苦手なこと』

私は不器用な人間なので、苦手なことがいっぱいある。
当然、自分の努力不足で苦手になってしまったものもあるが、やはり努
力だけではどうにも克服することができないことだってある。
中でも取り分け苦手なのがパーティ。
勿論、友人や家族、仲間達との団欒的なパーティではない。そう度々あ
るというわけではないが、各界から蒼々たる面々が一堂に集うような華
やかな宴の話だ。
そのような場に招かれること事体、身に余る光栄で本当にありがたいこ
とだと思う。しかし、ほぼ例外なくいつも身の置き所に困り、借りてき
た猫状態になってしまう。恥ずかしい話だが、実は私は極度の人見知り
なのだ。
そう告白すると「嘘ばっかり」とほとんどの友人に一笑されるのだが、
嘘偽りない事実なのだ。
だから、知らない同士がワイングラスやシャンパングラスを片手に上手
に交流を深め、名刺交換などをしているのを見ると、感心するやら羨ま
しいやら。どうやったらそんなに流暢に知らない人と気軽に交われるの
だろう。私も他の人同様にワイングラスを片手に持って歩き回ってみる
のだが…どうもぎこちなく所在ないのだ。知り合いが一人でもいれば、
そこから突破口?が見つけ出せるのだが…。

パーティがトラウマとなってしまったのは、20年近くも前のこと。
社会に出てまだ間が無かった頃、大手広告代理店主催による大規模なパ
ーティがあった。
出席するはずだった先輩が仕事で行けなくなった、ということで私が出
向くことになった。そのような晴れやかな席に出るのは初めてだったの
で、思い切り舞い上がりパーティ用のワンピースや靴まで購入し、向か
う前に美容院にまで行って、その場に臨んだ。しかし、中に入ると、そ
こには溢れかえる人、人、人。業界人はもとより、文化人や芸能人など
も多く集い楽しそうに歓談している。業界人独特のノリで話している人
々や、ここぞとばかりに名刺交換会を繰り広げている人々。私は場違い
であったと痛感した。結局、その日誰とも話すことが出来ずパーティ会
場の隅でポツンと過ごし、誰一人とも話すことができなかった。

以後、パーティというものが、どうにもこうにも苦手になってしまった。

先日、某財団主催のパーティに招かれ出席した。
招待状を出してくれたのは、その財団の責任者となっている友人。
先月もその友人から別のパーティの招待状を受け取っていたのだが、そ
の時は都合がつかず欠席した。だが、今回は何の用事とも重なっていな
い。
悩んだ末、出席することにした。
しかし、出かける前はやはり足が重い。
「あ〜。パーティ苦手なんだよなぁ」
時間が迫ってきても、なかなか出かけようとしない私を見て、アシスタ
ントのキョウちゃんが一言。
「アヤさん、必ずいい出会いがありますよ」

会場に着くと、やはり責任者である友人はそのパーティの中心人物で、
忙しそうにしている。仕方が無いので、ぎこちなくワイングラス片手に、
ウロウロ歩きまわってみた。
結局、今回は3人の人と話し、名刺交換をすることができた。
これでも精一杯頑張ったのだ。
この3人の人と、今後どう繋がっていくのかは、今は全くわからない。
しかし、繋がる必然性がある時は、強烈な何かに導かれるように繋がっ
ていく。
人との出会いは、どこにあるのかわからないのだ。

その為にも苦手意識は克服していかなければ…。
少しは大人に成長したのだろうか