ガイド』

ここのところ、大自然の中と大都会とを行ったり来たりしている。
あまりにその頻度が多いので、ギャップに戸惑うということもなくなってき
た。しかし、初めて都会のストレス社会の中から脱出し、大自然の中にどっ
ぷりと身を置いて、開放感と清々しさを体感した後、都会に戻った時の衝撃
たるや凄いものだった。
そんな感覚が先日、久しぶりに甦った。

5月下旬、天と大地に感謝する旅で昨年に引き続き、森のイスキア〜白神山
地まで行ってきた。総勢26名。イスキアで佐藤初女さんの人柄に触れ、白
神山地西の玄関口、青森県岩崎村の方々に多大なご協力を得て、新緑芽吹く
白神山地の森を満喫。そして、山深い青荷温泉ではランプ明かりの中、津軽
三味線や温泉三昧を楽しんだりと、皆で充実した時間を過ごしてきた。

4日後、心身ともにリフレッシュし都内に戻ってきた途端、空気の濁りや人
々の忙しないエネルギーを全身で感じる。大自然の中で五官が思いっきり開
いた状態になっていたからなのだろか。隣でアシスタントのキョウちゃんも
顔をしかめている。

山手線に乗り継ぐと、ややしばらくして私たちの向かいに50代後半らしき
オジサン3人組が乗り込んできた。
席に座るや否や、まわりに気遣うこともなく大声で話しているので、嫌でも
会話が耳に入ってくる。車内に居る人々は皆、困惑顔だ。しばらくして、中
でも一際声の大きなオジサンが「それにしても、最近は自分のことだけしか
考えない奴が多すぎて困る!」と言いながら、持っていた傘の柄のビニール
カバーをペリペリペリ…。
あろうことか、そのビニールを座席の下に捨てては、足で払いのけているの
だ。車内にゴミをまき散らかしながら、まだ世の中に文句を言っている。

その時、白神ツアーの折に出た笑い話を思い出した。
天と大地に感謝する旅では、必ず現地に住み信頼関係ができているエコガイ
ドの方に案内をお願いすることにしている。その場を十二分に案内してもら
えるだけではなく、大切なメッセージももらえるからだ。
このツアーでも、岩崎村役場の方が白神の森をゆっくりと案内してくれたこ
とに感激したある参加者の一人が、冗談交じりに「私もガイドになろうかな」
と言った。そこから話は発展して、ガイドはガイドでもいつも怒り害を撒き
散らす「害怒(ガイド)」も世の中には結構いるという話に。

私は、キョウちゃんに「目の前にいるオジサンはわかりやすい『害怒(ガイ
ド)』だね」と小声で言うと「害怒(ガイド)にも一級、二級と等級をつけ
たらいいかもしれませんね」と笑いながら小声で返してきた。
キョウちゃんが笑っていることに気が付いたオジサンは「あれ?向かいの女
の子、俺を見て微笑んでいるよ。俺に気があるんじゃないかなぁ」と、これ
また、大声で隣のオジサンと話し合っている。

電車を降りた瞬間。
「あのオジサンは害怒(ガイド)名人級決定!!」とキョウちゃんは呟いた。