2020/08/29━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

☆★☆ TEN's magazine 第934号 ☆★☆

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こんにちは!天川 彩です。
今日の安倍総理の退陣発表、ビックリしましたね。
どんな人であれ、体調を崩して仕事を続けるべきではない
ですし、安倍さんには「長年お疲れさま」という気持ちで
すね。…ただ。次の総理が誰になるのかで、かなり気にな
ります。国民のことを常に考え明るく希望を持てるリーダ
ーが誕生してくれることを祈るばかりです。

さて、実は今週の月曜日から3日間天河に行っておりました。
本当はこんなにコロナ感染時代に、奈良まで移動し、更に
高齢者が多い天河に行くのは、いかがなものかと自分でも
思っておりました。
でも20年、旧暦七夕には休まずご奉仕を続けていることも
あり、やはり気持ちが揺れて…。
電話をかけてみたところ「長年されてきていることなので、
気を付けてきてくだされば、こちらは大丈夫です」という
嬉しいお返事でした。

天河神社には、神事関係者と村の代表が数名。一般の参列
者はほとんどいない状態でしたが、神事の最中雨が降り、
万物供養の会場に行った時には、大きな虹が。
本当に感動的な時間でした。


半年ぶりぐらいの東京脱出(厳密には伯父とのお別れに一
瞬、北海道へも行きましたが)で、気持ちがスーッとしま
した。

さて…まだまだお店の準備が残っていて、こんな時間の
メルマガ配信となりましたが、今日は「コロナ時代を生き
る」の続きをお届けします。

今回は前回以上にとても長いお話です。



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◇◆ 連載 ◆◇
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■『コロナ時代を生きる』第2話

何もかもがまるで用意されているかの様な不思議で急激な
流れだった。しかしそんな動きと、まるで引き換えるかの
様にショッキングな出来事が襲ってきた。正直なところ、
この話を書くべきか否か迷った。しかし全てに意味がある。

更に時は進み状況は変わる。そんな訳で、当時を振り返り
つつ書き綴ろうと思う。

物件を立て続けに見に行った日、長年一緒に働いてくれて
いたAちゃんが急に退社の申し出をしてきた。

出会いから15年あまり。事務所のスタッフとなってからも
10年近く様々な時間を共有してきた。スタッフというより
家族の様な存在で、楽しい時も辛い時も常に一緒だった。

私たちの事務所は一般的な会社とは諸々な意味で異なって
いる。極限られた人数で運営している為、一人何役もの仕
事をこなさなければならない。彼女は、グラフィックデザ
イナーでもあったので、これまで数多くの作品も手掛けて
くれていただけではなく、会社の経理も私のアシスタント
としても動いてくれていた。

何より私たちの会社は、自然の叡智と命の尊厳をテーマと
した企画事務所なので、人々に真の幸せを届けること、社
会貢献的なことも大切な仕事なのだ。

通常、労働と引き換えにもらう賃金も神様から頂くような
そんな感覚になる。現実的な収入という意味では、雀の涙
にもならない程度だが、それ以上両手で抱えきれないほど
のサプライズを神様からいつも沢山もらってきた。

私も彼女も、他のスタッフたちも、それに満足し感謝して
いた。どんな時も満面の笑顔と優しい心遣いを持ち続けて
いた彼女に、どれほど救われてきたかわからない。

そんなAちゃんが、突然、コロナで考え方が変わり、これま
で一緒にやってきた私たちの仕事の意味が分からなくなっ
たという。更にグラフィックデザインの仕事も嫌になった
というのだ。

コロナでこれから先の人生が急に不安になったらしい。経
済的な安定の為にも、新たな道を歩むことを考えるだけで
頭がいっぱいで、これから先、事務所がどんな新たな道を
進もうが、一緒に考える気持ちになれない、という。

ゴールデンウィーク中、彼女に何があったのかわからない。
ただ、ゴールデンウィーク前までは、毎日zoom会議で他の
スタッフ同様、互いに励ましあっていた。ゴールデンウィ
ーク期間は、お休みにしていたが、ゴールデンウィークが
明け、久しぶりに事務所で再会し、新たな展開に動き始め
た直後にこの言葉だった。

