑戦する姿に連日拍手
喝采です。

もちろんコロナが猛威を振い、医療崩壊も懸念される中
での開催ですから、批判の声もあるかと思います。私も
何もこんな非常時に開催しなくても良いのに…。と開催
直前まで延期を望んでいました。

でも、今は気持ちを切り替え、きっとこの開催があった
ことで、未来に何らかの良い影響をもたらしてくれるの
ではないかなぁ~とも思っています。
世界人口の15%は何らかのハンディキャップを持ってい
ます。昨日までは健常者だと思っていても、今日わが身
に何が起こるかわかりません。でもハンディキャップを
持ったとしても、希望はあり生き方は自分が選択できる
ということを、連日目にしています。

夏休み期間中、外出もままならず、テレビでパラリンピ
ックを観戦していた子どもたちも沢山いると思います。
そんな子どもたちの心の中には、きっと新たな芽が育っ
ているのではないかと私は思っています。

それにしても、今年は例年以上にあっというまに月日が
流れているような感じがします。

特に夏の初めには義母を見送り、先月は遺品整理等に明
け暮れていたような日々だったので、個人的には厳しい
夏でもありました。

でも、今週末には四十九日法要と納骨。区切りも付き、
気持ちの上でも整理がついたこともあり、風が変わると
いうか、なんだかエネルギーが満ちて来ましたので、そ
ろそろ再び動き出そうかと思い始めています。

とはいっても、相変わらずのマスク生活ですし、簡単に
どこかに出かけることも出来ません。でも学ぶこと、考
えることは出来ます。なので、いつ咲くともわからない
けれど、花の種は蒔こうかな~♪というそんな感じです。

そうそう。私の花ではありませんが(笑)まさに今、咲
きほこる花の情報です。

いや…花ではないですね。今日から公開になっている映
画のお話です。

石川梵監督のドキュメンタリー映画『くじらびと』とい
う作品、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませね。

この映画のこと、監督のことを最初に教えてくれたのは、
TENで糸魚川・ヒスイ展も開催してくれた山田修さん
でした。

「インドネシアの小さな村で、昔ながらのくじら漁をし
ている人々と長年交流を続けながら、今、映画を撮って
いる人がいてね。石川梵さんというのだけれど…。きっ
と、あなたも共感すると思うんだよね~」

何の話の流れでその話になったのかは思い出せませんが、
山田さんが熱く語る話は、確かに私に届きました。

延期されていた劇場公開が、いよいよ9月にということが
正式に決まり、予告編をネットで初めて観た時、あまり
の映像の美しさと、見たことも無いくじら漁の迫力映像
に引き込まれました。

そしてコロナの感染拡大で危ぶまれていた上映の危機を
救うべく始まったクラウドファンディングを知り、私は
即座に協力することにしたのです。実はこれまでも、い
くつか映画のクラウドファンディングに協力したことは
あります。でも、それは気持ちとして協力できる範囲の
もので…。でも、この映画へ支援したクラウドファンデ
ィングの金額は、今の私たちにするとかなりのもの。
冷静に考えたら、とても払えない金額だったのですが…
映画の神様が「動きなさい」と言っているような気がし
たのです。

ふと思い出しましたが…かなり昔に似たような経験をし
たことがあります。

それは『久高オデッセイ』という映画でのこと。今は亡
き大重潤一郎監督が撮られた作品での出来事です。

もともと大重監督とは『神戸からの祈り』という98年
の平和イベントをつくりあげる際に出会い、大重監督は
神戸実行委員長、私は神戸事務局長ということになり、
ほぼ一年間、デコボココンビで動いていました。

平和イベントが終わった後、私は個人的に久高島と縁が
繋がり通っていたのですが、大重監督も久高島と縁があ
ると後に知り、驚きました。

ある時、大重監督の他の作品の上映会をTENで催した
際、監督とトークショーを行いました。その際、大重監
督から「実はこれから久高島の映画を撮る」という話が
出たので、私は「最初の上映会はTENで行わせて欲し
い」とお願いし、そのかわりに…ということでその時の
イベント全収益を監督に、これから撮影する映画の軍資
金として手渡したのです。

そんなこともあり映画撮影中は何度か島へ応援に行って
いましたが、撮影中監督は病に倒れられ…。幸いにして
その時は病の淵から復活されたのですが、監督から連絡
が。「久高島の映画はどうにか完成したけれど、その後
の体力がない。だから君のところで配給してもらえない
だろうか」というのです。

上映会はさせて欲しいとお願いはしたものの、配給など
そんな経験は皆無だったので、当然断りました。でも、
二度、三度とお願いされ…。そして不思議なことに、三
度目にお願いされたタイミングで、映画化された小説
『タイヨウのうた』の印税が振り込まれてきたのです。

