■『夏の忘れ物』 | |
夏が終わろうとしている。
どういうわけか、ここのところ妙に落ち着かないので、その理由を考え
てみた。
そう…。
今年の夏は、花火大会に一度も行っていないのだ。
私は季節の中で夏が一番好きだ。
その理由は単純明快、花火大会があるからだ。
少しオーバーかもしれないが、私は物心ついてから、ほぼ一度も欠かす
ことなく何処彼処の花火大会を見ていたように思う。
花火大会は、やや離れた所からゆっくり眺めるのが好きな人と、例え人
ごみであっても、臨場感溢れる間近な花火大会会場で見るのが好きな人
に分かれるように思う。
私は、断然に後者だ。
中でも火の粉が降って来るくらい間近な場所で、寝転びながら真上に上
がる花火を見るのが一番好きな見かただ。
その為に、4〜5時間前から会場に行きシートを敷いて待っていても全
く平気なくらいだ。
花火大会の主役は、あくまでも花火そのものなのだ。
が、実は私はその仕掛け人である花火師という職業に前から惹かれてい
る。
生まれ変わったら、来世は花火師になるのもいいなぁ…などと思ってみ
たりもする。
花火師は、危険と隣り合わせではあるが、自らがイメージして作り上げ
た作品を夜空という大キャンパスに一瞬にして描く、裏方芸術家なので
はないだろうか。
花火大会の折り、打ち上げた花火のスポンサーの名前が出ることはある
が、通常の花火大会で作者の名が出たという話は、聞いたことがない。
晴れた夏の夜、老若男女関係なく夜空に彩られた色と光の芸術に酔いし
れる。
その裏方芸術家は、きっと人々が喜ぶ姿を見ることが自らの喜びなのだ
ろう。
どこか、私の仕事と似通っているような気もする。
来年の夏は、忘れず花火大会の日をあけておこう。
夏空に浮かぶ、千変万化の彩りを見忘れないために…。