彼女は一人暮らしをしていた。生活費を稼ぐ為週に数日ア
ルバイトをしていたが、緊急事態宣言後、アルバイト先が
しばらく閉まったというので、私は彼女がお金のことで不
安が募らないよう、優先的に彼女に金銭支援をすることも
伝えていた。また、都内の実家に帰った方が良いというこ
とも言っていたが…そういうことではなかったらしい。

新たな道を歩むことは応援したいと思った。しかし彼女自
身もこれまで私たちと共に大切にしてきたTENの仕事。そ
の意味がわからなくなった、という言葉が悲し過ぎた。
コロナ禍で彼女は心身だけではなく精神もダメージを受け
ているのだということがわかった。

私は彼女の考えが変わることを待つことにした。直ぐに結
論を出さず、しっかり考えて欲しいと伝え、数週間待った。
しかし残念ながら思いが変わることはなかった。5月末、
彼女は長年使っていた事務所の鍵をポストに入れ、私たち
の事務所から去っていった。

どれほど泣いたかわからない。

しかし、チョコレート屋もギャラリーも既に契約を済ませ
家賃が発生している。最低限でも進めなければ。そう思っ
ても彼女が突然去った悲しみの方が強く迫ってくる。何も
手につかない日々がしばらく続いた。

でも、これも流れの中での必然ならば、ワタシは動かなけ
ればならない!そう気持ちを切り替えてからは、チョコレ
ート屋とギャラリーづくりに没頭した。

特にチョコレート屋は準備することが山ほどあった。
商品ラインナップを考え、オーガニックチョコレート会社
選びから始めた。珈琲はこれまで付き合いがあるスペシャ
ルティ珈琲の商社を訪問したり、海外で珈琲農園を経営す
る友人に連絡を取ったりした。

改めてチョコレート屋をするには、かなりのお金がかかる
こともわかってきた。チョコレート用の冷蔵庫だけでも
100万円以上かかるのだ。更に契約した物件は、かなりの
手直しの必要があり、特に勾配がある床を直すことは必須
だった。

お店のシンボルマークとなるハミングバードのロゴも制作
する必要があった。これまでなら間違いなくAちゃんの仕
事だ。しかし、神様は新たな誰かにそれを依頼するよう求
めている。私はそう思った。

何人か友人知人の中にグラフィックデザイナーはいたが、
このハミングバードのロゴを生み出してくれる人は、これ
まで会ったことが無い人だとも思った。

その人は、Facebookの中で見つけることが出来る。私は
なぜかそう思い、偶然、海野陽子さんを見つけた。名前
を見た時、何故か昔から知っている人の様に感じた。

どう考えても知らない人なのに…。

昔からの友達の名前の様に感じ、連絡をした。多分、
突然全く知らない人からの連絡で驚かれたと思う。
しかし直ぐに事務所にやって来てくださった。話を聞けば
聞くほど、海野さんにお任せしたいと思った。

提示されたロゴマーク代は私たちにすると決して安い金
額ではなかった。しかし「この金額は、この店に対する
覚悟の金額です。でもこのロゴにして良かったと思って
いただけるものを作り出します」

その言葉を聞いて、海野さんに任せたら間違いない、そ
う思った。直感は当たった。想像もしていなかった素晴
らしいロゴマークを生み出してくださったのだ。

可愛らしいハミングバードの中に、コーヒー豆とカカオ、
そして生産者であるおじさんが手を振っている。ワタシ
は生産者の思いまで繋ぎたい、そう思っていたので、こ
のロゴマークを見て素直に感動した。

海野さんからそのデータを受け取り、更に生かす為にも、
新しいMacを購入する様言われ、翌日には買いに行った。

これまでAちゃんは会社にある古いMacを使ったり、Windo
wsを使ったり、それで出来ないものは自宅にあるMacで制
作してくれていた。実はAちゃんから何度も新しいMac購入
の希望を聞いていた。

しかしその時には資金が足りず購入出来なかったのに…
不在となってから新しいMacを購入することになろうとは、
なんとも神様は皮肉なことをするな、という気持ちにもな
った。

新しいMacは、ホームページも担当している享ちゃんがす
ることになった。しかし、WindowsとMacはそもそも使い
方が全く違う。更にPhotoshopやillustratorも使ったこ
ともない享ちゃんには、難題が降りかかった状態となり、
本を購入したり、通信教育も申し込んでみたりもした。