まさにこの時、映画の神様が「動きなさい」と言ってい
るような気がしたのです。

私たちは未経験ながらにポスターやチラシをつくり、自
主上映を希望する人の為に配給システムもつくり…。
とにかく無我夢中で北海道から九州までキャラバンを組
んで…印税のすべてを注ぎ込んで(笑)、沢山の方に観
てもらうことに全力投球しました。

その後、監督がかなり回復されたこともあり、続編を制
作される、というタイミングで配給から降りました。

そして今回。

正直なところ、このコロナ禍の中で事務所やお店を維持
していくだけで精一杯。とても何かを支援する余裕など
ないのです。増して故大重監督とは異なり、石川監督は
この時はまだお会いしたことも無く…でした。観たのは
予告編の短い映像だけ。でも、映画の神様に背中を押さ
れただけではなく、直感的に「これは是が非でも応援し
なきゃ!」と思わせるものが確かにあったのです。

そして先週金曜日。本日からの公開を前にして、映画
『くじらびと』の試写会に行ってきました。

配給協力会社の試写室での小さなスクリーンでしたが、
その映像の力強さと迫力に私は圧倒されました。

そして、想像外でしたが試写室から出て来たら、なんと
石川監督が立っていらしたので初めてご挨拶しました。

石川 梵監督は、AFP通信社東京支局カメラマンを経てフ
リーの写真家に。これまで祈りをテーマに撮影してきた
写真集は、数々の賞を受賞されています。

初監督となった映画は『世界でいちばん美しい村』とい
う作品で、ネパール大地震をテーマにしたものです。

ヒマラヤの美しい風景と共に映し出される、村の人々の
死生観や、苦悩、喜び、悲しみ…。そして伝統的な儀式
や子どもたちの純粋な笑顔。ヒトって素晴らしいなぁと
思わせてくれる作品です。

こちらの映画は徹底して山での暮らしを撮っているもの
でしたが、今回の映画『くじらびと』は、真正面から海
の暮らしをしている人々を撮ったもの。

石川監督が30年に渡り通い続けてきたインドネシアの小
さな村マラレラ村。そこで伝統的なくじら漁で命を繋い
でいる人々にスポットを当てた映画です。

くじらも漁の船も、もちろんヒトも全てに魂が宿るもの。
だから命全てに感謝し、決して無駄にせず、その命を全
ての人で分かち合う暮らしが美しい映像の中で展開され
ていき…。

観ているうちに、次第と私はかつて日本の各地にも、こ
うした考え方、暮らし方が確かにあったなぁと思い浮か
べていました。

かなり前になりますが、秋田の阿仁マタギのシカリ(頭
領)をされていた、今は亡き松橋さんから色々と話を聞
いたことがあります。

熊猟の話を聞かせてもらったことがあるのですが、熊と
ヒト。その命と魂の向き合い方は、まさに、この『くじ
らびと』に登場する人々と同じようなものでした。

中でも印象に残っているのは、熊を撃った後「ケボカイ
」と呼ばれる魂送りの話です。松橋さんは「ケボカイ」
を忘れてしまったなら、それはマタギではなくハンター
でしかないと言われていましたが…捕った鯨に祈りを捧
げる人々の姿は本当に似ている気がしました。

「今の時代、もっと簡単に食べ物が手に入る。命懸けの
過酷な漁をして、村人の命を繋ぐことがどれほど意味が
あるのか」と思う人や、動物愛護の視点から「鯨が可哀
想」だとか「残酷だ」と思う人も中にはいるかもしれま
せん。

でも、ご飯をいただくとき「いただきます」と言うのは
「命をいただきます」であり、その命を自らの体に入れ
ることで命を繋ぐことなのです。

動物は食べない人でも植物(野菜)は食べます。でも、
野菜も命です。動物も魚も野菜も、全てその命をいただ
くことに違いはありません。

命に敬意を表することが疎かになっている今、こうした
伝統を繋いでいる人々の深い精神性を、改めて知る意義
はとても大きいのではないかと私は思うのです。

とても熱く語ってしまいましたが、こんな時だから命に
ついて、もう一度見つめ直すきっかけになる映画、是非
ともおすすめしたいです。

そして来年か、再来年…。時期は神のみぞ知るですが、
コロナが落ち着き良きタイミングがやって来た時には、
TENでもこの映画『くじらびと』の上映会をしたい
なぁと思っています。

でもその前に♪少しずつTENらしいイベントも計画
していきたいと思います。お店も頑張りますが、TE
Nらしい動きもやっぱり私には必要です。

それらも、また追々お伝えしていきますね。今日は長
いメルマガになってしまいましたね。

それではどうぞ皆様、
今週もよき週末をお過ごしください♪


aya