道の上』

時折「自分探しをしている」という人と出会う。

自分が何者で、何をする為に生まれ、何処から来て何処に向かおうとし
ているのか。何をしても癒されないし、自分が歩む道すらわからない。
そんな悩みを抱えている人は意外と多い。

私は、自分探しの一番の近道は、自らの足跡をまず振り返って見ること
から始まるように思う。自分が生まれた場所や育った環境。家族や友人、
恋人、同僚。自分が携わってきた仕事や趣味…。そのどれもが、今生き
ている「自分」を構築する要素なのだ。

しかし最近、自分探しを霊的な能力を持った人や、それらに近い人に頼
っている人をよく見かける。その人自身がそれで本当に納得し、幸せに
なるのなら素晴らしいことだが、時には危険を伴うこともある、という
ことも知ってほしい。
私は、輪廻転生を信じている。しかし、過去生の記憶などは、本来生ま
れた時に、神仏の配慮で記憶の中から消され生まれて来るのではないだ
ろうか。
何かのきっかけで、その人自身が過去生と対面することはあるかもしれ
ない。それは、知る必要があって知るのだろう。
しかし、安直にそれを求めてどうするのだろう。多くの場合、次元の違
うところに自分を置いて、現実逃避をしているようにも感じる。その人
が直面している問題は、自らを大きく成長させてくれる課題でもあるの
だ。そこから逃げずに向き合うと、必ずや次のステップになると思うの
だが。
第一、魂そのものを安易に他人に委ねるのはあまりに危ない。
結局は、現実社会に適応できなくなってしまった人を今まで幾人も見た。

やはり、自分探しは、自分の足で見つけていこう。

目の前にある現実と、一つずつ向き合っていくと、きっと道は開ける。
人それぞれが、自分の道の上を歩いているのだから。