■『イライラ菌』 | |
世の中には、目に見えないものがたくさんある。
細菌もそのひとつだろう。
私は先日、イライラ菌なるものが世の中に存在していることを知った。
それは、3日前だった。
午前10時頃、仕事で関西方面に向かう為、JR御茶ノ水駅にいた。
地下鉄の駅からJRに繋がっている乗り換え改札口。片手には、出張の
折によく使うキャスター付のバッグを引き、もう片方の手には、新幹線
のチケットを持っていた。
特急指定券を持ち変え、乗車券だけを改札口に入れようとした瞬間。
「サッサと行けよ!」と言ったかと思うと、後ろから突き飛ばされた。
一瞬、何が起こったのか、理解不能だった。
確かに、ほんの0・2〜3秒、通常通り抜けるより、時間がかかったか
もしれない。
しかし私が使おうとしている改札以外にも、入り口は沢山あるのだ。
朝のラッシュアワーという時間でもないのだから、どこからでも自由に
入れるだろうに。。
何も罵声を浴びせたり、突き飛ばさなくてもいいではないか。
私はムカついた。
ホームに下りると、そのおじさんがいた。
私を突き飛ばして急いだって、まだ電車はきていないのだ。
おじさんの姿を見て、更にイライラした。
しかし、ふと思った。
私がこのようにイライラしていると、自分がまた他の人に嫌な態度を取
って、それは気がつくとどんどん繁殖していくのではないだろうか。。
もしかすると、これはイライラ菌が原因かもしれない。
あのおじさんは、今朝、口やかましい奥さんからイライラ菌をもらい、
イライラしていたところに、駅の改札で0・2〜3秒モタツイテいた私
にイライラして、イライラ菌をばら撒いたのではないだろうか。
私がここで感染してイライラするのは簡単だが、それでは世の中にイラ
イラ菌が増幅するばかりだ。
そうだ、そんなことで、今日の私の一日を台無しにするのは、もったい
ない。イライラ菌は、ここで断ち切ろう。
何せイライラ菌は、繁殖力が強いのだから。
そう思った途端、可笑しくなった。
そして、私はその日、一日中愉快に過ごすことができた。