その頃には、Aちゃんへの思いも、私は完全に吹っ切れて
いた。

「Aちゃんに連絡をしてアルバイトとして携わらないか聞
いてみようか」ワタシは享ちゃんに、唐突にそう伝えてみ
たのだが…

「Macのことを教えてもらうだけが目的なら、私はAちゃん
にアルバイトに来てもらわなくてもいいと思います。
でも、彩さんの真意は本当は違うところにあるのではない
ですか?」と質問されてしまった。

さすが、20年近くずっと一緒にいる享ちゃんだ。私の真意
が他にあるところを敏感に感じ取っている。私の中に、
あんなに長く深い付き合いをしていたAちゃんと、呆気なく
関係を終えたままだと、人生を閉じる時、悔いが残るので
はないか…。

Aちゃんは「オフィスTENのことはわからなくなったけれど、
彩さんのことは好きなんです」と言ってくれていた。でも、
彼女から私には連絡しにくいだろう。ならば、私から連絡
を取る最善の方法がアルバイト提案なのではないか…。

そのままの気持ちを享ちゃんに伝えると「彩さんが感じた
まま思ったまま動くのが一番良いと思います。そういう気
持ちなら、Aちゃんに連絡とってみたらどうですか」と
言ってくれた。

ただ、Aちゃんにどう連絡したらいいのか迷ってもいた。
迷うという意味では、資金についても同じだった。せっか
く新たに作る店だ。思い切って素敵なものにしたい。あれ
これ計算すると、3月末に融資を受けたお金やコロナによる
国や都の経営者補填のお金だけでは到底無理だ。納得する
店舗をつくるには、相当な資金を早急に集めなければなら
なかった。

私は覚悟を決め、信用金庫に設備投資と運転資金の追加融
資を申し込んだ。地元の信用金庫は、担当者は変わりなが
らも長年私の事務所を応援し続けてくれている。しかし、
政策公庫からまとまった融資を受けたばかりだ。信用金庫
の担当者から、国の融資の他に、区が金利負担をしてくれ
る方法もあるので直ぐに区役所に書類申請に行くよう言わ
れた。

私たちは早速翌日、区役所に行った。その日は忙しく、
享ちゃんと私はそれぞれ別の用事を済ませた後、区役所で
待ち合わせた。

しかし、しばらく待ったが約束の時間になっても享ちゃん
は区役所の入り口に現れなかったので電話をかけてみた。
すると彼女も区役所の入り口でずっと待っているという。
私たちは、それぞれ違う入り口で待っていたのだ。
役所の真ん中へ歩いて行った時だった。

そこにAちゃんがいた。

享ちゃんが真ん中に歩き始めた時、エスカレーターから
降りて来たAちゃんとバッタリ遭遇。そして、その場に私
が現れたらしい。「!」。3人同時に驚き、同時に可笑し
くなった。

それが神様の意思で運命だということを3人同時に感じた
のだ。彼女も偶然役所に用事があって来ていたらしい。
もしも、私と享ちゃんが約束の時間に会えていたなら、A
ちゃんがエスカレーターに乗った時間が1分でもズレてい
たなら、私たちは再会しなかった。私たちは、あまりの偶
然という名の必然が面白くなり、ビックリ再会記念という
ことで自撮りをした。

そして私はアルバイトをしないか誘ってみた。Aちゃんは嬉
しそうに「私で良いなら是非、アルバイトさせてください」
と言った。

数日後、Aちゃんが事務所にやって来た。アルバイトという
立ち位置が新鮮だったが、既に作ってもらっていたロゴマー
クのハミングバードが、Aちゃんの手を通すと一気に様々な
カタチとなり羽ばたき始めた。

こうして、6月下旬から紙袋やショップカード、更には商品
ラベルに至るまで、一気に進んでいった。

…続く。

※この回はAちゃんに読んでもらい、承諾をもらってアップ
しています。

        …続く

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改めて上記の話を書き、本当に全ては諸行無常だなと感じ
ます。今はまだ道の途中。どんな展開が待っているのか、
私たちにもわかりません。でも全てを神様の意思として
楽しめているので幸せです。

                    aya

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発行者   天川 彩

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